2020年8月2日掲載
2025年7月22日改訂・再掲載
分類:アオイ科フヨウ属
和名:ハマボウ(浜朴)
学名:Hibiscus hamabo
分布:本州(千葉県以西の太平洋側・島根県隠岐諸島以南の日本海側)・四国・九州(奄美大島まで)。済州島。
樹高:1~3m 落葉低木
河口付近や内湾沿岸部の満潮時は海水に浸る砂泥地に自生する。塩生湿地で純群落を形成することから、半マングローブ植物と考えられている。埋立てや護岸工事により全国的に減少しており、大阪府・広島県では絶滅したと考えられる。庭木・公園樹・防風樹として植栽される。
葉は横幅が広い楕円形で、裏には毛が密生して白っぽい。紅葉が美しい。
花は7~8月。一日花で花径5~10cm、花弁は淡黄色、中心部と柱頭は暗赤色。
最盛期は7月中旬~下旬で、その後は花数が減る。
果実は蒴果で10~11月に熟すと裂け、種子は海水に浮いて遠方の岸辺に運ばれる。
幹や枝は曲がりくねる。
【関東周辺での自生地】
・千葉県いすみ市:夷隅川河口
・神奈川県川崎市川崎区:殿町・多摩川河口
・神奈川県横須賀市:天神島(県指定天然記念物)
・静岡県下田市:大賀茂川河口(市指定天然記念物)、下田公園赤根
・静岡県南伊豆町:青野川河口
・静岡県伊豆市:八木沢・丸山スポーツ公園
・静岡県西伊豆町:安良里・浦守神社(町指定天然記念物)
・静岡県静岡市清水区:三保松原、巴川護岸
・静岡県掛川市:弁財天川河口
・静岡県磐田市:福田・はまぼう公園
神奈川県横須賀市・天神島のハマボウ。海辺の砂浜に生えている他、岩場に生えたものも少数あった。
静岡県下田市・大賀茂川河口のハマボウ群落(市指定天然記念物)。黒潮によって南方から種子が運ばれてこの地に根付いたものと思われ、400~500株が群生している。
水際にはヨシ原が広がり、ハマボウは水際から離れたところで群落を形成していた。カニも多く見られる。
【都道府県別保全状況】
・千葉県:絶滅危惧Ⅰ類。2023年。館山市などで記録があったが、高潮で流されたりして安定的な生育環境は少ない。2008年に夷隅川河口で群落が発見されたほか、船橋市の埋め立て地でも漂着種子由来と思われる個体が見つかっている。千葉県は暖流である黒潮の到達する北限域にあたるため、黒潮のもたらす温暖な気候に依存する暖地性の生物は、千葉県を北限とするものが沢山ある。この分布の境界線をハマオモト線(本州南岸線)といい、年平均気温15℃・年最低気温平均-3.5℃の等温線とほぼ一致する。
・神奈川県:絶滅危惧ⅠA類(CR)。2006年。三浦半島の天神島と川崎市川崎区殿町の多摩川河口に自生する。個体数は両産地合わせて50株未満である。
この他にも、分布域の殆どの府県別レッドデータブックに掲載されている。
【近縁種】
・オオハマボウ(大浜朴) 学名:Hibiscus tiliaceus
世界の熱帯・亜熱帯に分布し、日本では種子島~先島諸島、小笠原諸島に分布する。常緑小高木で、花も葉もハマボウより大きい。オオハマボウからハマボウに種分化したといわれる。