歴史総合小説250214

【第1章:タイムトラベルは突然に】
「え、ちょ、ちょっと待ってよ!」  カナは目を丸くして叫んだ。いつもの放課後、歴史マニアの友人・ヒカリに誘われて放課後の資料室にやってきたのはいいが、まさかこんなことになるとは思っていなかった。 「カナ、落ち着いて! これ、ほんの少しだけ試してみたかった儀式なの。『戦国時代にトリップできる』って、昔の書物に書いてあったんだよ」  ヒカリが持つ古びた巻物には、確かに見たこともないような不思議な文字が並んでいた。そして、謎の呪文を唱えると――目の前が急に歪んで光に包まれたのだ。 「戦国時代に行くなら甲冑とか刀とか見たいなぁ……」  しかし、カナが次に目を開いた時、そこにあった光景はまったく違った。飛行機の残骸やボロボロの建物、荒廃した街並みが広がっている。 「……戦国、じゃない!」  服装も人々の雰囲気も、戦国どころか近代に近い。周りの人たちが疲れ切った表情で歩いている様子に、カナは思わず息をのんだ。焼け焦げた建物や通りにあふれるがれき。とにかく騒然とした空気が漂っている。
「ここ、いったい……いつの日本なの?」  途方に暮れるカナの前に、一人の青年が近づいてくる。軍服のようなものを着ているが、その帽子には日の丸はなく、星のマークがついているようだ。 「You OK?」  妙なイントネーションの英語だ。カナは英語にそこまで強くはないが、聞き取れるくらいには理解している。 「え、えっと……はい、大丈夫……?」  青年はにこりと笑い、ジェスチャーで「安全なところに行きなさい」とでも言うように促している。見れば周りには、外国人らしき兵士の姿がいたるところにいた。
「ここ……終戦直後の日本、かも?」  ヒカリは驚きつつも、興奮気味にあたりを見回した。 「ちょ、ちょっと待ってよ! そんなバカな――でもこの雰囲気、1945年ぐらい……太平洋戦争の終わったすぐ後っぽい!」  カナは唖然としながらも、歴史に詳しいヒカリの推測を信じるしかない。気づけば、あの青年はどこかへ行ってしまい、代わりに周囲からは軍用車両や軍服を着た外国人がちらほら。どうやら、本当に「戦国」ではなく「戦後」に来てしまったようだ。

 
【第2章:GHQとの遭遇】
どこに行けばいいのかもわからない。カナとヒカリはとにかく人の流れに沿って歩き始めた。焼け野原のなか、人々はバラックと呼ばれる掘っ立て小屋のような住まいで暮らしているらしい。食料を売る黒市(やみいち)もあちこちにできている。道に迷っていると、大きな建物の前で止まった。
正面には大きく「GHQ」の文字が書かれた看板が立っている。ヒカリが目を輝かせた。 「ここがGHQだよ、カナ! 【注釈】GHQ(ジー・エイチ・キュー)とは、連合国軍が日本を占領するために東京に設置した機関。正式名称は『連合国軍最高司令官総司令部』っていうんだ。つまり、戦後日本を実質的に支配・指令している組織なんだよ」 「占領軍ってことは……そうか、戦争が終わって、日本は連合国軍に占領されてるんだっけ」  教科書で聞いたことはあったが、こうして現場で見ると迫力が違う。兵士や軍関係者らしき人たちが忙しそうに出入りしている。
ちょうどそのとき、建物の中から日本人らしき男性が出てきた。スーツに身を包み、手には大量の書類を抱えている。 「ああ、君たち、こんなところでなにをしている? 怪我などはないかね?」  丁寧な口調のその人は、GHQの通訳として働いていると名乗った。名前をミヤケといい、どうやらGHQの改革関連の業務をサポートしているらしい。ミヤケは二人の身なりからして学生に見えたのだろう、不思議そうに首を傾げる。 「親御さんとはぐれたのかな? 終戦直後は混乱しているから、気をつけるんだよ」
ヒカリが興奮気味に尋ねる。 「今、どんな改革が行われてるんですか? 1945年に戦争が終わって、何が変わろうとしてるんでしょう?」  ミヤケは少し驚いた様子で、 「君たち、なかなか物好きだね。まさか学生がそんなに興味を持つなんて。……GHQは10月に“五大改革指令”を出したんだ。色々な法律や制度を変えようとしている。例えば『治安維持法』なんかを廃止したよ」 「治安維持法の廃止……!」  カナは聞き覚えがなかったが、ヒカリはすかさず口を挟む。 「【注釈】治安維持法は、政府に反対する思想や運動を取り締まるための法律だったんですよね。それが1945年10月の五大改革指令で廃止されたんだ…!」 「そのとおり。大日本帝国時代の思想統制に使われた法律は、もういらないというわけだ。それに、男女平等や労働組合の奨励なんかも改革の一環として進んでいる。まさに歴史的な変化の真っ最中さ」  ミヤケはそう言って微笑んだ。

