【報告】教科書検定意見撤回を求める集会 | 格差と戦争にNO!

【報告】教科書検定意見撤回を求める集会

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教科書検定意見撤回を求める集会




122日、教科書検定意見撤回を求める集会~「日本軍の強制」文科省はなぜ認めない!が東京で開かれた。主催は大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会など三団体が共催。百五十人が集まった。

 集会では、石山久男さん(歴史教育者協議会委員長)が経過報告を行った。

 「結果を全国紙は『軍関与認める』報じた。沖縄の新聞は『「軍強制」認めず』と報じた。文科省は検定意見撤回も軍強制も認めなかった。

 9月県民大会後の文科省申し入れで、対応した野々村審議官は検定規則にないから撤回はできないという態度に変わった。だが、124日の申し入れでは検定意見は学問的に正しいという前の姿勢に戻った。

 同じ4日、検定調査官が教科書会社役員を呼んで『沖縄戦及び集団自決に関する日本史小委員会としての基本的とらえ方』(指針)を示した。この結果、五社七点が書き換えさせられた。学習指導要領、さらには『基本的とらえ方』を越えて、細かい指示を出して書かせることは許せない。検定審議会メンバーもそこまで細かくは決めていないと証言している。政府・文科省の独断だ」

 坂本昇さん(教科書執筆者)は、「検定意見は撤回されなかった。四十点、五十点の結果。

 検定の密室性はほとんど変わらなかった。識者の意見は部分的恣意的に援用された。それを利用して『集団自決の様々な要因』を『書かせる検定』となり、内容が歪められた。

 124日に『指針』が教科書会社役員に示されてから、調査官と教科書会社の間で四回訂正が行われた。調査官主導で軍命令を認めない『書かされる検定』になり、忸怩たる結果になった。

 執筆者として記者会見して右翼から脅迫が来たが、沖縄から沖縄戦の資料がたくさん届いた。この思いに応え、検定撤回に向けての更なる運動を」

 著書『沖縄戦と民衆』が文科省に悪用され、今回検定審議会へ意見書を提出した林博史さん(関東学院大学教授)が発言。

 「9人が意見書を求められたが、内容を公表したのは私だけ。9人には文科省寄りというだけで沖縄戦研究とは無関係なメンバーもいる。両論を出させ、だから分からないと言わせるのが狙い。

 『集団自決』の原因は皇民化教育といわれるが、軍がいなかった島では起きていない。日本軍の役割は決定的。文科省は『様々な要因で集団自決』が起きたとしながら、重要なポイントとして欠かせない強制だけは受け入れようとしない

 毎日新聞は防衛研の沖縄戦資料に軍強制はなかったという見解が七〇年代から書かれていたことをスクープした。検定はこの防衛庁・省の認識を実行に移したもの。

 この問題で沖縄の人々の感情を理解しようといわれるが、とんでもない話。加害者である兵士は全都道府県から集っている。

 『自ら命をささげた』とされる特攻隊員も多くは命令だった。455月に知覧基地で軍が行った特攻隊員の意識調査で、本心を答えられる状況ではないのに、3分の1は希望せず特攻隊員となったと軍も認めざるを得なかった。『集団自決』と特攻隊員は同じだ。

 日本軍の戦死者230万人の半分以上は餓死だった。捕虜になるなという思想が百数十万の日本青年の生命を奪った。捕虜になるのはダメな兵隊だと欧米系捕虜は虐待され、中国兵の多くは殺すか労働力にされた。南京大虐殺も捕虜虐殺が多い。強いられた死を沖縄だけの問題と考えること自体が意識誘導。

 沖縄戦の司令官たちは中国やシンガポールで虐殺をしている。まさに日本の戦争が問われている。仮に沖縄が黙っても、我々は黙らないでなければいけない。軍強制削除を覆すまでがんばろう」

 俵義文さん(教科書ネット)は「日本軍の強制」を認めない背景に政治家の圧力があることを指摘。「1227日沖縄タイムス記事(共同通信配信)は検定が安倍政権への配慮であることを報じている。

 つくる会、教科書改善の会、日本会議が作る『政治介入に反対する会』は『訂正申請を拒否しろ』と、私たちの数倍の要請を文科省に行った。そして、平沼赳夫(日本会議議連会長)をはじめとする極右政治家が文科省に働きかけた。文科省が『規則にないから撤回できない』から『検定意見は正しい』に戻った背景には極右政治家の圧力・バックアップがある。

 何としても検定意見を撤回させる必要がある。次は、住民虐殺、壕追い出しを『日本軍はやっていない』という検定をやってくる。既につくる会はそのように主張している」

 学校現場から平井美津子さん(大阪・中学校教員)が発言。沖縄への修学旅行と平和学習を行った生徒が高校一年になり、この問題にどのような意見を持っているかを紹介した。

 1221日に結審し328日判決を控えている「大江・岩波沖縄戦裁判」について小牧薫さん(大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会)が報告。

 「原告の梅澤裕と赤松秀一の本人尋問が行われたが、『沖縄ノート』を読んだのは提訴一年後、『兄のことが書いてある箇所をバラパラ読んで』とそれぞれ証言した。それでなぜ名誉毀損なのか。

 最初、助役が自決を命令したと言っていた原告側は、最後は愛情による無理心中と二転三転した」と報告。署名運動への協力を呼びかけた。

 行動提起では、「執筆者は毎年でも訂正申請するつもり」と、裁判支援と検定意見撤回への世論を創り出していくことが呼びかけられた。