【報告】座標塾・ベーシック・インカムは救世主たりうるか
グローカル座標塾
ベーシック・インカムは救世主たりうるか
2011年1月20日、グローカル座標塾第Ⅶ期第4回「ベーシック・インカムは救世主たりうるか」が開かれた。講師は白川真澄さん(ピープルズ・プラン研究所)。
第4回では、座標塾ではこれまでも何度か取り上げている「ベーシック・インカム」について。
白川さんは講演で
「ベーシック・インカムの魅力は何か」として労働中心主義からの解放し多様なライフスタイルが可能となるなどの魅力を挙げた。
ベーシック・インカムへの疑問・懸念として
働くへの意欲を失わせるのか
財源は確保できるのか
雇用対策はないがしろにされないか
現金給付だけで現物給付拡充が軽視されないか
についてそれぞれ検討。
直ぐにベーシック・インカムが実現できない中、ベーシック・インカムに近づける入口として①子ども手当の拡充②給付付き税額控除導入③生活保護精度の改革の3点を挙げた。
最後に、ベーシック・インカムは一国の生存権保障の仕組みにとどまってしまうのか。
南北間の所得再分配の国際的な仕組みの形成が未解決の問題と、今後の思想的課題を指摘した。
講演を受けて質疑応答が行われ、活発な議論が行われた。
宮部彰さんは控除廃止見送りなど、菅政権が6月までにまとめるとしている税・社会保障制度見直しのでたらめさを指摘。
出席者の意見では、「ベーシック・インカムを主張することは資本主義の生産手段の変革の必要性を見えにくくするのでは」
「ベーシック・インカムでは、労働からの排除(失業)など社会的排除の問題を解決しない」
「ベーシック・インカム=現金給付だけでなく、現物給付が必要。雇用の問題は公的雇用保障を」
「世界でベーシック・インカムを実現するグローバルガバナンスがあるのか」
「地域で議論していても、ベーシック・インカムについては否定的な意見が多い」
「ベーシック・インカムが関心を集めているのは肥大化した福祉社会への批判」
「今の福祉システムではセックス調査までしている。ベーシック・インカムには監視社会から逃れるという意味がある」
宮部さんは、生活保護改善運動の必要性を批判。生活保護運動は同法改正案を提案しているという指摘には、もっと運動に関わっていない人に届くメッセージが必要だと指摘した。
白川さんは、いまの日本の貧弱な社会保障制度の改善のためには、現金給付と現物給付の両方が必要。日本では、「働かざる者食うべからず」というイデオロギーが強力だが、働けなくしている社会の問題を問わなければいけない。
議論の結果、ベーシック・インカム-社会保障問題は、税制と一体(「税・社会保障一体改革」?)の議論が必要だということで次回につながった。
グローカル座標塾第5回
増税は悪か――「公正な高負担・高福祉社会」
2011年2月17日(木) 白川真澄
会場 文京シビックセンター4階会議室A