朝、目が覚めると
目覚ましよりも先に聞こえてくる音がある
セミの声
夏の風物詩ともいえる彼らの声は
時としてうっとおしいほどうるさいけれど
なくなってしまうときっと物足りないんだと思う。
「なぁ、何でセミはあんなにうるさく鳴くのかな?」
「きっと嬉しいんやで。」
セミの鳴き声は喜びの声
そうあの人は言った。
嬉しくて嬉しくて
きっと鳴かずにはいられないんだと。
セミの生涯はとても儚い。
3年間もの間ずっと土の中ですごすのだ
生まれてからずっと光を浴びることもなく
土の中でただひたすら蓄える。
その先に広がる世界がどんなものかも
明確なビジョンさえ見ることが出来ないのに
ただ、自分の中の本能のを信じ、
その先に広がる明るい世界を信じ、
逃げ出すことなく、
あきらめることなく、
来るべき時を迎えるために、
自分自身を形成していくのだ。
だからこそ、はじめてみる地上の世界は
たとえそれがどんなものであっても
計り知れないほど光り輝き
羽を広げたその空は
喜びに満ち溢れているんだろうと思う。
「なぁ、私がセミやとしたらもう空を飛んでるのかな?」
「じゃあ、ピュコの空はどんな空?」
「へっ?」
「わからん?」
「うん。」
「じゃあまだ飛んでないんちゃう?
目に見えない空を飛ぶことはできへんやろ?」
そう、きっと私はまだ土の中なんだろう。
土の中にいる幼虫はきっと自分が土の中にいることさえ
気づいていない。
そして私もまた、自分がどこにいるのかさえ気づいていないのだ。
でも、ひとつだけわかる
ココが私の最終地点でないことが。
目指すべき世界がまだあるということが。
だから私は、まだまだ自分を磨き上げていかなくちゃならない。
30年生きてきて、イッチョ前に大人になった気がしていたけれど
まだ自分の空さえ見えていないのだから
ただの幼虫でしかないのだ。
セミが空を飛べる期間はたった一週間
3年間を土の中ですごすと考えて
羽ばたける期間は生涯の1/156しかないのだ。
人間の一緒に換算してみると
半年ほどといったところだろうか?
たったそれだけの期間だけれど
生涯を終えたときに思い出される
記憶の大半は
大空で過ごした輝かしい日々が占めるのだろう。
私は欲深い人間だから
半年しか空を飛べないなんて我慢できない。
まだ見ぬその空を飛ぶために
一生懸命足掻きたいと思う。
「なぁ、私が空を飛ぶときに
私たち、又一緒に居られるかな?」
私がそういうと、あの人は少し笑った。
私も少し笑った。
それでいい、今は答えなんて要らないんだ。
どんな空に出会えるかはきっと自分しだい。
ただ、その時に一緒に居られたら
私の空はもっと輝きを増すんだろうなと思うのだ。
※この会話はフィクションです
よって、あの人も実在はしません。
ちょっとロマンチックに仕上げてみました。
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