マザー、サン | Untitled

 

マザー、サン(’97)ドイツ国旗ロシア国旗

監督:アレクサンドル・ソクーロフ

 

 

 

登場人物は、母(マザー)と息子(サン)のみ。

 

そして、この世の果てかと思わせる風景。

 

時が静止したかのような、ピクチャレスク(絵画のように美しい)な映像。

 

 

どこの国とも知れない森の中の一軒家で

 

息子(アレクセイ・アナニシノフ)が母親(ガドラン・ゲイヤー)を

 

看病している。間もなく死を迎えることを察している二人は

 

互いを深く思い合いながら最後の時間を過ごそうとしている。

 

息子は母を抱きかかえ最後の散歩に出かけ

 

さまざまな風景のなかを二人で巡る・・・・・。

 

 

死期の近い母親を散歩に連れて、帰宅して母親の最期を看取る息子・・・

 

だけのお話なんです。上映時間も71分と中編にあたる長さ。

 

ただ、その71分は、映画を観る71分とも、絵画を観る71分ともつかぬ

 

今までにない、不思議な時間を体感することになる。

 

現実の時間の流れとは明らかに違う絵画的で静的な映像は

 

画に奥行きというものがあまり感じられずさらには歪んで見える。

 

これは、特殊なレンズを使って画を歪めているそうで

 

だから、遠近感がつかみにくくなり、映像とも絵画ともつかぬ

 

不思議な時を過ごすことになる。

 

さらには、画を脱色して色素を抑えた、くすんだカラー映像、もしくは

 

色彩を帯びたモノクロ映像といった、独特の世界観を生み出している。

 

確かに、昭和天皇を描いた 『太陽』 も薄い色彩だった印象が強かったし

 

『ファウスト』 も画が歪んで、終始、不安な感情を引きずっていた気がする。

 

絵画をかじっている方が観たら、どのように感じるのか聞いてみたい。

 

 

 

3Dなどでより立体的に見せたり、高画質で鮮やかな色彩を

 

見せようとする現代の映像技術とは、高速道路を逆走する

 

高齢ドライバーのように、明らかに逆行している(その例えどうなの、笑)

 

ただ、息子が小さくなってしまった母親を抱きかかえ歩く姿には

 

たまらない気持ちになってしまいますよね。

 

なんでも、この作品は<近親三部作>の第一作で(続編は「ファザー、サン」)

 

近親? そっち? いやでも、これは純粋に母と子の普遍的な愛と

 

捉えていいんじゃないでしょうか・・・・・?

 

 

 

ロシア映画界が誇る巨匠、アレクサンドル・ソクーロフ監督が手掛けた“近親三部作”の第1作。

森の中にある一軒家で暮らす母と息子。死期が近い母のために息子は彼女を背負い

最期の散歩に出掛ける。美しい風景と濃密な心の交流を描いた傑作。