「クレイマー、クレイマー」【第2回 午後六時三十分の映画祭】 | Untitled

クレイマー、クレイマー(’79)

監督:ロバート・ベントン

 

 

広告代理店に勤めるテッド・クレイマー

(ダスティン・ホフマン)は仕事第一主義で

家事と育児を妻ジョアンナ(メリル・ストリープ)に

すべて押しつけていました。

ある日、テッドが帰宅すると、荷物をまとめた

ジョアンナが別れを切り出し家を出て行ってしまいました。

息子ビリー(ジャスティン・ヘンリー)とニ人残されたテッドは

慣れない家事に奮闘するのですが…。

 

仕事一筋で家庭を顧みなかった男が突然

スーパーに買い物に行ったり、

息子の送り迎えをしたりと試行錯誤します。

フレンチ・トーストを作るシーンはあまりに有名ですね。

次第に絆を深める父と子の姿を微笑ましく見守ることとなりますが

家を出た妻ジョアンナが現れ

息子を引き取りたいと言い出します。

 

原題でもある“Kramer vs. Kramer”は

同じ姓のクレイマー夫婦の争い

つまり、離婚訴訟を題材にした作品。

父と子のほのぼのとした光景と

法廷でのシビアな親権争いが対照的に描かれています。

相手方の粗を探して、徹底的に叩く光景は胸が痛くなります。

 

妻のジョアンナは「誰かの娘や妻ではない自分自身を見つけたい」

と女性として自立しようとして、家を出てしまいますが

“ウーマン・リブ”といった言葉が出てくるなど

女性権利を訴える当時の社会背景が垣間見えます。

 

夫婦の離婚での1番の犠牲者は、やはり子供。

息子のビリーは

 

「僕のことが嫌いだからママは出て行っちゃったの?」

 

そして、2回目のフレンチ・トーストを作るシーン。

会話することなく淡々と料理する光景だけで

母のいない父と子が築いてきた関係性を表した

素晴らしいシーンでした。