臨時試験 
   
       経済学

<持ち込み条件>
持ち込み可

問題 各文を読み,正しければT,誤りならFで答えよ.(各1点×77=77点満点)

(1)環境を規制しても生産性向上する 
(2)ウィリアムソンの逆U字型軌跡論とは、経済発展と地域間格差が逆U字カーブになること
(3)グローバル経済が進んでいると思いきや平均すると10%程度。盛んな分野でも20%程度。
(4)①育休中に失われると推定される人的資本の量は大きくはなく、1年あたり2〜5%程度
 幼児教育で得するのは教育を受けた本人だけでなく、社会全体→幼児教育には税金が投入されるべき
③保育園は母親の幸福度も上げてくれる
④子どもを叩いてはいけないたった一つの理由
自分の葛藤や問題を暴力により解決してよいという誤ったメッセージを伝えることになるため
(5)日本の女性就業率は、先進諸国と比べて低くない
(6)子育て支援で出生率向上
(7)ジェンダー平等は出生率向上
(8)需要と供給の原理は経済学の基本原則であるが、実際には伸縮的ではないこともある。賃金や価格には、硬直性がある
(9)工場誘致は地域経済振興策の1つである。工場誘致で地域の雇用増える。また、経済が活発化する
(10)産業の空洞化について。
雇用への影響は、これまでマクロ的に見てそれほど大きくない。
地域経済の空洞化について。地域経済に破滅的な打撃を与えるような企業の海外展開の事例が多くあると言うわけではない。しかし、マスコミでしばしば話題に上げられるようなケースが少しずつ出ていることも確か
(11)需要が少ない、供給が大きい→不景気。例えば、あるシンガーのライブの座席がガラガラつまり需要が少ないシーンを想像しよう。このとき、其のシンガーはいわば不景気の状況だ
(12)20兆円増やせば物の値段が安定して下がらなくなる
(13)増税で景気がよくなることもある。これは、駆け込み需要と言われるのである
(14)環境クズネッツ曲線は実際には成立するとは考えにくい
(15)CSR活動と企業の利益とは、プラスの関係が示される場合もある
(16)一度きりの行動については、合理的な判断ができない。人は繰り返し行動することで合理的になる
(17)訓練機会の減少は、従業員の労働意欲を低下させる
(18)自殺率と失業率について。ハマメシュは、次の様に考える。生きていたときの便益と、自殺を選んだときの便益を比較して自殺を選ぶ
(19)どの国でも自殺力と失業率の間には、正の相関があるわけではない。その例がスウェーデン
。失業率が一気に跳ね上がったが自殺率は失業率の動きとは無関係に低下し続けた。
(20)人種が多様な国や州ほど再分配の程度が低い
(21)金銭的インセンティブの重要性。人々のたいていの行動は、金銭的なインセンティブで動かされている
(22)①情報は金 


