――主任は、どうして刑事になろうと思ったんですか?――
――機会があったら、今度ゆっくり話す――
 
 
リメイク作品の宿命ですが、前作と比較されての辛辣な意見がやはり散見。携わったスタッフ全員に言えることですが、主役二人は針の筵で死んでしまうのではないか。他人事ながら心配してしまいます。
姫川に関しては若すぎるという意見が結構ありましたが、だからこそ原作での子供っぽい姫川を演じてくれることを期待。
姫川は格好いい女性であると同時に、イタズラっ子っぽく舌を出したり右手を痛めてベソかいたりする可愛い女性なんや。
 
 
姫川玲子はノンキャリアでありながら異例の若さで警部補へと昇進した、天性のプロファイリングセンスを持つやり手の刑事。
舞台は東京。物語はため池のある公園の植え込みから死体が見つかったことから始まります。
遺体は全身傷だらけ。無数のガラス片が突き刺さっており、腹部には一際目立つ大きな裂き傷。
捜査本部が立ち上がる中、彼女はそれとは別の変死体の情報を入手しました。
それは、3週間前に深沢という男がネグレリアフォーレリという寄生アメーバに感染したことにより死亡していたというもの。
 
余談ですがネグレリアフォーレリの存在については昔、特命リサーチ200xという番組で知りました。恐ろしい寄生アメーバ。脳をグズグズに溶かして食べてしまうのだそうです。因みに日本では記録上、実際に1名がこいつにより命を奪われています。閑話休題。
 
それだけではなんの関係もないように思える二人の死。しかし姫川は小さな違和感と些細な疑問から、腹部に付けられた傷はため池に沈めた後に腐敗ガスで浮いてこないように付けられたものではないか。
それにも関わらず死体がため池に沈めらずに植え込みに放置れていたのは、死体を運ぶ人物と沈める人物は別であり、沈める役割の人物が何らかの理由により来られなかったからではないか。
そしてその人物こそが深沢だったのではないかと考えました。
もしそれが正しければ、深沢が寄生アメーバに感染したのは死体をため池に沈めた時である可能性が高い。
別の死体が既にため池に沈んでいる。姫川は管理官にそう進言するのでした。
 
筋は通る。説明されれば納得もできる。そして現実に、そこのため池から一体。埼玉からは腐敗の進んだ同じような死体が九体も発見されるのですから、姫川の読みの鋭さは流石としか言いようがありません。
しかし、だからこそ同僚の勝俣は姫川を危険視します。犯人の思考をトレースし、シンクロさせてしまう。姫川は犯罪者に同調してしまっていると。
 
「俺は何があっても主任に着いていきます。」
 
大塚は姫川の一番弟子と自負する、姫川にとって初めてできた自分より後にやってきた純粋な部下。それはもう可愛くて可愛くて仕方のない弟分です。乱暴に大塚の頭を撫でる姫川がお姉ちゃん過ぎて好き。
大塚も姫川のことを心から慕っていて、弟分というかまるでワンコ。可愛すぎかよ。
 
大塚は捜査を進めていくうち、ストロベリーナイトというアングラサイトの存在に辿り着き、独自に調べていきます。
それはインターネットで参加者を集め、その中から無作為に選んだ一人を生贄にするという残虐な殺人ショー。
それだけならただの眉唾でしかありませんが、それが行われているとされる日を境に失踪した人物たちがため池から死体となって出てきているとなれば話は別。無関係なはずがありません。
 
この凶悪な事件を早く解決させたい。初めて掴んだ大きなネタをものにしたい。そして何より、主任に認めて貰いたい。
そんな想いで彼は違法捜査に手を染めます。突いた薮から大蛇が出るとも知らずに……。
 
いつまで経っても戻ってこない大塚を心配する姫川たち。しかし無情にも彼女たちの元へ届いたものは、大塚が殉職したという報せ。
報告を受ける姫川の表情にひどく胸が詰まります。周りの制止を振り切って大塚の元へ行こうとする姫川。辛すぎて正視に耐えない……。
刑事になった理由を今度ゆっくり話すって……約束したいじゃないか……。何があっても着いていくって言いながら、二階級特進して並んでんじゃねぇよバカ……。
 
報告によると大塚は、信じられないことに頭部を撃ち抜かれながら3メートルも這って動き、通行人に発見される場所まで移動していたとのこと。
もし大塚が這って移動していなければ、発見は大きく遅れていた。もうなにも言えない……。すげぇよ……。大塚……。
 
事件を調べていくうちに姫川は、何故死体遺棄現場が埼玉から東京へと変わったのかが気になり始めます。
そして3ヶ月前に埼玉からここ東京へと異動となった同僚がいたこと。その同僚・北見は、大塚とツーマンセルで捜査にあたっていたことを結びつけ、彼を問いただすのでした。
 
「ったく。アンタって人はホント……油断ならねぇな。」
 
豹変する北見。彼は言います。ストロベリーナイトをやっているのは、目の前の『死』を実感することで『生』を実感できるからなのだと。ふむふむなるほど。
メメント・モリは他所でやれクソ野郎……。
姫川玲子シリーズに登場する犯人で一際不愉快なのがこいつ。さっさとくたばれと思う。
 
それとは逆に、ストロベリーナイトで生贄を直接殺していたFは生い立ちのせいでなんとも言えない。
自分は汚物なのだと、自己肯定感が低すぎて辛い。
自分は人間なんだ。赤い血の通った人間なんだ。それを確認したくて人を殺す。人が血を流す。自分と同じ血を流す。それでしか自分が人間だと感じられない。
自身の女性性が嫌いで、胸や臀部を切り取っていたというくだりには目を背けたくなります。
 
 
次回はソウルケイジという事なので、竹内版と話を被らせないというわけではないもよう。それなら『過ぎた正義』と『右では殴らない』はやってほしいです。姫川玲子シリーズはどれも好きだけれど、この2作が特に好き。
 
過ぎた正義は倉田の独善思考が好き。殺人を犯した息子に“罰を与える決心を鈍らせない為に”反省の見られない重犯罪者を殺して廻る。
意味は分かるし理解もできるが、それを実行するのはイカれているとしか言いようがないし、その思考回路がそもそもイカれている。
そしてそれを倉田の行動を追うだけで言い当てる姫川。勝俣の言うように犯罪者の思想にシンクロしすぎて危険だ。
 
右では殴らないはなんといってもタイトルセンスが好き。最後の最後にタイトルの意味が分かる作品好き。アルジャーノンに花束をなんて、タイトルの意味が分かったとき鳥肌が立ちました。
そして右手を痛めて半べそかく姫川が凄く可愛い。
 
菊田に関しては、原作と違いこの回から姫川の下に配属されたようので、今後の二人の恋の行方がどうなるのか。気になるところです。