2020年3月22日掲載
2024年4月3日改訂・再掲載
2025年4月29日改訂
分類:モクレン科モクレン属
和名:コブシ(辛夷・拳)
別名:タウチザクラ、ヤマアララギ、コブシハジカミ
学名:Magnolia kobus
分布:北海道(日高地方)・本州・四国(愛媛)・九州。済州島。
樹高:5~20m 落葉高木
低地~山地の落葉広葉樹林に自生し、日当たりの良い湿潤な肥沃地に多い。東北日本に多く、西日本には少ない。関東では低地にも多い。庭木・公園樹・街路樹として植栽される。
花は3~4月、葉の展開に先立って開花し、芳香がある。
花弁は6枚あり、白色で基部は紅色を帯び、花弁の外側に萼片が3枚ある。
花のすぐ下には小さな葉がある。近縁種のタムシバには葉がない。
ソメイヨシノよりも一足先に白い花を枝いっぱいに咲かせ、春の訪れを感じさせる。東北地方ではかつて、コブシの開花を農耕の目安とした。
横広がりの樹形になり、大木では見栄えがある。
東京都六義園のコブシの大木。関東では農家の敷地内で大木をしばしば見掛ける。開花を農耕の目安としているのだろうか?
葉は互生し、葉身は倒卵形で全縁、葉の先は短く尖る。
果実は袋果が集まった集合果(写真は8月撮影)。9~10月に熟すと裂開し、長く伸びた糸状の珠柄(胚珠の柄の部分)の先に赤い種子がぶら下がる。和名は果実を握り拳に例えたもの。
樹皮は灰白色で平滑、皮目が入る。樹皮は薬用となる。
北海道・本州(東北~北陸の日本海側)に分布するものは葉や花が大形で、変種・キタコブシ(別名:エゾコブシ、学名:Magnolia kobus var. borealis)に区分することもある。キタコブシは花弁基部の桃色が濃い。
【名木】
・東京都:駒沢オリンピック公園(世田谷の名木百選)
・埼玉県所沢市若狭二丁目:砂川堀の大コブシ
・長野県長野市豊野町豊野:堤の大コブシ(市指定天然記念物)
【交雑種】
・シバコブシ 学名:Magnolia×kewensis
コブシとタムシバの雑種。以下の写真は、園芸家・和田弘一郎氏の所有する苗木場で生まれたワダスメモリーという品種である。
花弁が垂れ下がる点はタムシバに似る。花の下に葉がある枝、ない枝が混在する。
円錐形の樹形で、コブシほど高木にならない。
【近縁種】
・コブシモドキ 別名:ハイコブシ 学名:Magnolia pseudokobus
1943年に徳島県相生町で1個体のみ発見された。原木は低木状で、枝は地面を這い、地面に接した部分から発根して株立ち状であったという。その後、現地調査が行われるも、現在まで他の個体は発見されていない。環境省レッドデータブックでは野生絶滅となっているが、原木から挿し木されたものが栽培されていたため、絶滅は免れた。コブシに近縁とされるが、3倍体で種子ができず、四国にはそもそもコブシが自生しないことから、謎の植物である。関東では東京都小石川植物園、神奈川県立花と緑のふれあいセンターに植栽されている。
葉はコブシよりも大形である。
花期は、染井吉野が開花~満開の時期である。2024年4月2日、東京都小石川植物園にて撮影。