②1学級あたりの生徒数と、学力の間には負の相関関係=グラス・スミス曲線

1学級あたりの生徒数は20人以下となるのが望ましい。少人数学級には効果があるが、費用対効果は低い


③エビデンスが海外での実験に基づいているただちに日本に当てはまるとは限らないという外部妥当性の問題

(23)行動(政策)は言葉より雄弁
(24)海外での実験に基づいているエビデンスはただちに日本に当てはまるとは限らない。これを外部妥当性の問題という
(25)人的資本が蓄積されることによって、将来の経済発展につながる。これは、内生的成長を生み出す源である
(26)ハミルトンは通勤時間のうちの8分の7が無駄な通勤であることを示す
(27)フロリダは経済が発展している地域には、多様な文化を許容する傾向が強いということを示す経済発展を牽引するのは創造力。創造力には、技術と才能と寛容性の裏打ちが肝要。創造性に富み多様な知識を持つ人間が集まったから発展を遂げた
(28)企業や労働力が流入する地域は成長を続け、流出する地域は衰退する傾向。生活環境が良く住みたくなる都市になれば、それは必然的に結果として人口が増加。人々が絶えず交流しあう都市においては、様々なアイディアや知識が異業種間で交換され、創造される可能性がある
(29)先進国と開発途上国では地域間格差は小さく、中進国では地域間格差が大きい
(30)経済活動が集積した地域においては、技術が内生的に進歩し、地域経済は成長する
(31)ソローモデルは初期の所得にかかわらず格差縮小するこのを指し、AKモデルは初期の所得が高い地域では所得が上昇し続けるので、地域格差は必ず拡大
(32)景気が上向くと転入者数、転出者数いずれも上昇傾向。景気が冷え込むと首都圏への転入超過数は減少
(33)1人の人間が県境を越える人口移動は一生に2.3回にすぎない。人口移動が行われる経済的要因は就業機会の存在。
(34)発展が期待される地域では賃金が増えるからではなく、雇用が増えるから人口が流入。衰退が見込まれる地域では雇用が減るから人口が流出。
(35)規制によって自動車産業が衰退し、大量の失業者が発生するのではないかとの危惧もあった。しかしこれが誤りであった。その例は次の通り。公害規制は短期的には費用の増加を伴うが、中期的には、技術革新や新しい産業、例えば公害防止産業を生み出すことになる。その結果、新たな雇用が生まれ、長期的には経済が成長し、より良い生活環境の社会へ向かう可能性が十分ある。短期的には、成長と環境の間のトレードオフは存在したとしても、環境の社会的費用を広く、経済活動全体の中に含めて考えることによって、長期的にはトレードオフを克服できる
(36)日本の衰退は必然か?の問いに対して、必然ではないというのが経済学の立場。日本経済の将来は、日本の企業がいかに人口減少ペシミズムを克服するかにかかっている。
(37)マルサスの人口の原理(=一人当たりの所得が上昇→子供の数増→人口増大)は間違い。反したことが起きている。
(38)進歩史観とは人間の社会は進歩するというもの
(39)ヴィクセルは人口は一旦減り始めると容易に止まらなくなり、最後には社会が消滅してしまうのではないかとの立場だが、これは杞憂に過ぎない
(40)先進国の経済成長は基本的に労働人口ではなく、イノベーションによって生み出されている。
(41)仕事が機会に置き換えられ雇用が失われることに恐怖心があるが、むしろ逆。経済全体で労働に対する需要が旺盛で、人手が足りなくなり、賃金が高くなる結果、ある種の仕事について、省力のために機械が導入。むしろ労働生産性が上がり、賃金は上昇
(42)所得水準の低い家庭では、出生率は低下していない。所得水準、教育水準の高い富裕層で出生率が顕著に低下
(43)1つの社会がすべての意味で悪かったと言うような事は稀。探せばどこか良いところが見つかるに違いない。
(44)人々の評価が低ければ価格は低くなる。
(45)新しい財やサービスを生み出す(=プロダクトイノベーション)が最も重要な役割を果たす
(46)需要の飽和とは、あらゆるものの需要は必ず飽和するというもの。先進国の成長を抑制する根本的な要因。はじめは需要、それに伴って生産量が高いの伸びを示してもいつしか必ず成長率は鈍化。成長の鈍化どころか、極端な場合にはシュンペーターの創造的破壊により淘汰され消えていくものやサービスすらある。
