頼母「南門に兵を回せ。」
家来「はっ!」
頼母「天神橋は何としても渡らせるな!」
家来「はっ!」
吉十郎(頼母の息子)「父上!」
頼母「吉十郎…。なして、ここにいる?」
吉十郎「母上から、お城で父上と共に働げと言われました」
頼母「一人でここに来たのか?」
吉十郎「母上も、妹たちも皆、家に残りやした。」
頼母「そうか…。(間をおいて)そう、決めだか。」
《西郷邸内を歩く板垣》
板垣「よし、この屋敷に陣取る。城の真ん前じゃき、ちょうどええ。」
兵「はっ!」
板垣「ここに作りよ!」
兵「はっ!」
板垣は一人で邸内を歩くと、西郷家の自刃を目にする。女たちが自刃し、倒れ込んでいる。
板垣「こりゃあ…。」
娘「もし…。敵か?お味方か?」
板垣「味方や。」「よし…楽にしちゃる。」
娘「母上は?」
板垣「みんな、立派なご最後やった。」
兵「板垣様」
板垣「入ってくるな!入ったら、いかん!」
草笛ナレーション「この日、自決した藩士家族は200人ともいわれる。女たちの無言の抵抗は壮烈を極め、征討軍の指揮を鈍らせた。」
《洞窟を歩く白虎隊。疲れ切った様子。》
草笛ナレーション「そのころ、戸ノ口原を退却した白虎隊の少年たちは、敵の目を逃れ、飯盛山に辿り着いていた。」
悌次郎「あっ、お城が…燃えでる!」
儀三郎「よぐ見んだ。燃えてんのは、城下の屋敷だ。」
隊士「お城は無事か?」
隊士「俺たちも戻んべ。」
貞吉「どっから行ぐ?滝沢海道か?」
茂太郎「いや、街道は敵でいっぱいだ。南から回り込むべ。」
悌次郎「討死も覚悟で正面から行くべ。」
儀三郎「討死なら、いいげんじょ、その前に敵に捕まったら…。敵に捕まんのは、恥の恥だ。」
隊士「日新館で教わったな。」
隊士「腹を切んべえ!生き恥をさらしては、殿に面目が立たぬ!」
隊士「皆、いいな!」
その言葉に頷く隊士たち。座り込み、次々と上着をはだき切腹しようとする。
隊士「白虎士中二番隊、お先に参りやす!」
腹を切ろうとする悌次郎が八重の言葉を思い出す。回想での八重『悌次郎さん、よ~く引き付げて撃ぢなんしょ。まどもに撃ぢ合って、無駄に死んでは、なんねえ!』我に返る悌次郎。
悌次郎「待て…。まだ、弾は残ってる!」
和助「お先に、御免!うっ!ああ~!」
隊士「見事だ!皆も遅れるな!」
うめき声を挙げ、一斉に隊士たちが腹を切り始める。悌次郎もその勢いに天を仰いで
悌二郎「俺も!皆と共に!あ~っ!」
燃え盛る城下を望みながら腹を切る悌次郎
悌次郎「あ…ああ~っ!あ~!」
八重の桜 三/NHK出版

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