かなりの築年数のアパートをお持ちの家に行ってきた。

チャイムを押すと犬の鳴き声が響き渡り、人の気配はない。

立ち去ろうとすると、中からガタガタっと音がして玄関の戸が開いた。

 

仙人みたいな、作務衣の上にちゃんちゃんこを着た

長髪白髪交じりの歯抜け爺さんが出てきた。

 

言葉は捲し立てるような、上から口調で…

「このアパートの件で来たのか?どうすることも出来ねぇぞ」

睨みながら言ってきた。

 

その言葉を聞いて

「そうなんですね、なんで?」と尋ねた。

 

答えを聞く前に

白いチワワちゃんが勢いよく家から飛び出してきたので

とっさに道路に出ないように玄関へ戻した。

 

仙人は「あんた、面白いね」と言ってきた。

 

よくわからなかったけど、玄関から見た家の中が凄いことになっていた。

右の部屋の扉が焦げてるし、玄関までゴミが散乱してるし、異臭も凄いし。

確かに、そこに留まっていられる自分が面白いと感じた。

 

仙人は、プルトニウムの話をし出した。

科学に詳しいのか、危険物が好きなのかは分からないけど…

かなりの危険人物。

 

そして、元米軍が、お金に困ってライフル銃を売りに来て

薬莢も300あるとか言っていた。

 

 

扉が焦げてるのは、そんな実験をしていたから?

不思議に思ったので聞いてみた。

 

「ちげえわ、タバコの火で燃えたんだ」

 

仙人は笑っていた。

 

「酒、持ってくるからな!」と言って奥に入っていった。

 

普通なら、異様さを感じて、居なくなった隙に

その場を立ち去るだろう。

 

でも、私は居たんだ。

 

 

ワインの瓶をラッパ飲みしながら

 

「で?アパート建て替えろっていうの?金なら3000万ある

でも、土地は死んだ母親の名義、妹と相続してないんだ

他にも宅地と山林がある、妹は金をくれっていうから

俺が土地をとって、土地を担保に計画もできなくはないよな」

 

酒で、気が大きくなってる…

こんな人、オーナーさんになって欲しくないわ…

見るからに危ない人だし、会社で拒否られるわw

 

でも…

母親がダンプカーに引かれてしまった衝撃とショックで

人生が狂ってしまったんだと勝手にその人の生い立ちや人生を

想像してしまっている…瞬時に出てくる癖を辞めたい。

 

 

話の6割は、嘘も交じってるからって仙人は笑っていた。

 

 

でも、面白いと思った。