2024年10月22日掲載
2025年8月25日改訂・再掲載
毛呂山町平山の毛呂川沿いに生えるナラガシワを見に行きました。過去にも掲載していますが、ナラ枯れにより個体数が変わったため、最新の状況を記載します(写真は過去のものも使用しています)。
このナラガシワ自生地は、埼玉県の希少な植物群落について書かれた文献にも掲載されました!
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/266115/353-465.pdf
【毛呂山町平山2丁目】
1箇所目のナラガシワ自生地は、武州唐沢駅から300mほど南南東へ向かった毛呂川沿いの氾濫原にあります。
下流側はクヌギが優占していますが、薪炭用に植栽されたものかもしれません。写真は2019年10月13日撮影のもので、現在はクヌギ・ナラガシワともにナラ枯れ被害を受けた個体が目立ちます。
今年ナラ枯れ被害を受けたナラガシワは2本ありましたが、うち1本は根元から萌芽枝を伸ばしていました!ナラガシワは寿命が数百年と長いため、この萌芽枝が生長してくれれば安泰です。
最も大きなナラガシワは樹高20m・胸高直径60cmくらいです。
ここでもハルニレが混生しているのが特徴です。ハルニレは6本ありました。
オオバコナラ(コナラ×ナラガシワ)と思われる個体も2本見られます。
オオバコナラの樹皮はナラガシワに似ています。
ナラガシワの葉(2025年8月24日撮影)。大形でよく目立ちます。
ここのナラガシワも細長くて大粒のどんぐりです(2020年10月採集)。
写真中央の高木が最大のナラガシワです(2025年8月24日撮影)。私が当地を初めて訪ねたのは2019年10月のことで、当時は9本の成木がありました。その後、関東ではナラ枯れが拡大し、2024年10月の訪問時には生存しているナラガシワ成木は6本になっていました。2025年8月時点のナラガシワの個体数は、健全な成木が4本、今年ナラ枯れになった成木が2本(1本は枯死寸前、もう1本は根元のみ生存)、若木が2本になっていました。
植生は、ナラガシワ・コナラ・オオバコナラ・クヌギ・イヌシデ?・ヤマグワ・ハルニレ・エノキ・ムクノキ・ニガキ?などが混生しており、上流側では規模は小さいものの、ナラガシワ・ハルニレが優占種になっていました。
【毛呂山町平山3丁目・武蔵越生高校周辺】
武蔵越生高校前のナラガシワ。写真は2019年10月撮影のもので、現在は強剪定されています。毛呂川沿いにはハルニレの若木が幾つかありました。
武蔵越生高校内は関係者以外立ち入り禁止ですが、敷地外からナラガシワが生えている様子が確認できます(2024年10月22日撮影)。
2024年は凶作で、どんぐりは殆ど見られませんでした。
左側がナラガシワ、右側がクヌギです。武蔵越生高校内の毛呂川右岸では、上流側はナラガシワ林、下流側はクヌギ林になっています。私が目視で数えたところ、武蔵越生高校周辺ではナラガシワは10本ありました。
毛呂川と越辺川の合流地点辺りでは、中洲にクヌギの河畔林が広がり、周囲にはハルニレも見られます。ここにはナラガシワはありません。クヌギ・ナラガシワはともに河畔林を構成しますが、クヌギは中洲や河川敷にも生えるのに対し、ナラガシワは河道から離れた氾濫原に生える傾向があります。クヌギはハンノキと混生することもあるので、クヌギの方が水辺に近く湿った場所に生える印象があります。ナラガシワとハンノキの混生は殆ど見ないです。また、クヌギは中国大陸からの移入種という見方が強いですが、河川沿いに野生状に生えているものは自生ではなく野生化したものとなるのかも気になります。
2025年8月時点では、2箇所で成木・若木・萌芽個体合わせて18本(1本は枯死寸前)のナラガシワが現存していました!
「埼玉県レッドデータブック2011 植物編」ではナラガシワの記載はありませんでしたが、最新版の「埼玉県レッドリスト2024植物編」では絶滅危惧ⅠB類(EN)となっていました!ナラ枯れで以前よりも個体数が減少していたため、せめて大径木だけでも対策をしてほしいものです。そして、この自生地が開発や伐採されることなく、永遠に残されることを願います。