強盗罪による有期刑上限が15年から20年に引き上げられた結果として人口あたり強盗犯認知件数が7〜10% の減少,検挙率1%の上昇で同0.4~0.5%の減少
日本における住民一人当たりの民生費投資額と犯罪率の間に有意な負の相関が見られることを指摘
2010年の都道府県別のデータを用いて住民一人当たりの民生 投資額と、人口10 万人あたりの社会福祉行政職員目数は、高齢者の犯罪率に対して負の相関
改善の余地
生活保護制度と犯罪の関係に注目した研究は筆者の知る限り存在しない
厳罰化による強盗犯罪の抑止効果は一定の信頼性を有する
「証拠に基づく政策」の必要性
犯罪を抑止するために罰則は必要である、しかし、世の中の資源には限りがある
日本ではマスコミの報道の影響もあって実際の治安と体感治安のギャップが大きく、それが大衆の犯罪不安を呼び、厳罰化の傾向が進みつつある。しかし、罰則の強化やそれに伴う仮釈放率の低下が実際に犯罪認知件数にどのような影響を与えているかを検証する実証分析は筆者の知る限り存在しない
死刑を廃止し終身刑を導入すべきという意見も根強い
終身刑が有意な犯罪抑止力を持っている
無力化効果のみの場合、高齢化による犯罪能力の低下のため終身刑はコスト高になる可能性がある。
私たちはどんな人であっても社会から排除して何の得にもならないことを知るべきである.経済理論のなかでも有名な比較優位の考え方は排除の論理の非合理性を証明してくれる、たとえば,世の中に能力の高い人と低い人の二種類の人がいるとしよう。このとき一般に考えられがちなことは,すべての仕事を能力の高い人に任せ、能力の低い人はあとからその恩恵にあずかった方がいいというものである。
この考え方が社会全体にとってプラスにならない
自給自足システムが実は非合理的である.
確かにAは他の2人よりも絶対優位性を持っているが、Aについてだけ見れば肉より魚の生産の方が相対的に得意である、同じくBとCは相対的には魚より肉に優位性がある、他人と比べるのではなく,自分自身の中での優劣を比較優位という。
特化
この考え方を社会全体にあてはめれば,どのような人も社会の一員として迎え入れ、その得意分野で社会に貢献してもらうことの合理性が理解できる、それは元受刑者であっても同じ
法務行政は社会復帰に力点を刑務所は「矯正施設」とも呼ばれる。つまり刑務所の役割は「悪事を働くような歪んだ性根を正す」ことと解釈できる。
経済学の視点に基づくコスト・ベネフィット分析だけですべての政策を決めていいわけではない。一方で,データに基づく客観的な分析なしに,法律が改正されていくことの恐ろしさもわれわれは認識しておくべき
刑事裁判は誰のためのものか
すべての当事者を傷つける
刑事裁判の目的は何だろうか。「裁判で真実は明らかにならない」とした上で、「裁判は、法的な価値を判断する場であり、科学的な視点で真実を究明する場ではない」
たとえば,死亡事件が起きたとき、「被害者であるP氏は亡くなった」というのは真実だろう。そして,「加害者であるQ氏がP氏をナイフで刺した」ということも証拠によって真実となりうるだろう。しかし,それが「殺人」であるかどうかはわからない。なぜなら,それには犯人が殺意を持っていたことを立証しなければならないからである。そうだとすれば,裁判における審理の結果として下される判決は、「明らかになった真実」というよりは,検察と枝告人が提示した客観的な証拠に基づき,裁判官が法に照らして出した「判断」と解釈されるのが妥当
一般に殺人や強盗などの凶悪犯罪は切羽詰まった状態にある人間が引き起こしがちなため,被害者の損失を補填できるほどの財産を.告人が持ち合わせていないことも多い。ようするに刑事事件の被害者は「やられ損」的な扱いを受けている
被告人への応報的制裁である、自分の大事に思っている人が殺されたとき,最も望ましい償いは亡くなった人を生き返らせることであるが、それは不可能である.それならば,犯人に対して「死をもっての償い」すなわち加害者に同じ苦しみを味わうよう要求するのである。
修復的司法の可能性
司法のあり方に関し,加害者の責任の取り方として被害者が受けた損害に匹敵する罰を加害者にも与えるべきとする考え方を応報的司法という。それに対して,損害を受けた被害者またはその遺族,ならびに犯罪によって信頼性が傷つけられた地域社会に対して,加害者に損害を認識させ,できる限り損害の回復に向けて努力させる司法のあり方を修復的司法
コースの定理が示すように,経済学で説明される法の合理性とは、当事者間の交渉によって問題を処理するには得られる便益に比べて交渉費用があまりにも大きすぎる場合とされる
社会的影響がさほど大きくない事件の場合,加害者と袚害者の間で示談が成立しているならば、あえて裁判所で法の力を借りる必要性は低いと考えられる。しかし,殺人事件のように補償額が莫大になる可能性が高い上に,社会的影響が大きく当事者間だけでは問題の収束が困難であり、さらに加害者と被害者が交渉のために同じテーブルに着くことは不可能に近いような場合は、裁判所において法の力により加害者を罰する方法が適している
交渉費用があまりにも大きい重犯罪を適用除外
更生の可能性が高く,その社会的便益の大きい若年犯罪に多く適用している運用方法は経済学的に見てもきわめて理にかなっている
コースの定理が成立しないのであれば、裁判の役割とは社会全体にとっての最適解を決定することであり、検察官や弁護士が国費を使って交渉を行う場ではない
加書者と被害者の社会復帰
更生
比較優位の考え方
人生に失敗はつきものである。失敗してもやり直しができるなら挫折感はさほど大きくはないが、犯罪はやり直しが認められにくい失敗
抑止手段の選択
自由刑(禁固・懲役)か罰金か
自由刑:罰金刑に比べ,国家にとってはコストがかかる
罰金刑のみが望ましい
効率性(政府の費用最小化)の観点からは,最大限,罰金刑に頼る方が望ましい。しかし、犯罪者の中には罰金が,支払い可能額を超えてしまう者も多い→自由刑との組み合わせが望ましい(ただし,コストはかかる)
効率的抑止
一般に,犯罪が重大であればあるほど,犯罪抑止の限界便益は高いうより多くの資源を投入すべき
補足)考慮されていないこと
犯罪の重大性につれてdi-bは大きくなると考えられるが,その際,段階的な刑罰(罰金)をどのように設計するか。また,それが犯罪者の行動を変化させ,最適なにどのような影響をもたらすか。
ご当地アイドルは地方経済を救えるか
「アイドルは不況の時代に輝き、好況になると光を失う」
ご当地アイドルにとって、それぞれの地域にその地域特有の文化があり、それが新しい文化を開かせるための土台、いわゆる「場所の文化資本」が必要とされる。地域経済学の分野では、地方の中核都市が新幹線や高速道路で東京や大阪など大都市と結ばれると、便利なるのと裏腹に人が大都市に移動してしまうという「ストロー効果」が知られている。しかし、ご当地アイドル市場においては逆の現象が起きることもあり、「逆ストロー効果」とも