宮崎のハナガガシを訪ねました。宮崎県では霧島山系御池・北諸県・南那珂・宮崎市など県中南部を中心に分布が確認されています。
「宮崎県 宮崎県の植生 県中地域(宮崎・野尻・高鍋・妻・須木) 1983年」によると、日向市山口や都城市山之口町の境川沿いおよび宮崎市高岡町の丘陵地帯にはコジイ-ハナガガシ群落(コジイ・ハナガガシ、時にツクバネガシが優占する照葉樹林)、宮崎市高岡町高房台や綾町川中にはルリミノキ-イチイガシ群集(コジイ・イチイガシ・ハナガガシなどの照葉樹林)が分布しているそうです(40年前の情報のため現存するか不明ですが…)。
他県では多くが社寺林で、社寺林以外の分布は宮崎県の低地に集中しています。
【西都市・都萬神社】
一ッ瀬川の沖積低地に位置しています。
境内は優占種がハナガガシ、第二優占種がクスノキで、イチイガシ・タブノキ・ミミズバイ・ヒサカキ・スギなどが見られました。ハナガガシの数は多いものの、枝が切られていたり、幹が腐食した個体が多いです。ハナガガシは幹が腐りやすいのでしょうか?下層植生も刈られていて乾燥しています。
【綾町・綾の照葉樹林】
綾町・竹野にハナガガシがあるそうですが、見つかりませんでした(現存しないのか?)。
綾の照葉大橋。日本最大規模の照葉樹林です。谷部にはイチイガシ・ハナガガシ・ツブラジイ・タブノキ、中腹から尾根にはウラジロガシ・アカガシ・イスノキなどが生育しているそうです。しかし、遊歩道が台風の影響で通行止めで、残念ながら観察できませんでした。イチイガシが普通に生えているのが九州らしい光景でした。綾には九州のカシ7種が全て分布するそうです。
【日向市・福瀬神社】
耳川沿いに位置しています。
県指定天然記念物の社叢です。幹周り1m以上のハナガガシが27本確認されています。
御神木のハナガガシ。幹周り約5.3m・樹高30m・樹齢約300年で、世界最大のハナガガシです。ワイヤロープを巻かれています。
枝が切られる以前は、樹高40mあったそうです。葉は沢山ついていますが、幹の半分は腐食していてサルノコシカケも寄生していたため、先は長くなさそうです。高知市・朝倉神社にもサルノコシカケが寄生したハナガガシがありましたが、台風で倒壊した後、枯死しました。
この個体は幹周り450cm・樹高30mです。御神木のワイヤロープのアンカーに用いられたため、幹に傷痕があります。
根元は板根になっています。
反対側から見上げた様子。幹が真っ直ぐに伸びて存在感があります。
ハナガガシの樹皮。近縁のツクバネガシと違って、剥がれません。
境内には幹周り380cm・370cm・300cmの個体もあり、これほど大きなハナカガシがまとまって生育している場所は他には確認されていないそうです。巨樹だけでなく、後継樹も多く育っています。
植生はハナガガシが優占種で、イチイガシ・アラカシ・ツブラジイ・オガタマノキ・バリバリノキ・ヤブツバキ・チャ・サカキ・ヤマビワ・ルリミノキ・カンザブロウノキ・ミミズバイ・リンボク・アオキ・シュロ・スギ・ナギなどが見られました。関東では見ない樹種が多いです。
尚、どんぐりは都萬神社・福瀬神社ともに不作で全く落ちていませんでした。九州全体で同調しているのかもしれません。これは残念ですが、ハナガガシは豊凶が激しいので仕方がありません。
今回は綾でハナガガシやイチイガシの巨樹が見られなかったため、いつか大分のハナガガシを訪ねる時に再訪してみたいです。