2024年10月29日改訂

今秋も碓氷峠のナラガシワを見に行きました。
昨秋は熊ノ平→横川駅を歩きましたが、今回は横川駅→麻苧(あさお)の滝→碓氷湖を歩きます。
 
【麻苧の滝自然公園】
碓氷川沿いにナラガシワが幾つか生えています。標高約380mです。
右岸のナラガシワ。林縁にナラガシワの成木が5本あります。右岸の林ではコナラが優占で、ナラガシワ・クリ・シデ類・ホオノキ・ハルニレ・ケヤキ・イタヤカエデ・ミズキなどが見られました。ハルニレ・ケヤキは東日本のナラガシワ自生地には必ずと言って良いほど出現します。
左岸に生えるナラガシワの若木。左岸では河道内やスギ林の林縁に成木が1本・若木が4本ありました。
葉はコナラの2倍くらいの大きさで、枝も太いです。
今回は行きませんでしたが、登山コースにもナラガシワがあるかもしれません。
 
【アプトの道】
アプトの道(旧信越本線)は霧積川に沿って敷設されています。ナラガシワは峠の湯(標高約500m)辺りまで優占しています。
スギ人工林が多いものの、僅かに残された天然林ではナラガシワが優占種となり、コナラ・ケヤキなどが混生しています。ナラガシワは沢沿いの林縁や急斜面に生育していました。
拡大して見ると、細長いどんぐりが成っているのがわかります。
コナラは場所を問わず広く出現しますが、ナラガシワの生育地点は明るく開けた場所に限定されていました。そのため、コナラよりも陽光を求めるようです。
谷底に生えるナラガシワ。個体数は多いものの、遊歩道から離れた場所に生育している個体が多いです。
 
【碓氷湖】
碓氷川を堰き止めて造った人造湖です。碓氷湖(標高約520m)ではナラガシワがミズナラ・イヌブナと同所的に生育しており、ミズナラ・イヌブナは碓氷湖が生育下限となります。ナラガシワの生育上限はめがね橋(標高約580m)です。横川駅(標高約390m)から歩くと、ナラガシワ・コナラ林→コナラ・ミズナラ林と植生が変化していきます。
低い所はスギ人工林ですが、上の方はコナラが優占する天然林で紅葉が進んでいます。
碓氷湖にはナラガシワが1本あり、見事に枝を伸ばした大木です。樹高12m、幹径70cmくらいです。
ナラガシワは陽光を求めて歪な樹形になっていることが多いです。
 
帰りは碓氷湖から中山道を歩きましたが、中山道沿いのスギ林の林縁にもナラガシワが点在しました。関東では稀なナラガシワが碓氷峠では何故多いのか謎です。

※2024年10月29日追記
小根山森林公園にもナラガシワがあるという情報がありましたが、見つけることはできませんでした。園内は植栽された樹木が多いですが、「やしろの森」では天然林が残されており、そこにはカシワが優占しているエリアがありました。現地の説明板によると、藩政時代に馬の産地であった小根山一帯は草刈場として良い草を育てるために山焼きが行われていたと考えられ、明治37年(1904年)に林業試験地として開設された当時の林は、火の影響を受けたコナラ・カシワ・クリを主とする二次林であったようです。カシワも関東では珍しいので、思わぬ発見でした。