かもめの城(’65)
監督:ジョン・ギラーミン
海岸の崖の上の一軒家に父と家政婦と暮らす
情緒不安定な少女アグネス(パトリシア・ゴッジ)
学校も行かず、人との交流を嫌うアグネスは
父の古着で案山子を作り彼女の友人代わりの存在となります。
ある日、殺人犯として追われる青年
ジョセフ(ディーン・ストックウェル)が
案山子の服を着てアグネスらの元に逃げ込んできます。
一家はジョセフをかくまう事になったのでしたが
アグネスは案山子の生まれ変わりと信じこんでしまいます…。
戦争後遺症に苦しむ青年と父親に捨てられた少女との
無垢な交流を描いた「シベールの日曜日」
この映画で少女役を演じたパトリシア・ゴッジが少し大人になり
15歳になった彼女が愛した男性はよりによって案山子…。
人間以外を愛してしまったメンヘラ女子。
これは取り上げない訳にはいきません(笑)
案山子の服を着た青年に対し
「あなたは案山子。わたしの物よ」
最初は夢想癖の強いちょっとイタい女の子ぐらいに見てましたけど
自分でも“狂ってる”と吐露するほど精神のバランスが揺いでいます。
なぜ案山子を愛してしまうほど、彼女を孤独に追いやったのか…。
そこにはアグネスが幼いころにこの世を去った
母親の存在が見え隠れし
父親はアグネスが母親に似ていることを激しく嫌悪します。
父親に抑圧されて育った少女が
今度は自らが愛する人(案山子)を
抑圧するようになってしまう…。
家族の闇を感じつつも、かもめが飛び交う海岸を舞台に
詩情豊かに描いています。