「殿、利息でござる」の原作、「穀田屋十三郎」が収められた3つの短編集です。
あとがきで著者の磯田さんは元になった古文書を「読んで、泣いた。」と書いている。
私は、「穀田屋十三郎」を読んで、泣けました。
磯田さんの学者ならではの解説も非常に良いです。
五十万人の庄屋の重要性、鋳造権と幕府の衰退等々。
他の2作は、
「中根東里」
「大田柿蓮月」
同じく人名だけの題です。味気ないなあと思いましたが、読み終わった後は、これしかない!です。
特に、「大田垣蓮月」は女性で、「無私」ではありますが、壮というべきか烈というべきか。読みながら少し眠くなったら眠ろうと思っていたのが、吹っ飛びました。
映画は難しくとも、是非上質な映像作品にして欲しいです。
作中の心打たれた一節を、磯田さんの名文を習う意味も込めて、書き記します。
江戸期の庶民は、-親切、やさしさ
ということでは、この地球上のあらゆる文明が
経験したことがないほどの美しさをみせた。
日本人は(当然全員ではありませんが)ちゃんとそれを受け継いでいる、と信じています。