麻薬使用量の減少→犯罪の減少 

非常習者の需要は減るが、常習者の需要はほとんど減らない

麻薬 一つの解決方法

  • 価格差別ー常習者には低い価格で、非常習者には高い価格
  • 生産の抑圧は解決にはならないー潜在的な生産国(地域)は多数ある。一つの園(地域)で産を撲滅できても,生産地が他国(他地域) に移るだけ
  • 少量の密輸でも,製品が高価なため,十分に割りに
  • しかも,代替的な密輸ルートは多数存在
  • 麻薬の合法化を主張する経済学者もいる
  • 禁酒法の経験
  • 完全な自由化から、完全な国家管理もしくは禁止まで,対応策は無数に考えられる。
  • 生産と消費の許可制
  • 医師の許可を必要とする
  • 登録制
  • 未成年者への販売禁止措置

薬物が刑罰の対象になるのは社会へのマイナスの外部性が存在しているからである。すなわち、運法な薬物は使用者本人の健康に害を及ぼすだけでなく、闇市場において高値で取引されることから、乱用者が盗みなど別の犯罪に手を出すかもしれない。厳罰化はこうしたマイナスの外部性を弱める働きをする。しかし、これには逆の効果もある。取り締まり強化で薬物の供給が減れば、価格は高騰するだろう。乱用者の価格弾力性は小さいため、犯罪は前より増える可能性もある。さらに,警察や刑務所などの公的機関の資源には限りがあり、薬物の取り締まりに注力すれば、他の犯罪防止に人手を割けなくなったり、刑務所の過剰収容により別の罪で収監されている受刑者の仮釈放が早まったりするかもしれない。これは薬物以外の犯罪を誘発することになるだろう。計測の結果、一人の薬物犯罪者を刑務所に収容することは別の犯罪者を0.5人釈放することと同じであり,1980年以降アメリカで実施された薬物取り締まり強化は暴力・窃盗犯罪件数をわずか1〜3%減らしただけにすぎないことが明らかに


社会復帰には比較優位の発想が必要


もちろん,元受刑者の能力が一様に劣っているわけではない。しかし,新規受刑者の4分の1が1Q(CAPAS) 70以下であり、7分の1が60歳以上の高齢者


仮釈放の乱発は望ましいことではないが、長期受刑者のいる刑務所では仮釈放が出たという知らせは現場の士気を格段に高めるという。現在は、被害者感情を考慮してか仮釈放が認められにくい傾向


犯罪は生身の人間によってもたらされるものである。やみくもに正義を押しつけてもその効果は限られるだろう。誰しも切羽詰まれば犯罪に手を染める可能性は高まる刑務所で罪を償って一般社会に戻っても居場所がなければ再び悪事を働くしかなくなるかもしれない。再犯を続けるうちに刑務所が唯一の生きる場所にもなりかねないのだ。それで社会全体が効率的に運営されるならばそれでもよかろうが、犯罪捜査,裁判刑務所収容にはすべて行政コストがかかる。そしてなにより犯罪者となって刑務所に入れば労働資源が失われる


経済合理性の観点


比較優位の原則からそれが社会全体の利益になる


厳罰化の効果については,犯罪を抑止する効果と犯罪者を無力化する効果を分けて考えることが重要である、抑止効果のない犯罪の罰則を重くしても刑務所収容人数が増えるだけだからである.

さらに,罰則強化が一定程度の犯罪抑止効果を持つのは当然であることから、より注目すべきは刑務所収監年数の延長によるコスト増や他の犯罪への代替効果


政策に役立てるべき実証分析を行うにあたっては,罰則の重さを表す代理指標が外生的な政策変数ではなく,犯罪件数の増加の影響を受けた内生変数であることを考慮しなければならない.

日本においては、これらの点を踏まえた分析がほとんどなされておらず,実証的な根拠もなしに罰則の変更がなされているのが現状といえる。

刑事裁判は一般的に「真実を明らかにする場」とみなされることが多いが、実際には検察官と弁護士が裁判官から有利な判決を引き出すための駆け引きの場である、そのギャップが被害者を苦しめ,被害者救済策として加害者の厳罰と刑事裁判の応報的側面の強化につながっている。こうした点を改善するためには、修復的司法の考え方を導入することが望ましい。刑事裁判の役割を問題解決のための最適解を客観的に見出すことと位置づける一方,被害者の被った損失に対しては経済面と精神面で社会が十分な補償を行う必要


