教育とテクノロジーの融合は常に進化し続けていますが、最近のAI、特にChatGPTのような大規模言語モデルの発展は、教育分野に革命的な変化をもたらしています。私自身の経験から、AIを活用した教育実践について共有したいと思います。

AIが教室の外でも学びのパートナーに

最近では車の運転中でさえ、AIとの対話が可能になっています。私はよく車内でスマートフォンのChatGPTと会話をしています。これは単なる暇つぶしではなく、特に英会話の練習に非常に効果的です。
「どんなに下手な英語でも返してくれるし、ゆっくり話してくれるので、とても良い英会話の練習になります。」

現状ではChatGPTの日本語音声応答は完璧ではなく、事実誤認や奇妙な主張をすることがあります。時には「それは違うだろう」と言い争いになることも珍しくありません。しかし、4.0以降のモデルでは、より自然で正確な会話体験が期待できるでしょう。

教材作成の民主化:一人ひとりに合わせた学習リソース

AIの真価は、個別化された教材作成能力にあります。特にChatGPTのProのような上位モデルを使うと、驚くほど高品質な教材を短時間で生成できます。

オーダーメイド教材の例

  • 英文法学習教材: カラフルでわかりやすい解説と、生徒のレベルに合わせた練習問題
  • 歴史の小説風解説: 応仁の乱や戦後史などを物語形式で説明し、興味を引く
  • AIリテラシー教科書: 情報科学の基礎からAIの活用法まで、2万字超の包括的な教材

「これを一発で作ってくれるというのはやっぱりすごいなというのと、その人が何を望んでいるかとかそういうことによって、参考書・問題集・教科書がカスタマイズできるんです。」
特筆すべきは、これらの教材がわずか5〜10分程度で生成できることです。従来なら何週間もかかる教材作成が、適切なプロンプトを用意するだけで実現します。

個別最適化学習の可能性

市販の参考書や教科書では、多くの学生に対応するために内容が一般化されています。しかし、AIを活用すれば、生徒一人ひとりの興味や苦手分野に特化した教材を作れます。

例えば、歴史が苦手な生徒には「タイムトラベル形式の小説」を提供することで、教科書を読むよりも自然に知識を吸収できるようになります。

「その生徒専用の小説を書くようにしています。教科書を読んでと言ってもなかなか読まないし、読んでも面白くない。タイムトラベルものにして高校生でも読みやすいような小説にしてもらっています。」
これらの教材はPDFで配布したり、ノートプラットフォームで共有したり、さらにはKindleで公開するといった形で活用できます。

オンライン教育の限界と人間の役割

AIの素晴らしい可能性に触れる一方で、オンライン教育にはまだ課題もあります。私の経験では、完全オンラインの指導では生徒の学習状況を正確に把握することが難しい場合があります。

「オンラインだけだと、過去問をやってもらって本人は『5、6割は取れている』と言っていても、実際にどうやって取り組んでいるか見きれなかった」

特に、制限時間を守っているか、参考書を見ながら解いていないかなど、学習プロセスを確認することが困難です。結果として、予想外の不合格につながるケースもありました。

これは、AIツールがいくら優れていても、教育における人間の監督や指導の重要性を示しています。テクノロジーは教育を補完するものであり、完全に置き換えるものではないのです。

教育パラダイムの変化:情報科とアクティブラーニング

現在の教育環境は大きく変わりつつあります。特に注目すべきは、高校での「情報」科目の必修化とアクティブラーニング型授業の拡大です。

「今年の高校3年生から情報という授業をきちんと受けているんですけど、その上の世代は情報というのを受けていないんです」

デジタルネイティブと言われる若い世代でも、コンピュータの基礎的な仕組み(「足し算しかできない」コンピュータがどのように複雑な処理を実現するかなど)を理解していないことが多い。これらの基礎知識がAIを効果的に活用するための土台となります。

また、大学入試も変化しています。共通テストでは、単なる暗記を問う問題から思考力を問う問題へと移行しています。

この変化は、AIが簡単に検索できる知識よりも、思考プロセスや概念の理解を重視する教育へのシフトを示しています。

未来の展望:AIと教育の共進化

AIを活用した教育は、まだ始まったばかりです。今後、さらに多くの可能性が開かれるでしょう。

  • 教材のマルチメディア化: 現在はテキスト主体ですが、将来的には映像や漫画形式の教材も自動生成される可能性があります
  • 社会人向けAI教育: 情報リテラシーやAI活用法を大人にも教える需要が高まっています
  • コミュニケーションツールとしてのAI: 英会話練習だけでなく、様々な分野の会話相手としてのAI活用が進むでしょう

「AIによって教育の仕方は変わるだろうなというのは感じます。若い人の学校教育も、社会人の仕事の仕方も変わるでしょう」

一方で課題も残っています。AI生成コンテンツの著作権問題、誤情報の可能性、そして何よりも学習者自身のモチベーション管理です。テクノロジーが進化しても、学ぶ意欲を持続させることの重要性は変わりません。

おわりに

AIは教育に革命をもたらしつつありますが、それは人間の教師を不要にするものではなく、むしろ教師の役割を変化させるものです。個別化された教材作成や学習サポートにAIを活用しながら、教師はより高次の指導やモチベーション管理に集中できるようになるでしょう。

教育とAIの共進化はまだ始まったばかりです。この変革の波に乗りながら、一人ひとりの学びがより豊かになる未来を築いていきたいと思います。


※本文中で紹介しているAI生成教材の例や英会話練習の方法は、実際に筆者が試した体験に基づいています。AIツールの活用にあたっては、常に批判的思考を持ち、情報の正確性を確認することをお勧めします。


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