静岡県函南町の函南原生林に行きました。2016年以来、2度目の訪問です。

 
函南原生林は箱根外輪山のひとつである鞍掛山の南斜面の標高550~860mに位置します。函南町・三島市の灌漑用水の水源涵養林として江戸時代から禁伐林として保護されてきました。暖温帯と冷温帯の中間に位置し、アカガシとブナが混生する林が見られます。アクセスは、熱海駅から元箱根行きバスに乗り、函南原生林入口で下車です。バス停から時計回りに一周しました。
 
アカガシの巨樹(No.1)。立て札によると、樹高20m・目通り6m・樹齢700年とのことです。
アカガシの反対側にあったブナ。真夏ですが、林内は涼しく湿潤な環境です。
 
2005年6月18日まで、この地に日本最大のブナがあったことを示す立て札。関東周辺では標高1000m以上にブナが生育しますが、禁伐地とされた函南原生林・高尾山・筑波山などではもっと低標高にもブナが生育しています。そのため、人工林や二次林に転換されなければ低山にも広域にブナが生育していたのではないかと私は思っています。また、太平洋側のブナは、現在から200~300年前(江戸時代)の小氷期と呼ばれる寒冷・湿潤な時期に発芽したものの生き残りといわれています。
 
立て札はありませんが、写真のアカガシもかなりの大きさです。
 
橙色の樹皮が特徴的のヒメシャラ(ツバキ科)。箱根が分布の東限です。
 
アカガシの巨樹(No.2)。樹高16m・目通り5.4m・樹齢500年とのことです。アカガシの巨樹(No.1)よりも大きいような気がします。
 
ブナの巨樹がありました!林床はハコネダケ・スズタケが繁茂したササ型林床です。
このブナには大きなコブがありました。
 
林内の様子。写真中央の大木がブナです。
函南原生林のブナは、樹皮に苔があまり生えていません。
 
このブナも見事な巨樹です。
 
今回見られた樹木は、ブナ・アカガシ・ウラジロガシ・ヒメシャラ・イヌシデ・ヤブニッケイ・シロダモ・イヌガシ・アブラチャン・ホオノキ・ケヤキ・オオモミジ・イタヤカエデ・チドリノキ・ミヤマシキミ・ハリギリ・リョウブ・イヌガヤなどでした。全体的にはアカガシが優占種でしたが、終盤はブナも多く見られました。
ブナは大木は多いものの、枯死木や衰弱している個体が多く、後継樹も全く見られませんでした。ハコネダケ・スズタケが一斉枯死すれば林床に光が届くようになりますが、太平洋型ブナ林では種子の稔性が低いので、発芽できたとしても実生が捕食者に食べ尽くされてしまいそうです。ブナの更新は望めないため、既存のブナが寿命を迎えればブナは消滅し、アカガシを中心とした林に変化していくことでしょう。