ロジスティック曲線とは、成長率は鈍化し、やがてゼロ成長になり最終的にある天井へ収束すること。多くの物の成長がロジスティックである。
(47)人間が追求すべき非経済的な目的は芸術
(48)橘木俊詔は経済成長だけが幸福の源泉ではない。格差解消の方が重要とのスタンス
(49)経済成長は必要である
(50)今や企業が家計をしのぎ、日本経済で最大の純貯蓄主体となっている。
(51)移民と競合する労働者が賃金が下がる
(52)国際貿易は、地域の経済成長や雇用創出を後押し。貿易が盛んになれば、地域経済が活性化
(53)移民が、家事や育児をサポートすることで、女性の社会進出が加速し、子供を産みやすくなると期待。移民は、高給女性の勤務時間を増やす
(54)売り手と買い手のお互いの力関係は、その数で決まる
(55)外国人労働者だけで、日本の財政問題を解決するほどではない。
(56)多様性は信頼と無関係。多様性と信頼には関連が認められても、多様性が信頼を損ねているとまでは言えない。
(57)移民により凶悪犯罪が増加するとは示されていない。移民が犯罪を増やすと言うよりは、移民の恵まれない就業機会が犯罪を生む。移民数が増えても、犯罪が増えていない。犯罪率を減らす可能性が高い
(58)伝染病持ち込みのリスクは低い
(59)賃金が下がると生活水準も低下する。
(60)生産性を上げることで、持続的な成長を達成
(61)長時間労働について。単純作業を長時間にわたって続けることは、生産性はなかなか高まらないことにつながる
(62)人口減少の大元である少子化については、何も問題が解決していない。少子化を緩和する実証的な方法は次の通り。
①子供への諸手当を現金給付から現物給付へ切り替える
②保育施設の整備
③教育費の負担軽減(→教育費の高騰が出生率低下の一因)
④長時間労働の是正(→労働時間が短い地域ほど出生率が高くなり、高い地域ほど低くなる。)
⑤大企業の本社機能を地方へ分散
大企業の本社機能を地方へ分散する効果は3.4倍にもなる。少子化の最大の原因である東京への一極集中。
(63)人口減少社会の中で長野に移転して将来的に人材を確保できるのかといった不安。今ではそうした不安は完全に払拭され、従業員の多くは生活環境が快適になって満足。
(64)テレワークを導入する企業の生産性は、導入していない企業の1.6倍にもなる
(65)地域が発展するためには地域から革新を起こせる社会にしなければならない
(66)自由な働き方は有力な少子化対策となりえる
(67)地方の方が結婚率、出生率が上がる
(68)労働時間を短くするように改めれば出生率が上がる。夫の家事育児時間が長いほど第2子以降の出生割合が増えている
(69)国際経済関係が経済問題の中で大きな比重を占めている
(70)ヘクシャー=オリーンの定理は本当に成り立つかについて。ヘクシャー=オリーンの定理とは逆の結果が得られた(=レオンチェフの逆説)が、デイビスとワインスタインの近年の研究では、ヘクシャー=オリーンの定理の予測は、現実の貿易パターンと整合的であることがわかった
(71)貿易自由化により自動車部門から撤退する生産者は、比較優位の考え方に基づくと、別の部門で生産活動を行うべき生産者。自国からは別の財の輸出が増加し、新たな雇用が生み出される。
(72)セーフガード措置は、アメリカのバイクメーカーを救ったか?について。同社の業績回復のうち、セーフガードが貢献した部分は6〜13%に過ぎない。同社の救済のためにセーフガード措置が不可欠であったとは言えない。見かけ上は保護貿易政策に効果があるように見えても、実際の有効性は慎重に検討する必要がある。
(73)集合行為論。その人数が大きいために消費者全体では利益が大きくても消費者1人あたりのメリットは小さい。多数派ほど集団形成が難しい
(74)産業空洞化の懸念:国内の生産拠点の縮小を伴う直接投資は比較劣位産業で起こる場合が多く、したがってその進行は比較優位に基づいた生産特化を促し、特化の利益を高める効果がある。比較劣位産業である限り、たとえ直接投資が起こらなくても、いずれは輸入の増加によりその産業は縮小する運命
(75)貿易と環境について。貿易によって、各国あるいは世界全体の環境がどのような影響を受けるのかを一般に断定することができない
(76)比較優位の原理に従えば、優れた能力、技術を持った人がいたとしても、相対的に能力や技術が劣った人と分業を行うことにより、両者とも利益を受ける
(77)輸出価格の低下=交易条件の悪化

