静岡県伊豆半島の天城山系・八丁池のブナ林を訪ねました。天城山のブナ林は国指定特別保護地区で、八丁池とその周辺、戸塚峠~小岳~万三郎岳~万二郎岳までの地域の2か所が指定されています。

修善寺駅からバスに乗り、天城峠バス停で下車。天城峠バス停→上り御幸歩道→八丁池→下り八丁池歩道→水生地下バス停を歩きました。
 
【上り御幸歩道】
9:00に天城峠バス停に到着し、登り始めました。
国指定重要文化財の天城山隧道(旧天城トンネル)。伊豆市(旧天城湯ヶ島町)と河津町をつなぐトンネルです。伊豆半島の北と南を分ける天城山は、交通の大きな妨げとなっており、南伊豆は陸の孤島となっていました。明治38年(1905年)に開通し、難所の天城越えは解消しました。石川さゆりの「天城越え」の歌詞にも登場します。
標高約710mで、周囲の植生はアカガシ・ウラジロガシ・シデ類・ケヤキ・イタヤカエデ・ミズキ・サワグルミなどで、暖温帯と冷温帯の樹種が混生しています。
天城峠(標高約830m)に着くと、ブナの大木が現れました!天城峠ではブナとアカガシが同所に生育しています。
ヒメシャラの大木。橙色の樹皮が特徴的で、6~7月に白い花を咲かせます。箱根以西に分布するソハヤキ要素の植物で、太平洋型ブナ林で混生します。
天城峠を過ぎて暫く歩くと、本格的なブナ林になります。
ブナ・ヒメシャラが優占し、イヌシデ・ホオノキ・カエデ類(オオモミジなど)・シナノキ・ハリギリ・リョウブ・シキミ・アセビ・モミ・ツガなどが混生しています。
ブナは幹径70cmほどの大木が多いですが、稚樹は全く見られません。下層植生が殆どなく、落葉だけが広がる光景になっています。
その原因はニホンジカの増加に伴う食害です。1990年代の天城山系は林床にスズタケが密生していたそうですが、現在は面影すらありません。ブナ実生も食べ尽くされているのでしょう。
 
【八丁池】
ブナ林を進み、アセビが多くなってくると八丁池に到着します。アセビは有毒なのでシカも食べません。八丁池到着は13:00頃でした。
見晴台から見た八丁池(標高1173m)。以前は天城火口の火口湖とされていましたが、最近の調査で湖と断層のズレに水がたまって出来た池であることがわかったそうです。

反対側の眺め。遠くに海が見えます。

八丁池。周囲がスズタケに覆われていたことから 「アオスズの池」とも呼ばれ、モリアオガエルの産卵地としても知られます。


八丁池の名は、周囲が八丁(870m)あることに由来するそうですが、実際には560m程度とのことです。

 
【下り八丁池歩道】
下り八丁池歩道もブナの大木が多いです。
天城山系のブナは、樹皮に苔が多いのが特徴です。
登山道が不明瞭で、道から外れてしまいました。
道から外れた時に見つけたブナの大木。後に道に戻れましたが、上り御幸歩道でも道が不明瞭な箇所がありました。
尚、八丁池周辺には奥多摩のブナ林で見られるイヌブナ・ミズナラ・クリなどはありませんでした。
天城大橋。水生地下バス停到着は16:30頃でした。ここではオオバヤシャブシ・アカメガシワ・カラスザンショウなども見られました。
また、天城大橋の下ではキウイフルーツが野生化していました!野生化したものは初めて見たので大変驚きました!
 
天城山系にここまでブナが多いとは思いませんでした。天城山では年間3000ミリもの降雨があるため、湿潤な環境を好むブナの生育に適しているのでしょう。天気にも恵まれて良かったです。