《草笛ナレーション》
慶応四年(1868年)八月二十三日
新政府軍は東北諸藩を次々と攻略し、怒涛の勢いで会津城下へと迫った。
《山本家玄関先》
砲撃、銃声の中、八重が玄関を閉める。。
八重「もう銃声が近い。急ぐべ!」
うら「はい。」
佐久、八重、うら、みねが門を出ると、
佐久「あっ!高木のおばん様!」
八重「おばんっ様、行くべ!」
うら「荷物は私が」
佐久「もう、心配ねえがら。」
澄江「ありがとなし」
八重「お隣のユキさんは?」
澄江「分かんねえ」
八重「ユキさん!ユキさ~ん!」
八重が戸を叩きながら「ユキさん!ユキさん!」
ユキ【剛力】「八重ねえ様、その格好…(八重は三郎の形見を身につけている)。」
八重「いいがら早ぐ!みんな続々とお城に向がってる。」
ユキ「分がった。すぐ行ぐ。」
八重「急がんしょ」
互いに頷きあう八重とユキ。ユキは家の中へ戻り、女だけの家族へ
ユキ「んじゃ、行ぐべ。」
ユキの祖母「私は残る」
ユキ「何で!?」
祖母「年寄りが、お城にあがっても穀(ごく)潰しになるだけだ。」
ユキ「おばば様!」
《滝沢本陣》
田中土佐(B作)「戸ノ口原も破られたか!?」
跪き報告する高木盛之輔「既に敵軍であふれておりました。」
すぐ後ろの門に銃弾が飛んでくる
土佐「もはや猶予はならん!殿をお守りせよ!」
容保「戻るぞ!」
土佐「はっ!」
そこへも銃弾が飛んでくる。しゃがみこむ容保たち。
横にいる弟・定敬(さだあき)へ容保「そなたは、ここを離れよ。」
定敬「何を仰せです!それがしも共に城に入って戦いまする!」
さらに銃弾が飛び交う
容保「ならぬ!」
定敬「お言葉、従えませぬ!」
容保「いや!ならぬことは、ならぬ!儂は城と命運を共にする。そなたは連れていけぬ。去れ!」
定敬「兄上!」
銃弾がかすめる
容保「行け!急ぐのだ!」
定敬「必ず、援軍を連れて戻ってまいりまする!」
家来「定敬様、さあ、こちらへ!」
《半鐘の鳴り響く中、多くの女、子どもらが続々と城へ避難する。八重と山本家の姿も》
草笛ナレーション「会津の長い一日が始まった」
《鶴ヶ城》
八重「(高木の)おばん様(つぁま)はこごに。」
高木祖母「ありがとなし」
女1「(八重の姿を見て)男の子かと思ったら…。」
女2「お城に、あの格好であがっとは、ぶしつけでねえべか?」
女1「おなごが鉄砲持って…。」
佐久「八重」
八重「おっ母様、私は行ぐ。私はここに戦いに来たんだから。」
佐久「言葉が出ねえ。戦に出ていくおなごに、かける言葉なんて知らねえもの。」
八重「さすけねえ。必ず無事で戻っから。」
八重がその場を離れようとすると、照姫一行が現れる。中に時尾もいる。
照姫「八重か?」
八重「はい」
照姫「勇ましい姿じゃな。」
八重「これは、伏見の戦で亡くなった、弟の形見にごぜえます。私は、弟の魂と共に戦う覚悟にごぜえます。」
照姫「弟と共に…。では、その鉄砲に、会津武士の魂を込めよ。」
八重「はい。」
時尾「八重さん…」
八重「時尾さん…」
ここで八重と時尾の幼い頃の回想シーン。
幼い時尾「八重さん!待ってくなんしょ!」
次いで成長してからの回想シーン。場所は黒河内道場で二人は稽古着姿。
八重「時尾さんに何かあったら、いづでも、お城さ飛んでいぐから。」
時尾「鉄砲担いで?」
八重「うん」
回想シーン終わり。現実の世界。廊下で見つめ合う八重と時尾。
八重「行ってくる」
時尾は涙をこらえるような表情で頷く。八重は照姫、佐久らに頭を下げ、その場を離れる。
《八重は城内の重臣らが勢ぞろいしてくるところへ出くわす。》
佐川(獅童)が走り込んでくる「佐川官兵衛、ただいま戻った!
神保内蔵助「おう、戻ったか。」
佐川「敵の動きが、あまりに早ぐ、戻るのが精一杯であった!殿はいずこに!?」
神保「滝沢に向がわれた。」
佐川「滝沢!?あすこは、もう危ねえ!」
神保「ああ、殿には土佐がついておる。儂は六日町口の守備に就ぐ。」
佐川「それがしは大町口に!やつらを片っ端からひねり潰して、殿を城にお戻しする!者ども!」
周囲の一同「お~!」
梶原(池内)「お待ち下され!それでは、お城の守りが手薄になる!」
神保「鉄砲の撃でる者をかき集めておけ!」
梶原「年寄りと子どもばっかで、指揮を執るものがおりませぬ!」
佐川「敵は、外堀で打ぢ払う!」
神保「敵に城を囲まれでは、幾らももたぬ!」
梶原「しかし…。」
八重「私がやりやす!」
一同が八重のほうを向く。
八重「私が鉄砲隊を指揮致しやす。」
梶原「八重殿」
八重「やらせてくなんしょ!」
神保「おなごの出る幕ではない。下がれ。」
八重「んだげんじょ…」
佐川「おなごに戦はできぬ!」
八重「できる!」
神保「平馬、後は頼む。どけ!(と、八重の脇を歩き出す)」
佐川「ほれ!」
八重「今このときに!そった昔ながらの考えで、なじょしますか!これは、男だけの戦いではねえでなし!都から傷だらけになって帰ってきた皆様を観だときから、帰って来なかった家族を待ち続けた、あのときから、男もおなごもねえ!これは、会津全ての戦いだ!私を戦に加えっせ!私の腕は、お役に立つ!それを使わねえなら、戦いを放棄したと同じ事!私は山本覺馬の妹だ。鉄砲の事なら、誰にも負げねえ!敵にお城は渡さねえ!仲間がやられんのを、黙って見るつもりはねえ!私たちの大事なふるさと、会津は、この手で守る!」
頷く神保「んだら、心行くまで戦うべ。いくぞ。」八重の肩に触れる。
佐川「お~!!会津武士の姿、目に焼き付けてくれる。みんな、何があろうと、会津を守り抜くべ。いいか!?」
一同「おお!!」