       以上


【解答】
(1)〜(77)すべてT


coffee break

★2100年に日本の人口が約8000万人で定常化すると予測。人口がある程度減少しても日本は国としてやっていけることが実証。そこに必要なのは、生活の基盤として効果的に機能し、人間のからだに心地よくフィットする社会の「デザイン」。日本国内の生態系の供給量で賄える人口は5200万人。日本の人口減少はその理想的な姿に向かっている。

・最適人口規模

全国 市町村 12.8万人 by中井(1988

平等こそ経済成長の源。より平等な社会のほうが成長が早い。不平等度の高さは経済成長を阻害する恐れ

★ 政治意識の低さはむしろ国が上手くいっている、政治が上手くいっているその満足の裏返し

景気が悪いから税収が少ないというわけではない。実は税収は増え続けている

★ 移出産業を持つ(生み出せる)地域は成長力(ポテンシャル)が高い

★ 選好逆転が起こるとき

 同一のカテゴリーでの比較→ 選好の逆転は起こりにくい

 異なるカテゴリーでの比較→ 選好の逆転が起こりやすい

★ 貯蓄を促す

a. 貯蓄プランに入りたい人は手続きをしてください

b. 貯蓄プランをやめたい人は手続きをしてください

aはオプト・イン方式,bはオプト・アウト方式。社会的の望ましい状態をデフォルトにして,オプト・アウト方式を採用すれば、個人の自由を損なうことなく,社会的に望ましい状態を実現しやすくなる

★ 苦情処理(対応)と再購入決定率には相関関係

★ 出生率高い理由。街の魅力1位は「職住近接」

 経済成長貧困撲滅

経済成長率と貧困撲滅率の間に正の相関関係

 心配に値する本当の心配事は全体の4%しかない

生産性を上げる鍵は労働条件より人間関係

人は無意識のうちに差別している

★ 単に道徳規範を思い出そうとするだけでも、道徳的な行動を促す効果がある

★ 私たちの大半は、たいていは健康で判断や行動もほとんどの場合はまずまず適切

結婚が続くか否かを予測する式(byドーズ)

セックスの回数ーケンカの回数

マイナスにならないように!

★ 交通事故死者の状況別人数

自動車や自転車等に乗車中>歩行中

★ 人間の意思決定の65%は「非合理的」。決断のうち95%3秒以内になされ、65%が理論ではなく感情に基づいて行われる

ヘルメットつけないのとつけたのとでは、前者の方が致死率2

★ 大規模小売店舗法と中心商店街の空洞化

有名大学卒業は採用時の判断材料には必ずしもならない

★ 貧困撲滅は、人権尊重、人権拡大につながっている。貧困撲滅は重要

★ 結果に大きな格差をもたらす社会は、必然的に機会においても、全く不均等な社会

権力は腐敗する

汚職撲滅のためには大きな政府を潰せ

★ 国民の一人当たりの所得と環境保全に費やす支出の間に強い相関関係がある

★ 軽微な犯罪が厳しく罰せられる時、犯罪者はより悪質な罪に及ぶ

常習的犯罪者の社会復帰が極めて難しいことの証拠は圧倒的に多い。

警官を増やし、処罰を厳しくすべき。ただちに犯罪を減らしうる

社会政策が短期的にできる事はほとんどない。

適切な処罰を課す事は、犯す者の数を減らす上で効果的。

入獄者数の増加が、犯罪を減らす効果を発揮。


抵抗の減少

仮に、課税が犯罪者の手にある銃器の数を増加させないとしても、課税は犯罪の発生率を高める方向に働く


逮捕及び有罪宣告の可能性をより確実にすることが強盗などの多くの重罪に対する効果的な抑止力になる。犯罪者の逮捕をより確実にし、有罪宣告までの審理をより迅速にするため、警察と裁判所への支出を増加すべき

刑期を厳しくすれば銃器携帯者による発泡は抑止されよう


犯罪が大きく減少した理由の一端は投獄率の大幅上昇にある

低技能労働者に対する雇用機会を改善することがひいては犯罪を減少

根本的な新しい発想を検討

麻薬を合法化すれば末端取引価格は90%以上も下落する。その結果、麻薬中毒者が高価な習慣を続けるために犯罪へと向かう必要性はなくなる。その上、価格の大幅低落は、これまで成功を収めてきた麻薬取引人の得ている巨額の利益をも消失させる。麻薬販売は広報酬でも魅力的でもなくなるので、麻薬販売に手を染めることも大幅に減少。


