EDRとCDRはどんな時に活用できるんだろう……③

未熟なドライバーおよび高齢ドライバーへの支援にも役立つ。

詐欺事例の場合は、隠された嘘をEDRの記録から明確にしていくというCDRの役割について紹介しました。そして本項では、誤って認識された事実、あるちは忘れさられた真実をEDR記録から明らかにできる可能性についてお話ししたいと思います。

 

ここでは前提として、運転者に事故に至る過失や故意はなかった場合を想定します。つまり事象としては、車両や相手方など外的要因で事故が起こったにもかかわらず、なんらかの理由で誤認され、運転者が責任を問われることになってしまった事例ということです。

 

ここで主に活用されるのは、事故直前の運転者の操作状況を記録したプリクラッシュデータです。アクセルペダル、ブレーキペダルの踏み込みの有無、ハンドルの切り具合、さらにはスピード、エンジン回転数などのデータを見れば、事故に至る状況を判断できる可能性があります。

 

相手の過失、故意による追突・衝突事故では、当事者双方の車両のEDR記録を比較検証することで、さらに明確に責任の所在を判断できることでしょう。

 

タイヤやブレーキといった車両のメカニズムに故障などの齟齬があって事故発生につながってしまった場合も、時に運転者の操作ミスが疑われることがあります。しかしEDRデータで事故につながるような運転動作が見つからなければ、責任を問われる可能性は低くなるハズです。

 

もうひとつ、物理的メカニズムではなく電子制御のシステム……とくに近年、車両装着が一般化している安全支援システムに瑕疵があった場合も、EDRには各システムのエラー情報が蓄積されている場合があります。エラーの詳細までは判然としないものの、故障の疑いがあるという事実を把握できることそのものが有用なのです。

 

こうした事実の把握は、普及が急がれている自動運転システム搭載車で事故が起きた場合にも、責任の所在を判断するヒントのひとつになり得ます。

 

自動運転のレベルが高まるにつれて、人が運転に関与する割合はどんどん減っていきます。そんなクルマが事故を起こしてしまった時、果たして「誰」に責任があったのか……それを明確にするすべもまた、EDRに頼るシーンが増えることになりそうです。

 

もちろん、EDRそのものの進化も求められます。より多彩なドライバーの操作情報、システムの動作状況、事故時のクルマの状態などを収集し、保存しておくことが必要になるでしょう。

 

こうしたEDRの記録を分析することで得られるメリットを享受できるのは、免許を取得したばかりの未熟なドライバーや、昨今は社会問題となりつつある高齢ドライバーの事例が多いと考えられます。

 

事故を起こした時の運転操作の記憶を覚えていなかったり、あるいは間違って記憶している場合も考えられます。そんな時、EDRのデータを使えば、事故直前までの運転状況を把握できる場合があります。

 

ただし冒頭の「前提」は非常にもろく、崩れやすいことも覚えておいてください。

 

EDRに残された記録が、必ずしも本人にとって都合がいいものであるとは限りません。逆にクルマや相手方には瑕疵や過失はなく、本人の運転に明らかなミスや誤操作があった事実も、記録されているからです。

 

けれども本人だけでなく、家族がその「真実」を知ることができるのならば、たとえ実際に誤った操作で事故を起こしてしまったケースであっても、納得することができるはずです。それが結果的にさまざまな対立、係争の短期での決着につながっていくのだとすれば、積極的に活用しない理由はおそらくありません。<多重事故の責任按分は、かなり悩ましい につづく>