ニトロソ化ストレスがHFpEFを引き起こす

Nitrosative stress drives heart failure with preserved ejection fraction

https://www.nature.com/articles/s41586-019-1100-z

Nature. 2019 Apr;568(7752):351-356. doi: 10.1038/s41586-019-1100-z. Epub 2019 Apr 10.

 

比較的未知の要素の多い疾患である、駆出率が低下した心不全(heart failure with reduced ejection fraction;HFrEF、ヘフペフ)の解明に一石を投じる論文

学んだことまとめ


1. 小胞体ストレス応答
小胞体ストレス応答とは、小胞体内腔に正常に折りたたまれなかったUnfolded Proteinを不良蛋白質を認識したうえ、
1.蛋白質の新たな生合成を抑え、2.折りたたみ直す、3.不良蛋白を分解する、ことで蛋白質の品質を管理する機構である。
正常な小胞体ストレス応答(特にIRE1α-XBP1の系)は、
unfolded proteinを認識→IRE1αがリン酸化→XBP1s生成→小胞体ストレス応答の賦活化、と進む。

2. 2ヒット理論
高脂肪食(High Fat diet)+L-NAME投与の両方の条件を満たしたとき、マウスはHFpEFの形質を示した。
片方だけでは完全な拡張不全には至らず、2ヒットが必要であった。
→高脂肪食(High Fat diet)+L-NAME投与により、HFpEFのモデルマウスの作成に成功した

3. HFpEFのモデルマウス
上記のHFpEFのモデルマウスでは、XBP1sの減少と、(その上流である)IRE1αのリン酸化の減少を認めた。
実際の患者からの心臓生検サンプルでも、XBP1sの減少とIRE1αのリン酸化の減少を認めた。
→HFpEFは、XBP1sの減少が病態に関わる可能性を示唆

4. XBP1sの関与を支持する実験
ドキシサイクリンの投与をやめるとXBP1sを過剰発現するトランスジェニックマウス(つまり任意のタイミングでXBP1sを発現させることが可能なマウス)を作成した。
このマウスに、高脂肪食(High Fat diet)+L-NAME投与でHFpEFを発症させた後に、XBP1sを過剰発現させると心筋の拡張能および運動耐容能が改善した。
→XBP1sの増加は拡張不全を改善させる

5. iNOSの増加
一般的に、iNOS(炎症などで誘導されるNOS)の増加は蛋白質のS-ニトロシル化を増加させる。
HFpEFモデルマウスでは、iNOSの遺伝子の発現増加がみられた。
また、XBP1sの上流であるIRE1αは、S-ニトロシル化を受けていた。
S-ニトロシル化を受けると、IRE1αのXBP1sを生成する活性は減少する。
ニトロシル化しないような変異体のIRE1αを発現させたマウスでは、上記条件でもXBP1sの減少は見られなかった。
→iNOS増加が原因で、IRE1αがS-ニトロシル化を受け(機能が妨げられた結果)、XBP1sが減少したと考えられる

6. iNOS阻害の実験
NOS2ノックアウトマウス(iNOSの発現しないマウス)を作成した。
このマウスに2ヒットさせHFpEFを誘導を試みても、IRE1αリン酸化は減少せず、XBP1sも減少しなかった。
左室の拡張不全も軽度であった。
→iNOSを阻害すれば拡張不全に至らない可能性を示唆

7. iNOS阻害薬L-NILを用いて実験
HFpEFを誘導したモデルマウスに、iNOSを阻害する薬剤であるN-NILをマウスに腹腔内注射した。
すると、拡張不全がある程度改善した。(ただしXBP1sは回復していない)
→やはりiNOS増大がHFpEF発症の病因であることを支持する


まとめ
High fat diet + L-NAMEでcNOSを阻害→unknown mechanism→iNOSが誘導される→IRE1αがS-ニトロシル化を受ける→XBP1sが減少する→HFpEFの形質が出現する
 

 

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Nature 568, 324-325 (2019) doi: 10.1038/d41586-019-00983-4

https://www.nature.com/articles/d41586-019-00983-4

https://media.nature.com/w800/magazine-assets/d41586-019-00983-4/d41586-019-00983-4_16628206.jpg