【報告】座標塾・増税は悪か――「公正な高負担・高福祉社会」
グローカル座標塾第5回
「増税は悪か――「公正な高負担・高福祉社会」」
2月17日、グローカル座標塾の第5回「増税は悪か――「公正な高負担・高福祉社会」」を開いた。第7期も最後の回。
講師は白川真澄さん。白川さんは講演で
税は暴力装置=軍隊と並び国家による最大の権力行使。
日本の税の特徴として、日本は先進国の中でも国民負担率が低い。
とくに租税負担率が著しく低いことが特徴。
かつて70%あった所得税の最高税率は40%まで引き下げられるなど、様々な企業向けの租税特別措置など
財政赤字の原因には、税の取り方(法人税・所得税の大幅減税)にある。
しかし、貧困な日本の社会保障サービスの改善のためには社会保障費の増大が不可避。
社会保障費は、1980年25兆円、90年47兆円、2008年94兆円と増大。今後も高齢化で、さらに増大する。
しかも、日本の社会保障は若者・子供向けの著しく低く、この点も改善の必要がある。
だから、日本をまともな福祉社会にするには社会保障費増大は避けられない。
社会保障をまかなう方法として3つある。
① ムダ削減②社会保障費引上げ③増税
①はもっと無駄は削れると思う。しかし、軍事費は4.8兆円、公共事業費5.7兆円
全額を削っても社会保障増加を補いきれない。
②は、介護保険でも月4000円台になってきており、引上げは限界。
だから、増税が避けられない。
だが、日本では税制改革となると消費税増税しかないとされる。菅政権のように、消費税ありきであってはならない。
税制の公正がいかに確保するかが問われる。日本の税・社会保障制度は世代間不公正が大きい。
ところが、菅政権は税の公平性確保に逆行する法人税5%引き下げを決定した。
どこから増税を実現すべきか。
まず、法人税率の引き下げではなく引上げ
所得税の改革(最高税率の引上げと所得控除を止め税額控除に)、資産課税の抜本的強化、相続税増税、証券優遇税制を改め総合課税に。
その上で必要ならば、消費税。だが、消費税には低所得者の税負担が重くなる逆進性がある。
逆進性を解消するためには
食糧などの税率をゼロに(低く)する「軽率減税」導入
低所得者には給付金を支給する「給付付き税額控除」導入が必要。そのためには社会保障番号制度が必要だが、住基番号の使用はプライバシー保護の点から大きな問題があり。住基ネットとは別に整備すべき。
質疑応答では出席者から
「全員の所得を把握することは不可能なので、所得税は廃止して、逆進性対策として給付付き税額控除・ベーシックインカムを導入すべきだ。より消費する人に課税する方が公正だ」
「そもそも、徴税する政府・政治家への信頼がない」
「現在は税・社会保障は高度成長モデル。社会の変化に全く対応できていない」
「現在の税制・社会保障制度に大鉈を振るう必要がある」
「日本の消費税額16兆円だが、そのうち6兆円はトヨタなどの輸出企業に還付されている」「輸出企業は下請けや取引先に返さないで、自分たちでため込んでいるのだから、消費税法を改正して還付しないことにするべき」
「現在の脱税節税は国際的。国際的課税が必要だ」
「今の年金制度では、60代より80代以上が受給額が多い」
「80代以上で共済年金や企業年金を受けている人の受給額を削って、若い世代に支給する必要がある」
「日本の税と年金の仕組みが複雑すぎる。北欧のようにシンプルな制度すべきだ」
「今のシステムは世帯単位。日本でもハウスシェアリングなど非血統的世帯が増えている」
「日本にしかない源泉徴収制度が、健全な納税者意識を妨げている。サラリーマンも個人で申告すべきだ」など
白川さんに最後に「弱い部分にしわ寄せがいく現在のシステムを変革すべき」と「公正な高負担高福祉社会」のテーマをグローカル座標塾で引き続き取り上げていくとした。