【報告】雇用・生活・生存を支える仕組み―民主党政権下で問い直す | 格差と戦争にNO!

【報告】雇用・生活・生存を支える仕組み―民主党政権下で問い直す

2010年1月15日

グローカル座標塾第Ⅵ期第2回
雇用・生活・生存を支える仕組み――民主党政権下で問い直す


2010年1月15日 グローカル座標塾第Ⅵ期第2回「雇用・生活・生存を支える仕組み――民主党政権下で問い直す」を開講した。講師は白川真澄さん。

第2回講座では前回第1回講座での経済危機の後半で触れた民主党政権の社会保障に関する政策を取り上げた。

前半は、最初に現在の生存権をめぐる状況と鳩山政権の雇用・貧困対策について講演。貧困率発表で、日本が貧困大国であることが政府の出した数値でも明らかになった。
だが、鳩山政権は貧困率の削減目標をまだ出していない。「コンクリートから人へ」を掲げて公共事業を削減した。だが、社会保障制度を立て直すためには、それでは足りず、もっと税金を取る必要がある。だが、大企業優遇の租税特別措置をほとんど廃止しないなど、その点には踏み込んでいない。


年末に出した「新成長戦略」は名目3%成長を打ち出した。成長しなければ雇用も増えないとしており、バブル期のイメージそのままだ。
雇用・生活・生存保障の費用は社会全体で負担するしかない。だが、民主党政権はその答えを出せていない。成長主義にとらわれている。
「新成長戦略」は麻生政権までの持ち家政策を踏襲するなど、近年問題になっている「住まいの権利」の観点がない。


日本の生活・生存の保障の仕組みは終身雇用・年功序列に依拠した企業福祉を前提に作られてきたが、それでは社会の変化に対応できない。
例えば、教育でも私が入学した60年代前半の国立大学学費は9000円だった(それでも1万2千円への値上げに反対してストライキをした)。
今は年60~80万円が普通で、貧困層は大学へいけない。

米国もそうだが、景気が回復しても雇用が回復しない「雇用なき成長」が現在の経済の特徴だ。

このように、従来の生活・生存を支える仕組みが行き詰る中で、すべての人に生存のために必要なお金を給付する「ベーシック・インカム」が提案されている。似たような問題意識では広井良典が人生前半の社会保障として、若者への年金給付を提唱している。


ベーシック・インカムに対しては「勤労意欲を失わせる」という批判がある。

ところがフリードマンをはじめとする新自由主義者にベーシック・インカムの賛同者が多い。新自由主義者のベーシック・インカム論は、例えば月額五万円くらいにして、他の手当・控除は廃止し、働かざるを得なくしようというもの。

「新成長戦略」をはじめ、「成長なしに社会保障なし」という考え方が強いが、日本のGDPは90年代初めから500兆円前後でほとんど変わっていない。
富の不公平な分配が問題。富を増やさなければいけないという信仰=経済成長神話から自由になるべき。


ベーシック・インカムを導入しても、働く人と働かない人は固定的ではない。
もちろん、課題としてベーシック・インカムも万能ではない。現物=サービスの支給、給付付き税額控除の導入なども必要だ。


講演を受けて討論が行われて、ベーシック・インカムに議論が集中し、様々な質問・意見が出された。
月5万円では生活できないという質問に、白川さんは「月5万というのは新自由主義者の主張の一例で、小沢修司さんの試算では現在の財政規模でも月8万は可能。私は10万、15万円は必要だと考えている」


財源についても、租税特別措置見直し、累進強化、環境税導入、軍事費削減などを行った上で、消費税増税をすべきだと議論が行われた。


また、ベーシック・インカム学習会での意見として、導入されたら年収六百から七百万円の人は導入されたら損をする、、物価が安い地方に住む人などにも同額を出すのか「平等は不平等だ」、ゼロ成長はいいがマイマス成長になったらどうするのか、という議論が紹介された。


それに対して、第3回講師の宮部さんから、企業の海外移転に対しては国家連合によるグローバルな規制しかない。企業の海外移転には移転税をかけろという主張をきちんと出すべき。現在の「常識」のパラダイム転換が必要。

国境を越える生存権保障は可能か、国境を越えた所得再分配をどう実現するのか、グローバルタックスについてなど様々な意見が出された。


格差と戦争にNO!

次回=第3回は「正義=公共性の再構築」
2月12日(金)午後6時半~9時。講師は宮部彰さん
会場は文京シビックセンター。要申し込み