 
【第3章:公職追放と東京裁判】
翌日。カナとヒカリは、なんとか寝床を確保したバラックで目を覚ました。周囲の人に混じって配給の列に並びながら、耳に入ってくる会話をこっそり聞いてみる。 「最近、公職追放ってのが始まったらしいよ。戦争で偉そうにしてたやつらがどんどん職を追われてる」 「【注釈】公職追放ってのは、戦時中の戦争指導者や協力者を排除するために行われてる措置らしいね」 「やっぱりGHQも厳しいんだな……」
カナはピンとこない表情だ。とりあえずヒカリに解説を求める。 「ねえ、公職追放って……どうしてそんなことするの?」 「うーん、日本を民主的な国に変えようとしてるGHQの方針の一環なんじゃない? 戦争に積極的に協力した政治家や軍人たちをそのままにしたら、また同じようなことになるかもしれないからね」  なるほど、とカナは納得したような、しないような気持ちになる。しかし、それだけでなく、「戦争の責任」はもっと大きな形で問われていた。
その代表的な出来事が「東京裁判」である。 「東京裁判って、正式には“極東国際軍事裁判”だよ。英語だとInternational Military Tribunal for the Far East。A級戦犯を裁いた裁判だね」  ヒカリが解説を始める。 「A級戦犯が問われた罪は『平和に対する罪』。【注釈】これは他国への侵略戦争などを計画・実行した罪、つまり戦争を始めたこと自体の罪ってこと」 「へえ……。戦争を始めた責任を裁くってことか。それで、戦争指導者たちはどうなったの?」 「裁判は長期にわたったよ。判決では死刑や終身刑になった人もいるんだ」
その夜、カナたちは偶然にも東京裁判を傍聴していたという人と知り合った。小柄な男性で、裁判の内容がいかに混乱していたかを熱く語ってくれた。 「だけど昭和天皇は起訴されなかったんだよ。マッカーサーの指示があったんだってな」 「マッカーサー?」  カナは聞き覚えのある名前だ。たしか戦後の日本を統治したアメリカの将軍だったはずだ。 「【注釈】マッカーサーは連合国軍司令官で、昭和天皇を不起訴とするよう支持した人物だ。そうすることで、日本国民の統制を取りやすくする狙いもあったらしい」  ヒカリはさらっと補足する。 「なるほど、天皇を裁くと日本人の反発が大きくなって、占領統治が難しくなるって考えたんだね」
東京裁判の様子は、カナにとって刺激的だった。戦争に対する裁きの場がこんなに多くの国々の関心を集め、いろいろな政治的思惑が絡んでいる。歴史って、単なる暗記だけじゃなくて、そういう国際関係や人間ドラマがあったんだ……と、少しだけ胸がざわついた。