合法化が万能薬ではない


闇経済ではなく合法的経済で働くことからより良い報酬が得られるなら犯罪に引き寄せられる事はより少なくなる。犯罪は割に合わない


犯罪の断固たる、取り締まりは続けるべき


周りが見えなくなるほどの愛

急いで結婚すれば、ゆっくりと後悔することになる


現代経済においては、経済成長は教育され、訓練された労働力を必要とする


人的資本に対する投資

所得の不均衡は悪いことばかりではない。

所得格差拡大と経済成長とが互いに関連している


経済成長の達成には、教育やその他の形の人的資本に対して相当量の投資をする事が不可欠


現状維持の弊害


時の勢い


現状維持の圧政

一度悪しき公共プログラムがしばらく存続すると、その除去はその創設に比べてはるかに難しい

 

乱獲を断念させるために漁獲に課税せよ


宗教も自由市場によって栄える


様々な行動の費用と便益を敏感に考慮した上で選択が行われるとの認識に立つ経済学的思考


行動がインセンティブに反応して変化すると言う事実


犯罪は逮捕や処罰では防止できないと言う主張


行動は、インセンティブに決定的に依存する


既成の考え方にとらわれない創造性

批判を恐れない信念


人生がどんな状況に立ちいたったとしても、選択と投資と言う視点を確固として持つことが、個人の自立にとって不可欠


理解することがより賢明に行動する公算を高める

★ どんな社会にも一定程度のフリーライダーが出現することは防げない。その出現により集団や社会が治安の維持か悪化のどちらの方向に動くのか鍵を握っているのが、フリーライダーの周囲にいて、その逸脱行為を目の当たりにする人々の心理。

サボったりルールを破ったりすると、そのまた周囲の人たちが同じように影響を受けて逸脱行為に走り始める。最初は1人だったフリーライダーが、次第に追従する人々を増やし、社会全体にとって多くの人々が逸脱行為に走り始めてしまう。そして社会は崩壊状態に陥ることになる。誰もが利己的に行動することで、結局、全員が困った状態に陥る現象は「共貧」と呼ばれ、社会を統治するうえでの重大な課題である。

最初の逸脱者が、集団や社会の規律を崩壊させていく=サッカー効果(悪いリンゴ効果)

★ 現実にはコースの定理のように当事者による外部性の解決はうまくいかないことが多い

★ 文化経済学

文化政策→経済効果と経済成長を見込んでいる

★犯罪の経済学  (小林論文)

事故を少しでも減らすのが目的なら、社会的費用が増大してもやむを得ないかも知れないが、経済学の発想はそうではなく、基本的には社会的費用を最小化することが目的

仮に銃の所持に大多数が否定的だとしても、銃の規制については議論が分かれる。経済学の考え方は、最も安いコストで銃を規制する方法を採用。例えば人びとから完全に銃をとりあげる刀狩り方式。膨大なコストを要する。また、警察力を強化し銃の悪用の取り締まりを強化するという方法も。同じ効果をもたらすのにどちらがより安いコストで可能かが問題に。しかし、法学的考え方では必ずしもそれだけではない。銃による犯罪の絶滅が最優先されるべき目的なら、どんなにコストをかけても刀狩り方式で「銃狩り」をやるべきだという考え方がありうる。法は正義を実現するためのものゆえ、正義の価値とそれを実現するのに要するコストとの比較で常にものごとを考えているわけではない。川に100円のコインを落として、もしそれを捨うのに500円かかるとすれば、人はそれを捨おうとはしない。100円を盗んだという疑いをかけられたなら、その疑いを晴らすためには1000円でも1万円でもかける。人は名賞のためには、たとえどんなに裁判費用がかかろうともそれを守ろうとするかも。人びとの法行動にはそうした部分が含まれる。


現実には社会的費用最小化の論理だけで動いているわけでない!


