2024年12月19日改訂
奄美大島に行きました。金作原原生林と大和浜でオキナワウラジロガシを観察しました。
【金作原原生林】
正式名は金作原国有林といいます。ガイド同行のツアーで行くことができます。
ヒカゲヘゴ。伐採跡地に生えるシダ植物です。奄美大島では1960年代前半から1970年頃にかけて伐採のピークがあり、その後も1990年代前半まで大規模な皆伐施業が続きました。原生林の名がつきますが、一部にスギの植林もあるため厳密に言えば原生林ではありません。
オキナワウラジロガシの巨木は、奥の折り返し地点にあります。
斜面に差し掛かったところで姿を現しました!幹が太く、板根も発達していて存在感があります!
迫力満点で森の王者とも言えるような存在です。オキナワウラジロガシは極相種で、自然度の高い場所にしか見られません。以前は樹高約22m・胸高直径約1.0m・推定樹齢150年以上と書かれた説明板がありましたが、樹齢はもっと長いのではないかということで撤去されたそうです。樹齢200年と書かれたサイトもありました。旅行ガイドブックで金作原原生林の名で掲載するのであれば、ヒカゲヘゴよりもオキナワウラジロガシを大きく取り上げた方が妥当ではないでしょうか?金作原原生林に至るまでの林道沿いにもオキナワウラジロガシが点在しました。
【大和浜のオキナワウラジロガシ林】
大和村役場の前に行き方の案内板があります。近くにはアマミアラカシも生えていました。
奄美大島では皆伐の影響で、オキナワウラジロガシ林は3箇所しか残っていません。オキナワジイ・アマミアラカシはルリカケスによって堅果が運ばれることも考えられますが、オキナワウラジロガシはほぼ重力散布のみであるため、皆伐後に増えることは期待できないでしょう。滝川山は神山として崇められて伐採を免れ、土砂崩れ・台風等から集落を守ってきました。
2024年12月15日撮影。
オキナワジイは尾根沿い、オキナワウラジロガシは潮風を避けるように斜面や谷沿いに生育しています。面積約1.5ha内に胸高直径50cm以上の個体が100本程度生育し、樹高約30m・胸高直径1m以上・樹齢約250~300年の個体も見られます。
2024年12月15日撮影。林内で最大の個体。樹齢約250~300年とのことです。
2006年に実施された最終調査の結果、直径100cm以上の大木が4本確認されたそうです。
2024年12月15日撮影。
全体が写らないため、根元・中央・上部に分けて撮影しました。
2024年12月15日撮影。
建築材として有用なため、このような大木は真っ先に伐られたことでしょう(首里城再建で沖縄県国頭村のオキナワウラジロガシ4本と九州のイヌマキが伐採されることになりましたが、そもそも何故今まで植林されてこなかったのか疑問です)。金作原の個体と違って板根は見られません。根元にサルノコシカケ?が着生していたのが気掛かりでした。
奄美大島では、住用町山間に幹周り8.9m・推定樹齢300年以上のオキナワウラジロガシの巨樹がありました。しかし、2018年1月に倒れたことが確認されました。沖縄県国頭村・伊部岳の個体(幹周り7.6m)が世界最大とされていますが、住用町山間にあった個体はそれを上回る大きさです。
どんぐりは並作~豊作でした。天然記念物なので、拾うのは少しだけにしました。
長さ2.8~3.3cmで、堅果サイズは八重山諸島産と殆ど同じでした。豊凶が激しく、全く落ちていない年もあります。2020年の徳之島がそうでした。
【奄美大島のどんぐり】
奄美大島に分布するブナ科は、オキナワジイ・オキナワウラジロガシ・アマミアラカシ・ウラジロガシ・マテバシイの5種です。奄美群島の森林の優占種は、オキナワジイ・オキナワウラジロガシ・アマミアラカシ・イスノキ・イジュなどの樹種です。
今回の旅ではマテバシイ以外の4種を確認しました。マテバシイは、奄美大島では海岸に面した尾根筋に稀に生えるそうです(※2024年12月17日追記:地元の方によると、宇検村の屋鈍・阿室に少数あるそうです。また、加計呂麻島・請島・与路島にもあるそうです)。
オキナワジイは大豊作でした!オキナワジイは基本種スダジイと違って、豊凶が激しいです。
堅果の形はスダジイとツブラジイの中間型で、長さ1.6~1.9cmでした。奄美地方では昭和60年代まで奄美栗の名で市場で販売され、煮る、炒る、粥、せんべいにするなどして食べたそうです。
住用のマングローブ林周辺ではオキナワジイ・アマミアラカシが優占し、ウラジロガシも点在していました。奄美自然観察の森ではオキナワジイが優占し、アマミアラカシも点在しました。
また、牧野富太郎氏は奄美大島のウラジロガシをヤナギウラジロガシ(葉幅が狭い変種)と名付けています。しかし、葉が幅広の個体もあったため、一概には言えないと思いました。また、奄美大島産のウラジロガシは鹿児島県本土産の個体群よりも堅果が大きいそうです。
ただ、ヤナギウラジロガシという呼び名はオキナワウラジロガシとの混同を防ぐ目的では良いと思います(オキナワウラジロガシとウラジロガシも誤認が多いそうです)。ウラジロガシは奄美大島では比較的普通も、優占種にはならないそうです。
滞在中は雨の日ばかりでしたが、自然・文化・料理など全てが非日常でとても楽しかったです!