 
【第4章:冷戦の風とアメリカの戦略】
そんなある日、カナとヒカリはGHQ近辺でふと目にした記事を読んで驚いた。「冷戦」という言葉が躍っている。どうやらソ連(ソビエト連邦)とアメリカの対立が深刻化しつつあるらしい。米ソが戦火を交えるわけではないが、国際社会では緊張状態が続いている、ということだ。 「そっか、1947年頃から米ソがにらみ合って、世界が“東側”“西側”に分かれていく時代になるんだよね」  ヒカリが解説モードに入りかけると、カナは急いで耳を塞ぐ。 「ちょっと待って、あんまり難しく説明しないで~! 頭パンクするから!」 「はは、ごめんごめん。まあとにかく、アメリカは『日本を共産主義の防波堤にしよう』って方向に方針転換しつつあるらしいんだ。日本をアジアにおける“同盟国”として育成しようとね」 「同盟国……? 【注釈】これは、冷戦が進行する中、アメリカが日本をアジアにおける重要なパートナーにしようとしたってことだね」 「そうそう。最初は日本に厳しく民主化を進めてたけど、今度は『経済的にも強い国』にして、共産主義の広がりを食い止めてほしいって考え始めたんだよ」
そうした中で、「1ドル=360円」の為替レートが設定されたという話も聞こえてきた。輸出を増やすため、円を安く設定して日本企業が海外で物を売りやすくする狙いがあったらしい。 「【注釈】単一為替レートといって、1ドル=360円に固定されたんだよ。これで日本の輸出品が安く海外に出回るようになるわけ」 「へえ……そんなやり方があったんだ。日本を立て直すために色々手を打ってるんだね」
GHQの厳しい統制はありつつも、日本国内では少しずつ経済を立て直そうとする動きが出始めている。その転機となったのが、1950年に勃発するある大きな戦争だった。

 
【第5章:朝鮮戦争と特需の波】
1950年6月、北朝鮮が韓国に侵攻して始まった戦争。「朝鮮戦争」である。 「【注釈】朝鮮戦争は1950年、北朝鮮が韓国に攻め込んで始まった戦争。韓国を支援したのはアメリカで、北朝鮮を支援したのは中国とソ連だ」  ヒカリが興奮して説明するのを聞きながら、カナはテレビでも教科書でも「朝鮮戦争」として紹介されていたことを思い出す。 「日本は直接参戦してないけど、この戦争のおかげで景気がよくなったって聞いたことあるような、ないような……」 「そう、アメリカ軍が日本で大量に物資調達したから、“特需景気”が起こったんだよ。【注釈】特需景気とは、戦争に伴うアメリカの大量の物資調達で起こった好景気のことだね」
戦争は人々に悲劇をもたらす一方で、日本にとっては皮肉にも経済復興のチャンスとなった。工場がフル稼働して、軍需物資を作り、アメリカに供給する。その結果、一時的に日本国内は活気を帯び始めた。 「なんか複雑だね。戦争があって、日本が助かるって……」  カナは曇った表情で呟く。平和が好きなカナとしては、この好景気を素直に喜べない自分がいた。
さらに朝鮮戦争中には、共産主義勢力への警戒が一段と高まり、日本国内でも“レッド=パージ”が行われたという話を耳にする。 「【注釈】レッド=パージとは、共産党員などを公職から追放したり解雇したりする動きのことだよ」 「公職追放に続いて、今度は共産党員まで追放……。本当に色々動きが慌ただしいね」
そんな時期、GHQからの指示で新たに「警察予備隊」という組織が作られたとも聞いた。 「【注釈】警察予備隊は、朝鮮戦争勃発直後の1950年、GHQの指示で創設された部隊だね。将来的には大きく変化していくんだ」  日本が非武装とされていたはずなのに、警察予備隊の創設は「実質的な軍隊じゃないのか?」という声もあったようだ。それでも混乱の時代、人々は様々な変化に対応せざるを得なかった。

