とうとう我が家にもデジタルTVが来た。

 古かったテレビが、まるで新しいテレビになったかと思える
位に綺麗に映る。

 今まで、ケーブルテレビの恩恵を実感したことはなく、ろくに
見ないのにお金の無駄と、旦那に何度も言った覚えがある。

 なのにだ。
 そのおかげで工事も簡単で安く済み、何事もなかったかの
様な態度をとる私は、今度は旦那にイヤミを言われた。

 早速番組表をチェックして、念願だったアメリカのドラマの
放送時間を探した。

 1月分が並んだ細かい表から、目当ての番組を見付け、
印をつける。

 そしてここからが、ほかの家庭と違う肝心な所。

 私がするのはその番組表を旦那に渡すだけ。

 あとは仕事から帰ったらちゃんと録画されているビデオを
一人でゆっくり見る。

 見ている時に旦那が傍に来ようものなら、激しく追い払い
話掛けさせない。

 見る番組の趣味が違うし、困った事に旦那は落ち着きが
無い性格なので、仮に黙ってたとしてもたえず動いている。

 私をイライラさせる達人だ。

 旦那がいないと、デジタルTVは見られない。

 複雑なリモコンを操って、デジタルチューナーをセットし、
その後でビデオをセットする、そんなことはどう考えても
私には不可能なことだ。

 私は機械物は自動車しかわからない。

 それも少しだけ。

 携帯も今どきの小さなミュージックプレイヤーも、必要な
情報は旦那が全て入力してから渡してくれる。

 私の交遊関係から音楽、テレビにかかわらず、出掛ける
時は、その経路まで、考えれば旦那は網羅している。

 世の中のサラリーマン夫の比にあらず、私は旦那の掌の
上から出られない。

 4歳下の旦那の掌は、孫悟空のお釈迦様よりも大きい。