防止費用と許容しうる犯罪量との関係は右下がり


環境が良ければ、悪に染まりにくい


有罪確率と罰の厳しさを公共政策的に動かすことはできる。しかし、公共政策にはもっと他の手段がある。罰の形として禁固は、犯罪者自身の働く機会を奪うわけであるから、それだけ社会的損失を増すので、罰金にくらべて劣る方法である→禁固は犯罪者に機会費用をもたらす。犯罪者が負担する費用は、犯罪行動それ自体においてもかかる。もし潜在的犯罪者が高賃金を得、安定した生活を得ているなら、犯罪行動や、逮捕され有罪になることによってもたらされる機会損失は膨大なものに


有罪の確率については、犯罪者の所得と負の相関を持つ

投獄、禁固による犯罪者の損失は、犯罪者の所得と正の相関

現実には罰の形と罪の性質とは関係が深い

殺人のような憎むべき犯罪は、貨幣額では被害者に対する補償にはなりえない。この種の犯罪においては、被害者は加害者によっては完全には補償されえない。犯罪を抑制するには、罰金以外の刑罰によって補完されねばならない、と述べている


刑期の価値は、犯罪者の所得と正の相関


犯罪による社会的損失最小化という目的にとっての最適な罰を示している


ベッカーは、罰の形態としての罰金の優位性を強調。第一に罰金は支出の移転であり、犯罪者から社会に対して所得が移転するだけであり、それにともなう資源の消費すなわち費用はいらない。第二に投獄・収監は、犯罪者自身の時間の消費がある。拘束されている期間中、働くことができないから、その間にもし働いていたなら得られたはずの所得を失う。罰金利用は、最適な罰についての情報が得やすいというメリットがあることを指摘。理論上は、罰金は被害者を完全に補償し、少なくとも経済的には、以前と同じ状態に戻すことを可能にする。純経済理論的に考えれば、罰の形態としては、罰金が最も望ましいように見える。しかし罪に対する代償を貨幣で表現するのは、罪を金で買うようなものであり、不道徳という批判が当然のことながら出てくるだろう。そのような予想される批判に対し、ベッカーは、「罰金は犯罪の価格と考えうる。しかし、他の形態の罰もそう考えることができる。


犯罪者の所得に応じた罰金が妥当であるという主張


罰は罪の代償


より貧しい犯罪者が、罰金を払うよりは禁固を選んでいる場合が多い。

罰金の問題については、純経済論的には、罰の送行にともなうコストがかからないこと、禁固のように、犯人自身の所得を得る機会を奪うことによる機会費用がかからないことなどから、優位にあると思われる。しかし刑罰には、純経済論以外のさまざまな要素があり、ベッカーが罰金の優位性を強調するのはあくまでも、倫理、道徳、被害者感情、犯罪を憎む人々の感情、復讐とか報復といった刑罰が歴史的に持っていたさまざまな要素を度外視している


外部効果の一種。個人の犯罪抑止活動が個人の犯罪被害を防ぐのにも効果を発揮。ある家でよく吠える犬を飼っていると、隣近所にも影響があり泥棒に入られ難いのはその例

犯罪防止に個々人がどれくらい支出しているかを測定する方法は、いろいろ考えられる。たとえば、警備保障、警報装置、錠前、等の売上額を産業小分類から推計するといった方法もあるであろうが、正確な推計は、難しい。

犯罪に関しては予防の内容および費用のかけ方に多くの問題がある。おそらく抑止効果を最も強く発揮するには犯罪発生以前の段階での予防が最も有効。しかし潜在的犯罪者あるいは無関係な善意の人々の人権を侵害したりプライバシーを侵害するおそれがあり、むずかしい。ベッカーの議論における予防費用は、逮捕、有罪にする警察、司法活動の費用であり、どちらかといえば、事後の活動に要する費用