各自が比較優位を持つ分野で社会貢献できるような仕組みを作ることが重要


刑務所内の処遇についても,現在の義務化された刑務作業のあり方を見直し,刑の重さだけではなく更生の可能性や受刑者の能力に応じて収容施設を区分し,刑務所での生活が社会復帰につながりやすいように工夫する必要がある。


いくらこうした環境整備を行っても,実際に受刑者に接するのは現場の刑務官である。現在の刑務官の仕事は、外部からのプラスの評価がされにくい一方,何か事件があれば責任を問われるため「事なかれ主義」に陥る可能性が高い。今後は仮釈放制度の柔軟な活用など刑務官にとって受刑者の社会復帰をサポートするインセンティブを与える工夫が必要である。受刑者出所後の更生保護は法務行政において今後きわめて重要な役割を担うことになろう.この分野がこれまで民間の力によって切り開かれてきた歴史的経緯を踏まえ、行政は安易に予算をつけるのではなく,民間の創意工夫をバックアップする形で支援する必要があるだろう


無差別殺人や通り魔殺人のような事件は社会災害として位置づけ、自然災害と同様の扱いをすべきだろう。自然と人間は違うという意見もあるだろうが、こうした事件を起こす犯人は死刑願望を口にするなど動機が意味不明であることが多く,通常の殺人事件よりもむしろ天災に近いもののように思われる、すなわち彼害者と加害者の関係性が全く存在せず,その場所に居合わせたことが不運だったということである、そうだとすれば,自然災害補償と同じく,社会災害補償として彼害者救済の仕組みが必要


社会復帰の困難さは必ずしも犯した罪の重さに比例するとは限らない。たとえば,知的障害のある人が万引きや無銭飲食をした場合,短い刑期で刑務所を出所できたとしても,適切な支援がなければ何度も同じような犯罪を繰り返すことになり、社会復帰は難しいだろう。

一方,刑の重い受刑者でも罪を悔い社会復帰を望んでいるならば,懲罰的な労役よりも職業訓練的要素の強い教育刑の比重を高めれば社会復帰の可能性は高まり合理的である、長期受刑者ならば、むしろ刑期の長さを生かし,本人の能力と年齢に応じ,民間のノウハウを活用しつつ職業訓練の内容を充実させればよい


罪を犯した人間のためにそのような便宜を図ってやる必要はないという意見もあろう。出所者の社会復帰が困難なのは自己責任との考えもある。しかし、そのために社会復帰が遅れ、再犯につながったとすれば,社会全体の損失はきわめて大きくなる。そもそも現在の刑務所を見渡してみれば,懲役刑のあり方そのものがすでに限界に達しているように思われる。まず,受刑者にやらせるべき仕事が減ってきている


受刑者全体の作業能力が落ちている


社会復帰重視へのシフトは社会定着による再犯防止という観点からも望ましい方向性といえる。一方,待遇の改善は単独での評価は難しい。なぜなら,他の事情一定の下で刑務所での暮らしを快適にすれば刑務所の居心地が良くなり、刑務所を居場所とする人の数が増えるから


100%国家負担によって一定レベルの生活が保障されているのは刑務所だけ


近年、「刑務所の方がいい」とか「刑務所に入りたくてやった」などという動機


刑務所内の待遇改善が進めば進むほどこうした「刑務所志願者」は増加することが予想


出所後の社会復帰支援としての更生保護の重視

刑務所の成果に対して社会が正当な評価を与える


刑務所は犯罪者の正を目的としているが、その成果について問われることはほとんどない。



自動車泥棒については抑止力効果が有意に推定され、強姦および強盗では無力化効果が有意というものであった。これはきわめて興味深い。発生件数からいえば、窃盗など抑止力効果の有意な犯罪の方が圧倒的に多い.したがって, Levitt (1998a)の結論は前出の「三振法」は一般的には効果があるというものである。ただし、代替効果のない強姦や強盗の多い地域では犯罪は減らない一方、刑務所の収容人数は増えるため非効率性をもたらす


死刑制度の廃止が国際社会でのコンセンサスになりつつある中で,日本が死刑廃止条約に批準せず制度存続の立場をとり続けることの合理性について、死刑支持派の根拠のひとつとなっている犯罪抑止力の観点から検証


検挙率と死刑判決率はいずれも有意に推定されていない。他方、失業率と微生活保護者比率はともに有意にプラス


日本では死刑制度には犯罪抑止効果はなく、むしろ経済や社会の不安定要素をなくして行くことの方が殺人事件を減らすには有効


抑止力はおおむね有効

死刑の殺人抑止効果が有意

法定刑の強化と強盗検挙率が有意にマイナス 厳罰化の強化が実証