【報告】講演会「スーダン紛争と自衛隊」
講演会「スーダン紛争と自衛隊」
9月19日、講演会「スーダン紛争と自衛隊」が行われた。.講師は、「世界」9月号にスーダン派兵について書いている栗田禎子さん(千葉大文学部教授、スーダン近現代史研究者)。
最初に主催者の国連・憲法問題研究会事務局から自衛隊の派兵の歴史について報告。
続いて、栗田さんがスーダン紛争について講演。
講演では、最初に英帝国主義と仏帝国主義と衝突点だったスーダンの歴史について、次にスーダンの21世紀に置ける政治経済的重要性について。
栗田さんは「『南北内戦』の時はスーダンの紛争に関心を持たなかったEU・米がなぜダルフール紛争に介入しているのか。これは石油開発が進むなど、21世紀におけるスーダンの戦略的重要性を増しているためだ。
スーダンの紛争は南部・ダルフールの民族・宗教紛争として報道されるが、実際は植民地時代に作られた北部の首都圏に富が集中する権力構造、国内の不均等発展があり、それに対する国民的抵抗運動の歴史がある。長年、北部のスーダン左翼や各地方の運動体を結集した「新しいスーダン」をめざす運動が続いてきた。
それに対してスーダンブルジョワジーは宗教(イスラム)を政治利用して民主化運動を弾圧。政治弾圧をジハードと正当化してきた。
9・11以後、かつてはアルカイダに基地を提供し、ビンラディンを匿っていたイスラム原理主義政権はその情報を米国に提供。CIA・FBIの支局を認め、親米路線に乗り替えた。
そして、南部で解放戦争を続けてきたスーダン人民解放運動がスーダン全体の変革を事実上断念して結ばれたのが05年和平。この和平が南部への資源権益分配、将来南部が独立することも約束したことが、03年からの西部ダルフールでの武力紛争を招いた。
南部での和平を受け入れた政権がダルフール地域でジェノサイドをしているのは、南北和平で来年総選挙実施を決まったため。反政府支持が強いダルフール住民を虐殺・難民化して投票させないようにしようという力が逆に働いている。
自衛隊PKO派兵について言うと、互いに不信をもち外国を利用しようとしている南北当事者は必ずしも反対ではなく、難しい問題がある」
質疑では、国際刑事裁判所が戦争犯罪でバシール大統領の逮捕状請求をしたことについて質問。
栗田さんの答えは両面作戦が必要で、和平履行のためにとアラブ連盟・アフリカ連合は訴追に反対し大統領を擁護する。人権団体などはもっと訴追支持の運動をする。そうすることによって大統領・副大統領の政治力が衰え、将来の戦争犯罪追及につながるだろうと。また、アフリカ進出している中国への評価については、スーダン左翼でも資本主義なのかどうか議論になっているとか。