 
【第6章:講和条約と独立の回復】
1951年9月、ついに大きな歴史的事件が起こる。それが「サンフランシスコ平和条約」の調印である。 「【注釈】サンフランシスコ平和条約は、1951年に吉田茂首相らが連合国48か国と調印した講和条約だよ。これによって日本は“独立”を回復することになるんだ」  ヒカリはいつもの早口でまくしたてる。カナは必死にノートをとりながら、うなずく。 「なるほど……やっと占領が終わるわけだ」 「そうそう。この条約によって、日本は主権を回復して、晴れて国際社会に復帰することになる。そして1952年4月28日に発効したその日、日本はもう占領下じゃなくなるんだよ。独立おめでとう、って感じ」
ただし、同じ日に締結されたもう一つの重要な条約がある。日米安全保障条約(通称・安保条約)だ。 「【注釈】日米安全保障条約は、サンフランシスコ平和条約調印の夜に結ばれた条約で、米軍の駐留を認めた内容なんだ」 「独立したのに米軍はまだ日本にいるの?」  カナは首を傾げる。 「そうなるね。日本を防衛するという名目で米軍が駐留することを認める代わりに、日本は軍備を最小限にしておきましょう、ってわけ。でも、これが後々いろいろと政治問題になるんだよ」
さらに1952年には「日米行政協定」も結ばれた。これによって米軍基地の設置などが具体的に定められることになる。 「【注釈】日米行政協定は1952年に結ばれ、米軍基地の設置や費用負担などを規定する協定だね」 「アメリカの影響力って、独立後もかなり強いんだね」
その後、日本は独立国として歩み始めるが、国内の防衛については依然として懸念があった。警察予備隊は1952年に拡張・改組されて「保安隊」となり、さらに1954年には「自衛隊」へと発展する。 「【注釈】保安隊は1952年に警察予備隊を改組したもの。そして1954年、日米相互防衛援助協定を受けて“自衛隊”が発足したんだ」 「つまり今の自衛隊のルーツは、あの警察予備隊だったのか……!」  カナは目を丸くする。戦後わずか数年の間に日本の防衛組織がコロコロと姿を変えている事実に驚かずにはいられない。

 
【第7章:戦後の息吹とカルチャーショック】
占領の時代が終わっても、カナとヒカリのタイムスリップ生活は続いていた。街にはアメリカ文化が少しずつ入り込み、ジャズやハリウッド映画が人気を博し始めている。街角にはGHQ関連のポスターは減ったが、代わりに新たな映画の看板やアメリカ風のダイナーのようなお店が増えてきた。若者の間では、英語の流行歌を口ずさむ姿も見られる。 「なんだか、日本が一気にアメリカナイズされてる感じがするね」  ヒカリはカルチャーショックを受けながらも、どこか楽しそうだ。 「私、映画とか音楽は全然詳しくないけど……こうやって時代の変化を肌で感じると、歴史って生き物みたいに思えるかも」
そんなある日、ふと空を見上げると、急にあの不思議な光がまた現れた。ここに来たときと同じ感覚だ。カナとヒカリは目を合わせる。 「これ……戻れるのかも!?」  強い光に包まれ、気づいた時には学校の資料室に立っていた。あのボロボロの街や英語混じりの混雑した風景はどこにもない。時計を見ると、ほとんど時間もたっていないようだ。 「まさか、全部夢……?」  カナはそう思いかけたが、ポケットの中には1940年代~50年代の日本で拾った硬貨がある。それに、頭の中にはこの数日体験した記憶がはっきりと残っていた。

 
【第8章:エピローグ ~学んだことは現代にも~】
「おかえり、カナ。どう? 面白かったでしょ、歴史の世界!」  ニヤリと笑うヒカリ。カナは満面の笑みで応える。 「うん……正直、暗記ばっかりって思ってたけど、現場に行ってみるといろんな人がいて、いろんなドラマがあって……もう脳みそにしっかり焼きついたよ!」 「これならテストはバッチリだね!」  歴史用語を詰め込むのは苦手だったカナだったが、今は言葉の一つひとつがリアルにイメージできる。それは「戦国時代」ではなかったけど、十分に衝撃的で大切な体験だった。   部活帰りの体育館でシュート練習をしていたカナの頭には、不思議と「GHQ」「サンフランシスコ平和条約」「朝鮮戦争」などの単語がはっきりと浮かぶ。もしかしたら、自分はちょっと歴史が好きになってしまったかもしれない――そう感じると、なんだか得意げな気持ちがこみ上げてきた。

