厚生労働省の「臓器提供に係る意思表示・小児からの臓器提供等に関する作業班」(班長=新美育文・明大法学部教授)は3月11日、小児に虐待が疑われるケースへの適切な対応策などを議論した。出席したメンバーからは「虐待そのものの判断基準をいま一度検討すべき」「医療現場で虐待を判断する基準をより明確にすべき」などの意見が相次ぎ、結論は次回以降への持ち越しとなった。

 今年7月施行の改正臓器移植法では、15歳未満の小児の臓器提供を認める一方、「被虐待児に関しては提供されない」と定めている。作業班は11日、この改正法の附則に盛り込まれる▽虐待を受けた児童が死亡した▽虐待が行われた疑いがある―場合の解釈について議論した。

 日本小児科学会子ども虐待問題プロジェクト委員長の宮本信也参考人(筑波大大学院人間総合科学研究科感性認知脳科学専攻教授)は、「(今後は)移植の医療現場でも虐待の有無を判断するケースが増え、そのプロセス(の誤りなど)を指摘されることを医師たちは危惧している」と指摘。これに対し、町野朔班員(上智大法学研究科教授)が「一般的な虐待への対応と、移植の観点からの虐待への対応と、それぞれの判断が違うことに尽きる」との認識を示したほか、水野紀子班員(東北大大学院法学研究科教授)が「ネグレクトなど死亡との因果が不明なケースなどは、判断や取り扱いが難しい」などと指摘。こうした議論から、附則の文言については事務局側が改めて検討することとなり、結論は持ち越しになった。

 また、被虐待児に関連して「虐待を受けた児童の臓器を提供する意思の取り扱い」については、丸山英二班員(神戸大大学院法学研究科教授)が「本人が提供する意思を持っているのであれば、それは虐待の有無にかかわらず尊重されても良いのではないか」と述べた。しかし、他のメンバーからは「虐待を受けたことが明らかな児童からは、原則論から考えて臓器は提供されるべきでない」との意見が相次いだ。



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