【報告】座標塾第4回「3・11で社会はどう変わったのか」
1月13日、グローカル座標塾第4回「3・11で社会はどう変わったのか」を開講した。
講師は白川真澄さん。
白川さんは講演で
3・11を境にして日本社会はすっかり変わる。いや、根本から変わらなければならないと少なからぬ人が確信した。
しかし、これまで体制やパラダイムを固守し、社会の転換に抵抗する勢力や意識も強力。
原発延命勢力の抵抗で、望ましい社会への変化と転換はゆっくりしか進まず、ときには逆行している。
3・11大震災と津波による犠牲者は2万人。ストックの被害額は16兆9000億円。全壊10万4094棟という莫大なもの
そして、福島原発事故は日本国内で初めて「難民」を大量に生みだした。
パレスチナなどの出来事と思っていた難民が国内で生まれた。そして、地域に残る人と出ていく人の間に深い亀裂が入った。
原発事故で政府はSPEEDIなど情報を隠ぺいし生命よりもコストを優先。すべての情報をすみやかに公開し、最悪の事態を想定して住民・市民の協力を求めようとはしなかった。
4月統一地方選挙の時点では脱原発が大きな支持を集めるということにならなかった。
その後、事故の深刻さと放射能汚染の広がりが明らかになるにつれ、脱原発へ急速な意識転換が起こった。
政府と「専門家」の発信する情報に対する根本的な不信が芽生え、広がり、特に放射能汚染についての情報は自分たちで情報を集める動きが急速に広がった
原発事故は集権的な社会システムの脆弱性を思い知らせ、経済のあり方の転換の必要性を告げた。
脱原発をめざす集会・デモが全国的に高揚した。チェルノブイリ事故後、「ニューウェーブ」運動を上回っている。だが、既成政党の恐るべき鈍感さを揺さぶり、脱原発に向かわせるような政治的パワーとして現われることにはまだ成功していない。
そのような中で被災地における住民同士の助け合いと分かち合いが組織された。だが、避難所では間仕切りのない生活などジェンダー視点の欠落が現われた。
被災地では「漁船シェアリング」のような画期的な取り組み、福島の子どもを一時避難させる市民の活動も全国で組織された。
被災地の復興のために税負担の増大を受け入れてもよいという意識が多数を占めている。
「原子力ムラ」を筆頭とする巨大企業・官僚・政治家、御用学者、保守派マスメディアのブロックは、相変わらず経済成長神話・科学技術神話・日米同盟神話・自由貿易神話を信奉し流布。「原子力ムラ」はいまだ解体されず、巻き返しを図っている。脱原発へ向けての国会決議も立法化もまったく行なっていない。
二大政党制は完全な機能不全に陥り、「責任をとらない文化」がいぜんまかり通っている。
現在の政治への不信は政治に対する諦めと無関心を広げ、同時に、既成政党の政治ではない「新しい政治」への期待・願望や自覚を生みだしている。
「分かりやすさ」と「強いリーダーシップ」が、「新しい政治」のイメージとなりつつある。
これは、現在では橋下徹への高い支持現象を生みだしている。
直接民主主義である国民投票への支持は増えているが。同じ直接民主主義の手段であるデモの力への評価や参加意識は必ずしも高くない
ただ、デモの力を評価する人が4割を越え、参加に抵抗を感じない人が3割以上いるのは希望的に見てよいかもしれない。デモの規模が小さいことは日本の社会を変えるパワーの不足の重要な要因になっている。
3・11をきっかけにした社会を変えなければならないという意識と動きが確実に成長しつつある。
脱原発社会は、脱成長社会、直接民主主義を再生し自己決定する社会でなければならない。
質疑応答では、放射能汚染の現状、放射能問題、原発国民投票をどう思うかなど。イタリア国民投票制度の解説も。
福島原発事故責任に関しては、どうして犯罪として追及されないのか、東電などは少なくとも重過失致死傷罪に値するはずだなどの意見が出された。
次回第5回は2月10日(金)
「ポスト3.11――望ましい社会をデザインする」
講師・宮部彰