影(’56)
監督:イエジー・カヴァレロヴィッチ
これは、ちょっと難しかった。 まず、ポーランド政治史の勉強が必要。
ポーランドで起こった異なる三つの時代の未解決事件を交錯させ
背後に存在する “影” を浮かび上がらせるという
練りに練りこんだ構成に、私の頭の中は練り物食品のようになり(笑)
1950年代、ポーランド。田舎道で車を走らせていた男女のカップルが
列車の最後尾から1人の男が飛び降りる現場を目撃する。
男は搬送先の病院で死亡が確認されたが、身分を確認する物がなかった。
名無しの男を検視した外科医のクニシン(ズィグムント・ケンストヴィッチ)は
この一件をきっかけに、クニシンは戦時中の未解決事件を思い出す……。
「現在(1950年代)」「第二次大戦期(1943年)」「大戦終結直後(1946年)」
外科医、公安省の高官、労働者の青年の三人が、それぞれの時代で経験した
不可解な事件を回想する形式で、過去と現在を行ったり来たりしていくのですが
行ったり来たりは、そんなに苦ではなかったのですが、厄介なのが政治色の強さ。
激動の時代のポーランドを舞台にしているので、昨日の敵は今日の友になったり
昨日の友は今日の敵になったり、誰がどっちで、どっちが誰なの~(笑)
“愛国的反共ゲリラグループ” って言われても、結局誰を愛しているやら?
ドイツに占領されたり、出てったと思ったら、ソ連にコントロールされてしまったり
ポーランド国民も、右寄りになったり、左寄りになったり、前のめりになったり(笑)
ただでさえ混乱したポーランドを練り物のように描いたことが
更なる難解さを生むことになり、ポーランド史の先生が観てもどうなんだろう?
三つの異なる時代で起こった “点” と “点” が、一本の線で結びつき
最後に “影” となる存在が明らかになるのですが
“点” が “点” のまま終幕してしまった、私の消化不良感といったら(笑)
“影” の後ろに、さらなる “影” が存在しているのではないかという
消化不良感のおかげで、そんな副産物的な楽しみ方は出来たのですが(笑)
三つの未解決事件の背後に存在する“影”……
革新的な叙述形式で描かれた政治的推理ドラマ。
影 [DVD]/ズィグムント・ケンストウィッチ,タデウシュ・ユラシュ,イグナーチ・マホフスキー
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