分類:モクレン科モクレン属

和名:オオヤマレンゲ(大山蓮華)

別名:ミヤマレンゲ(深山蓮華)

学名:Magnolia sieboldii ssp. japonica

分布:本州(群馬・新潟県以西)、四国、九州(屋久島まで)

樹高:2~5m 落葉低木~小高木

 

谷川連峰から屋久島にかけてのブナ帯~亜高山帯(標高1000~2000m)に稀に自生する。奈良県大峰山系では比較的多いが、それ以外では極めて少ない。中国地方では山口・広島県の寂地山に産するのみ。生育環境は、やせ尾根や岩場・ガレ場、沢沿い、林縁などの林冠が開けた明るい場所であることが多い。

オオバオオヤマレンゲ(後述)の地理的亜種で、1980年にオオヤマレンゲとオオバオオヤマレンゲに区分された。尚、本項に掲載した写真は全てオオバオオヤマレンゲである。

 

葉は互生し、葉身は倒卵形~広倒卵形で全縁。先は短く尖る。葉裏には白い毛が生え、白色を帯びる。葉身7~15cm、葉柄2~4cm。

 

6月中旬~7月中旬、葉の展開後に枝先に芳香のある花を下向きにつける。

蕾。雌性先熟で、花の寿命は4~5日。花径5~10cmで、花弁は6枚で白色、萼は3枚で赤みを帯びる。

雌性期。開花時には雌蕊が成熟し、他の花からの花粉を受け入れて受粉する。雌性期では雄蕊は閉じている。花は開花後約1~2日で一旦閉じる。

雄性期。再び開いたときには雄蕊だけが開いて花粉を放出する。雄蕊は黄色~淡紅色。花が下向きに咲くのは、雨から花粉などを保護するための適応であるという説がある。

和名は大山(大峰山)に咲く蓮華のような花という意味だといわれる。清楚で気品溢れる花姿から、「森の貴婦人」と称される。

 

果実は袋果が集まった集合果で9~10月に熟し、袋果の中に2個の種子を含む。種子繁殖の他に、地に着いた枝から発根して栄養繁殖することもできる。

樹皮は灰白色で割れ目はない。

 

【有名な生育地】

・奈良県吉野郡天川村・大塔村「オオヤマレンゲ自生地(国指定天然記念物)」

 

【都道府県別保全状況】

群馬県:絶滅危惧ⅠA類(CR)。2012年。4地点で記録があるが、いずれの地点でも個体数は少ない。

埼玉県:絶滅危惧ⅠA類(CR)。2005年までは報告がなかったが、2011年版の調査で初めて1件の報告があった。確認個体数は数株である。

静岡県:絶滅危惧ⅠB類(EN)。2020年。産地は浜松市天竜区に限られ、個体数は極めて少ない。

上記3県の他に、14県のレッドデータブックに記載されている。

 

【亜種・品種・交雑種】 

オオバオオヤマレンゲ(大葉大山蓮華) 学名:Magnolia sieboldii ssp.sieboldii

オオヤマレンゲの基準亜種で、朝鮮半島、中国東北部に分布する。オオヤマレンゲよりも葉が大きく、雄蕊は深紅色で、樹高3~10m。朝鮮では山地に少し入れば極めて普通で、様々な環境下で旺盛に生育している。中国名は「天女花」。栽培個体が日本に自生するオオヤマレンゲとして長い間誤解されてきた。オオヤマレンゲよりも暑さに強く、日本の低地でも栽培可能。低地では5~6月に開花する。ホオノキを台木とした接木苗が「オオヤマレンゲ」の名で流通している。

 

ミチコレンゲ(美智子蓮華) 学名:Magnolia sieboldii ‘Plena’

オオバオオヤマレンゲの八重咲き品種。花弁は9枚以上。オオヤマレンゲに6枚以上の花弁はまず見つからないが、オオバオオヤマレンゲでは6〜8枚の花弁は普通で、同一の木に6枚の花弁の花と八重咲きのものが同時に咲いたりする。和名は美智子妃皇后がこよなく愛したことに由来する。

 

ウケザキオオヤマレンゲ(受咲大山蓮華) 学名:Magnolia×watsonii

ホオノキとオオバオオヤマレンゲの自然交雑種。幹は直立し、樹高5~6m。中国原産説もある。

花は上向きに咲き、花径10~15cmとオオヤマレンゲよりやや大きい。

 

清楚な花と深山で稀にしか見られないことから、多くの愛好家をもつ樹種である。関東近辺では、群馬県谷川岳や長野県志賀高原などで見られるようである。オオヤマレンゲはまだ見たことがないので、いつか見てみたい。

オオバオオヤマレンゲは、東京では水元公園、町田市薬師池公園などで見ることができる。関東では群馬県赤城自然園、埼玉県武蔵丘陵森林公園、神奈川県箱根湿生花園、東京農業大学厚木キャンパスなどにもあるようだ。いずれにしても見る機会は少ない。20年ほど前はホームセンターで苗木が普通に流通していたが、最近では殆ど見なくなった。

ウケザキオオヤマレンゲは、東京都井の頭自然文化園、農林総合研究センター、神奈川県川崎市緑化センター、大船フラワーセンター、埼玉県川口市花と緑の振興センターなどで見ることができる。オオバオオヤマレンゲよりも見る機会が多い。