★経済成長を諦めることはほとんど不可能。しかし環境保全なしに持続的な経済成長もあり得ない。環境はあらゆる経済活動を支える社会基盤。保全を行わず臨界状態のCを超え環境悪化すると、不可逆的な被害が生じ、社会は崩壊する。Cに向かう軌跡が社会の崩壊への経路(図)。

一定以上の汚染になった場合、所得ゼロには向かわないがそれ以上の経済成長が不可になる状態が成長の限界。失敗例ーイースター島の崩壊

無計画な伐採→森林を完全に破壊→森林破壊を契機とした食糧難は頂点に達す→飢えた人々による無惨な内戦状態やイースター島文明消滅

環境破壊により環境の自己再生能力低下が原因


逆に成功例が日本の江戸時代。

森林伐採の規制による供給制限&植林による供給増加→文明崩壊の危機を未然に回避

環境の自己再生能力が低下する前に環境政策を適用し、環境破壊を起こさない産業部門へ活動を転換させたといえる。経済成長と環境保全の両立を可能にするには単なる所得増だけでなく、環境の自己再生能力や適切な政策・技術も重要



全消費の64%は女性が

★ マナー違反と事故の相関

無事故群は他の通行者に十分に配慮している

★一般に違反を繰り返すドライバーは事故が多い

人間関係の絆が強い方が死亡率低い

雑談→長寿に

★ 現在の意思決定が将来にも影響及ぼす=動学的意思決定。現在の行動が現在にしか影響与えないときの意思決定=静学的意思決定
★ 相対年齢効果は広義では相対的な生まれ月による諸々の差を指すが、狭義では年度の開始時期による学力等の差に注目することが多い。教育経済学で後者の狭義の相対年齢効果に着目する理由は、①同じ学年でも教育を受けている日数が短いという発生メカニズムについての解釈が明確②年度を何月からスタートさせてもこの差が存在しうるという政策的重要性による。私の議員の分析は、生まれ月による何らかの差が確認されるという広義の意味では相対年齢効果を示していると思うが、発生メカニズムの解釈まで踏み込める狭義の相対年齢効果といえるかは難しいと思う(狭義の相対年齢効果であれば、右下がりか右上がりの明確な傾向が観察される)
過剰参入定理ー競争が効率を妨げることも。自由な参入を許すと、社会厚生がかえって低まる
★マーシャル均衡ー生産量の調整によっても、安定状態をつくることができる
★ 利潤率の傾向的低下法則ー 資本主義のもとでは利潤率が必ず低下し、やがて崩壊
経済が発展すると人口が増える 
★ 限定的ではあるが、経済要因は凶悪犯罪に影響を与えている。 
犯罪は減少している
信頼の形成→高い経済効率
★視野狭窄は怖い
★時間の節約と安全性のトレードオフ関係
★フリードマンのK %ルール 貨幣供給量を経済成長率に固定
★ワルラス型調整過程ー考え方があまり現実的でない
X非効率ー組織体の規模が大きくなるにつれ、様々な観点から効率が低下
★補償原理ー不利になる経済主体に補償を与えた上で、パレート効率的な資源配分を目指す考え方
カルドア、シトフスキー
経済政策の原理=補償原理に従った所得再分配政策を前提にパレート効率的な資源配分を追及
★ レイ曲線
縦軸 政府部門赤字/GDP
横軸 経済成長率      U字曲線
★ 戦争すると儲かる
ポーストの戦争の経済学
戦争が経済にプラスになる場合の鉄則
戦争の鉄則 4条件
1 戦争前のその国の経済状態
その国が不況
戦争によって政府支出が必然的に増える
戦費調達のために通貨発行も盛んになるため、デフレも脱却
軍事ケインズ主義

2 戦争の場所
なるべく本国から遠いところ
単に本土を攻撃されないと言うだけでなく、自国が依存している資源の供給国周辺及び輸送路も戦場にならないと言う点が重要

3 戦争資源・兵士の動員(戦時動員体制)の量
戦争に動員できる労働力がどれほど余ってるか
失業率が高いときほど戦争の経済効果が高い
 
4 戦争の期間と費用及び資金調達法
戦争資金を得る方法→国債発行、増税、通貨発行、非軍事部門の政府経費削減など

戦争に直結する3つの経済的な要因
ピグーの戦争の政治経済学
1 支配の欲求と利益への欲求
2 製造業者、貿易商、金融業者による膨張政策への支持つまり政治的帝国主義の後押し
3 兵器製造業の利益追求

