読書する女(’88)
原作:レイモン・ジャンの同名の小説
監督:ミシェル・ドヴィル
「なぜ朗読の仕事を?」 「さあ・・・人と話すためかしら?」
「好きな言葉を誰かと共有できる・・・・」
本を朗読するという行為・・・・
それは相手の内面へと深く入り込む行為のようにも思われ・・・・
読書好きのコンスタンス(ミュウ・ミュウ)は、『読書する女』
という本に夢中。そして、いつしか本のなかの主人公
マリー(ミュウ・ミュウ=二役)に同化していく。
マリーは自分の美声を生かし、出張朗読を職業にしようと思い立つ。
新聞広告を出したマリーの許に依頼してきたのは
半身不随のまま思春期を迎えつつある青年。
自称100歳という将軍の未亡人(マリア・カザレス)
離婚歴のある中年社長、シングルマザーとその娘
立派な蔵書を持つ老判事・・・と、一癖も二癖もある人間ばかり。
ミュウ・ミュウのコケティッシュさ、衣装やインテリア、その配色が
本の挿し絵や装丁のようにも思われ、ベートーヴェンの
「ヴァルトシュタイン」「テンペスト」「春」などが軽快に流れる中
本の中に迷い込んだ世界を映し出しています。
早速の私も同じ曲、流しながら読書してます(単純やな~笑)
朗読されなかったものも含め登場する本は
モーパッサンの『手』、ボードレールの『悪の華』 『宝玉』、ゾラの『制作』
マルクスの『反デューリング論』、M・デュラスの『ラ・マン/ 愛人』
トルストイの『戦争と平和』、L・キャロルの『不思議の国のアリス』
ジョアシャン・デュ・ベレーの『哀惜詩集』の「金羊毛」
著者が誰なのか分からない『スカート』、『盲者と下肢麻痺者』という童話
そして、マルキ・ド・サドの『ソドム百二十日』 最後の本がね(笑)
“朗読者”の美声に、現実から逃避する者、過去にすがる者
性欲を満たそうとする者と・・・・際どい性描写を朗読したり(サドね)
ボカシの入ったシーンなんかもありますが
映画全体を包む物腰の柔らかさが私は好きですね。
中でも、『盲者と下肢麻痺者』という童話と
それにまつわるエピソードが1番印象に残っていまして・・・
いつもの半身不随の青年宅に盲目の友人も訪れて
ミュウ・ミュウに自分たちと同じ境遇の童話を読んでと頼むんです。
ミュウ・ミュウは一瞬、えっ・・・て感じになるんですけど
読んでみると、これが素晴らしい。ほんと誰なんだろう・・・作者
読み終えた後、盲目の青年が 「美しい・・・・」 と、つぶやくと
「僕には、より美しい、あなたが見えるから。」
と、半身不随の青年が美しい朗読者に語りかける。
すると、盲目の青年が
「僕には、もっと美しい。想像するに目はいらない。」
美しき朗読者は、かすかに微笑む・・・・・。
ねっ、いいでしょう~
ロマンチックに本を読むことは罪ですか?
レイモン・ジャンの同名の小説をミシェル・ドヴィルが映画化した作品。
癖のあるお客相手に本を読んで聞かせるヒロインをミュウ=ミュウが演じる、ちょっと変わった知的ライト・コメディ。
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