【報告】座標塾「ポスト3・11―望ましい社会をデザインする」
グローカル座標塾第8期第5回
「ポスト3・11――望ましい社会をデザインする」
2月10日、グローカル座標塾第8期第5回が開講された。
8期最後のテーマは「ポスト3・11――望ましい社会をデザインする」
講師の宮部彰さん(みどりの未来)は昨年、新聞グローカルの2、3月号に連載し3・11のためで未完で終わった「成長モデルから連帯モデルへ」を元に
311を受けて成長モデルから連帯モデルへの社会の転換について講演。
講演では
成長モデルとは
①経済成長が無限に続くことを前提に雇用所得・「豊かさ」の増大が保障・保証された
③企業は終身雇用・年功序列賃金
②家族(女性)によってケアサービスが維持され
④環境・資源制約は外部化し無視
⑤「おまかせ民主主義」で暮らしと安心が「保障」されていた
だが、成長モデルの破綻は明確になった。20年間はゼロ成長
金融投機は「金余り=投資先の不在」→経済危機も投機の対象となっている。
原発事故でエネルギー政策の破綻、科学技術の限界が再発見された。
原発事故は「誰も責任を取らない」という日本のおまかせ民主主義のだめさ加減を露呈した。
ナショナルだけでなく、地域も経済成長依存主義、補助金依存主義で分権的な自立志向がない。
民主党の「地域主権国家」は建前だった。
3.11は
経済成長主義を支えた都市と地方の格差というイビツな構造
弱者に厳しい社会で震災の犠牲は弱者に集中する
環境・資源の有限性を自覚する必要性
おまかせ民主主義からの脱却
以上の課題を改めて提起した
連帯モデルは「経済成長」でなく「人と人との連帯」で社会を再構築するモデルである。
①生活必需品(衣食・娯楽)のための所得保障は企業責任から、社会的連帯責任へ
②住宅は私的な「持ち家主義」から公的な家賃補助へ
③福祉サービス(介護・医療・教育・子育て)は社会的連帯による現物給付へ
④経済は自立・連帯・循環型経済で持続可能性を確保する
⑤公正な増税促進
⑥おまかせ民主主義は責任を引き受ける「参加民主主義」へ
いまの争点である消費税とTPPに関しては
消費税増税は利害の微調整に終わり、グランドデザインなき増税だ。
また、日本経済は、GDPの6割以上が外需であるドイツや韓国と違い、外需は3割
貿易自由化して外需を拡大しなければいけないというのは日本経済の実態を踏まえていない。
質疑応答では
「一国レベルでオルタナティブを考えてもしょうがない、国際的視点が必要だ」
「食べていけない人がたくさんいるのに、新たなインフラ輸出のために1兆円も税金を投入しようとしている」
「法人税引き上げで大企業の内部留保を吐き出せるべきだ」
「公務員は50歳定年制で1次産業に再就職させるべきだ」
「どうやって脱原発社会を実現するのか」
「みどりの未来が緑の党をつくるというが、周りの市民運動の人は誰も知らない」などの意見。
宮部さんは「今回は、まず一国レベルのビジョンを考えた。
社会を連帯モデルに変えるためには教育が重要。全国でこの座標塾のような社会ビジョン、デザインの議論が起きなければいけない。
日本の社会運動が教育的機能を高めていかないといけない」
「脱成長と言っても世間に受け入れらないのではないか」という意見に対して
白川真澄さんは「議論のきっかけを3・11が与えた。朝日の元旦社説が成長から成熟への転換を提唱したように成長神話は明らかに揺らいでいる」と指摘した。