論理の飛躍
論理の破綻

アローの一般不可能性定理
一人一人個人の選好が異なる時、矛盾のない社会的選択が不可能
★ 謝罪の経済学
謝罪が社会的なコストを下げ、経済学的にみても合理的。部分的謝罪の範疇としての中途半端な謝罪、心のこもっていない謝罪、自らの金銭的・非金銭的なコストを伴わない謝罪では効果は乏しく、“炎上”してしまう危険性
・炎上とクチコミの経済学
ネット炎上の参加者は、ネット利用者の約0.5%にすぎない
ネットのクチコミは多くの利用者の意見ではなく、投稿者はそれほど多くない
炎上に書きこむ人の多くは「正義感」をモチベーションとしている
炎上してしまった場合、重要なのは事実関係の公表に徹すること。迅速な謝罪と今後の対応の明確化が求められる。
公費負担原則
公共サービスの費用に税財源を充当する基準となる考え
ある程度以上に経済成長した国では人口は増えなくなる
★人手不足が経済成長を育む?ー必要は発明の母
長く勤めたいと思われる会社が伸びる
★経済も成長政策、安定化政策、再分配政策の3つが揃っていることで、政策から得られる果実は大きくなる
★過去との比較による不幸を減らすためには、年率1から2%ずつでいいから、地道に経済成長していると言う状況の維持が必要と考えられる
SNSの滞在期間が長い人は幸福度が低い。
隣の芝生は青い。比べることが幸福度を下げる
→比べない!
幸福度を上げる要因
若い、資産・所得が大きい
幸福度というのは、主観的なもの

曖昧さ回避
後悔回避
運命論的世界観と確率論的世界観
本来の利他性と本当は利己的な利他性
経済学の合理性を持っていれば、どんな状況でも最適な行動が取れる
インフラ整備で、経済発展
★ 失業率はゼロにはならない=NAIRU
2パーセント半ば位が最低限
成長は、社会みんなのもの

GDPを増やしたいなら、財政出動と金融緩和をセットで行うのが正解

ポジティブな議論(正誤)とノーマティブな議論(価値判断)

今はマイナスまたはゼロ金利環境なので、国債発行は将来世代へのツケとはならない

課税平準化理論
世代をまたいで、平等な負担を
世代を超えて負担を平等にならした方が、一国の経済を健全に保ちやすい 

大規模災害では、長期国債で復興費をまかなったほうがいい

1つの政策で1つの効果
→政策割り当て定理   課題の数=手段の数

政府に最低賃金アップを求めるナンセンス

国にできるのは、せいぜい経済成長を促すことで、失業率を下げるまで。賃金上昇は、その後からついてくるもの

ケースバイケース

国民負担率48%

同等性定理
輸入割当と輸入関税同じ効果

保険数理
長期的に給付と負担のバランスを取る仕組み

参考文献

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吉本佳生(2009),『出社が楽しい経済学』,NHK出版
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上念司(2019),『経済で読み解く日本史 大正・昭和時代』,飛鳥新社
渡辺隆裕(2019),『日経文庫 ビジュアル ゲーム理論』,日経BPM
飯田泰之(2014),『日本がわかる経済学』,NHK出版
筒井義郎・山根承子(2012),『図解雑学 行動経済学』,ナツメ社
高橋洋一(2020),『実生活で役立つ“武器”になる! 明解 経済理論入門』,あさ出版
ゲーリーベッカー・ギティベッカー著,鞍谷雅敏・岡田滋行訳(1998),『ベッカー教授の経済学ではこう考える―教育・結婚から税金・通貨問題まで』,東洋経済新報社

栗山浩一・馬奈木俊介2016),『環境経済学をつかむ  第3版』,有斐閣