バモスの車検のため、夜、モータースまで走った。 スキーウェアかと思うくらいの装備だったが、限界に近い寒さだった。 皮のグローブなしではハンドルは持てそうにない。 後続車の目線では、おかしな人がおかしい車を乗っていると思っただろう。
モータースに着いたとき、ケータイが鳴った。 知人の奥さんから、ご主人がTOMのうちに来ていないかどうかの確認。 正直に「いない」と言ってしまったが、その時すでに事件はもう、起きていたのだった。
その後、また同じ問い合わせが入り、どうも奥さんの様子がおかしいので問いただしたところ、自宅付近で車を降りたご主人が、忽然(こつぜん)と消えたと言うのだ。 法事帰りでスラックスにワイシャツという超薄着姿。 所持金は2・3,000円。 他に何も所持品はない。
当時かなり泥酔していて車から降りたとたんに転倒して頭部を押さえていたが、「ほっといてくれ」と言ったのが最後。 自宅方向に歩いていった後姿。 その数分後に迎えにいったときには、もう消えていた。 それからすでに2時間近く経っている。
TOMも自転車で付近を見回り、さらに歩いた。 ラーメン屋などの店舗、神社、寺、お墓、田んぼや水路、橋の下。 この寒さでその服装ではいられないか、寒さが限界を超えているか? 立ちションするつもりが誤って水路に落ち、濡れてしまえばかなり危険だ。 明日朝から出勤なので、そう遠くへは行かないし、行けないはず。 奥さんによると、そういう判断ができそうにないくらい酔っていたらしい。 「引きずり」に遭ってどこかへ行ってしまったか? それならタクシー代もかからないし、車の下でゆっくり寝られる。 んなこと、言ってる場合じゃない。
捜索願は不明になってから4時間になる午後11時になったら出すことに決め、さらに歩いた。 しかし車を降りた場所が自宅まで500mもないような近距離では、時間の経過に比べ、近すぎて不自然。
そしてついに事件は大きな展開を見せた(だんだん大げさになってきた)。 午後10時57分、ご主人のお父さんから「来た」との一報が! 15kmもはなれた実家に4時間かかってたどり着いたらしい。 足取りは、もうどうでもいい。 捜索を終えてサーチライトを前かごに入れ、かじかんだ手で自転車に乗り今帰宅した。 12月の寒さと、ご家族の暖かさを十分堪能させていただけた。