【報告】「国際連帯税」東京シンポ | 格差と戦争にNO!

【報告】「国際連帯税」東京シンポ

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 「百年に一度」の世界金融危機の最中で、「国際連帯税」の視点から「公正なグローバル経済」実現のための資金メカニズムの可能性を探るシンポジウムが十一月二三日、東京で開かれ、約百五十人が参加した。スーツ姿の人が目立ち、日頃の市民運動の集会との客層の違いをうかがわせた。

 基調講演した寺島実郎氏(日本総研会長)はまず「時代を読む資質は数字に対する感受性だ」として、米国の「対テロ戦争」による死者数を例示しながら「我々は血みどろの世界と併走したのだ」と強調した。そのうえで、八〇年代にウォールストリートで「ジャンク・ボンドの帝王」と呼ばれたマイケル・ミルケンと、九〇年代に「ヘッジファンドの帝王」と呼ばれたジョージ・ソロスの名を挙げ、両者とも今振り返るとまだまともだったと指摘。冷戦崩壊による軍民転換で理工系卒が金融に流れた。「IT(情報通信)とFT(金融技術)の結婚」が図られて生まれた「濡れ手に粟」の悪知恵資本主義のなれの果てがサブプライムローンだと厳しく批判した。「今、各国が行っている金融緩和は新しい爆弾回しゲームに過ぎず、過剰流動性は縮まっていない。タックスヘイブンを使って責任回避するやり方にくさびを打つべきだ。『技術的に困難』という国際連帯税への反論を超えなければならない。欧州の発想と知恵に学ぶべきだ」。
 後半は上村雄彦さん(千葉大)を司会に、金子文夫(横浜市大)、稲場雅紀(アフリカ日本協議会)、植田和弘(京都大)、犬塚直史(参院議員)の各氏による問題提起と外務省、環境省の担当者からのコメントを受けてのパネル・ディスカッション。金子さんは「タックスヘイブンに斬り込むチャンス」と指摘。稲場さんは「巨大な命の格差の中、軍事費や金融機関に投入される公的資金額のごくわずかで国際保健に必要な資金が賄える」と強調した。

 植田さんはスティグリッツと宇沢弘文による地球環境税構想をそれぞれ紹介したうえで、課税権と税収の使途の決定権に関してグローバル民主主義論が不可欠とした。
 犬塚さんは国際連帯税創設議連の活動を紹介しつつ、反対者には「気合い」で反論すべきと力説した。今後、国際連帯税推進市民委員会(仮)が設立される予定だ。
 ちなみに、「宇宙戦略本部」諮問機関の座長も務める寺島氏に、会場から「宇宙の軍事利用への加担をやめるべき」との声が挙がったが、寺島氏は「攻撃されたら強い国づくりは重要」として、早期警戒衛星などの開発を正当化した。  (S)