【学習まとめ:戦後日本の重要人物・用語】
GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)
連合国軍が日本を占領するために東京に設置した機関。マッカーサーを中心に、戦後改革を主導。
治安維持法の廃止
1945年10月の五大改革指令で廃止された。政府に反対する思想や運動を取り締まる法律だった。
公職追放
戦時中の戦争指導者や協力者を排除するために行われた措置。新しい民主的社会を築くために実施された。
平和に対する罪
A級戦犯が問われた罪。侵略戦争を計画・実行したことへの責任を問う。
極東国際軍事裁判(東京裁判)
戦争指導者を裁くために行われた裁判。A級戦犯に死刑や終身刑などの判決が下された。
マッカーサー
連合国軍司令官として日本占領を指揮。昭和天皇を不起訴にするなどの方針を示した。
同盟国
冷戦の進行に伴い、アメリカが日本をアジアにおける共産主義防波堤、そして重要な味方として育成しようとした。
単一為替レート(1ドル=360円)
輸出を促進するために設定された固定為替レート。日本の経済復興に大きく寄与。
朝鮮戦争
1950年、北朝鮮が韓国に進攻して始まった戦争。アメリカが韓国側、ソ連・中国が北朝鮮側を支援した。
アメリカ
朝鮮戦争で韓国を支援。日本を占領し戦後改革を主導、のちに日本を冷戦の重要拠点と位置づけた。
ソ連
朝鮮戦争で中国とともに北朝鮮を支援。アメリカとの冷戦で東側陣営の中心を担う。
警察予備隊
GHQの指示で1950年に創設。朝鮮戦争を機に日本の自衛力を整備するためにつくられた。
レッド=パージ
朝鮮戦争期に共産党員などを公職から追放した。共産主義を警戒する冷戦の影響が色濃く反映。
特需景気
朝鮮戦争でアメリカが大量の物資調達を行ったことによる好景気。日本経済の復興を大きく後押し。
サンフランシスコ平和条約
1951年、吉田茂首相らが連合国48か国と調印した講和条約。これにより日本は主権を回復。
独立
サンフランシスコ平和条約によって日本が回復したもの。1952年4月に占領体制が終了。
日米安全保障条約
サンフランシスコ平和条約調印の夜に締結された条約で、米軍の駐留を認める内容。日本防衛のための協力関係を確立。
日米行政協定
1952年に結ばれ、米軍基地の設置などを定めた協定。日本国内のアメリカ軍駐留を具体化。
保安隊
1952年、警察予備隊を拡張・改組して設置された組織。警察権力よりも軍事的な性格を強化。
自衛隊
1954年、日米相互防衛援助協定を受けて発足。現在の日本の防衛組織の基盤となる。

【もし今の時代に活かすとしたら?】
戦後日本が歩んだ道は、民主主義や平和主義を模索しながら、国際社会との関わりを深めていく過程でもあった。
国を再建するためにいろいろな改革が行われ、その裏には国際関係の駆け引きや経済戦略があった。
今の私たちも、普段の生活のなかで「当たり前」と思っていることが、実は当時の人々の努力と決断の積み重ねの上に成り立っている。
歴史を学ぶことで、平和や暮らしをどう守るか、国際社会の中でどう振る舞うべきかを考えるきっかけになるはず。自分たちの未来を築くために、過去から学んでいきたいですね。

カナにとって、今回は「戦国時代」ではなかったけれど、戦後の激動期を体験したことで歴史への印象は大きく変わった。私たちが自由に話し、学び、暮らせる社会――それは単純に与えられたものではない。無数の選択と試行錯誤によって形づくられてきたのだ。
学校の廊下を歩きながら、カナはふと思う。「もう少し歴史の授業も前向きに聞いてみようかな」と。歴史好きのヒカリの笑顔を思い浮かべながら、次のテストはちょっと自信が湧いてきたのだった。