分類:クスノキ科ハマビワ属
和名:カゴノキ(鹿子の木)
別名:コガノキ、カゴガシ
学名:Litsea coreana
分布:本州(福島・岐阜・石川県以西)、四国、九州、南西諸島、済州島、朝鮮半島南部
樹高:7~20m 常緑高木
沿海~低山の照葉樹林に自生し、シイ・カシ類やタブノキと混生する。沢筋などの湿潤地からやや乾燥した地域まで生育し、西日本ほど普通に見られる。
葉はタブノキよりも小形で、裏は灰白色。タブノキの当年枝は緑色なのに対し、カゴノキは黒っぽい。
雌雄異株で、9~10月に黄色の花が咲く。果実は液果で翌年の7~8月に赤く熟す。
樹皮は灰黒色で、成長するにつれて鱗状に剥がれ、白や緑褐色が混じる斑模様になる。和名は樹皮が鹿の子斑に剥げ落ちることに由来する。
樹皮が特徴的なので、成木であれば一目で識別できる。大木は見応えがある。
東京都八王子市の小仏のカゴノキ(都指定天然記念物)。主幹は枯れて、その周囲を枝幹が取り巻いて一株になっている。樹高13m、幹周り4.3m。
東京都あきる野市の地蔵院のカゴノキ(都指定天然記念物)。立札には樹高22m、幹周り約4mと記載されているが、現在は上部の枝は切り落とされている。地元ではナンジャモンジャ(珍しくて名前のわからない木に対する俗称)と呼ばれているそうだ。周囲には他にも5本のカゴノキがあった。
【有名な生育地】
・埼玉県坂戸市「多和目のカゴノキ(市指定天然記念物)」
・東京都八王子市「小仏のカゴノキ(都指定天然記念物)」
・東京都あきる野市「地蔵院のカゴノキ(都指定天然記念物)」
・神奈川県相模原市「小倉の大カゴノキ(かながわの名木100選)」
・神奈川県厚木市林神社(市指定天然記念物)
・神奈川県大磯町鷹取神社(社叢全体が県指定天然記念物)
・神奈川県小田原市「入生田のカゴノキ(市指定天然記念物)」
・静岡県伊豆市八幡神社(市指定天然記念物)
・静岡県富士市水神社
【都道府県別保全状況】
・福島県:絶滅危惧ⅠA類(CR)。2018年。
・茨城県:準絶滅危惧(NT)。2012年。
・栃木県:準絶滅危惧(NT)
・東京都:準絶滅危惧(NT)。2013年。
・山梨県:絶滅危惧Ⅱ類(VU)。2018年。
・長野県:絶滅(EX)。2014年。
関東地方は分布の北限に近く、個体数が少ない。東京都でも準絶滅危惧(NT)の指定を受けている。樹皮が特徴的なので、成木は保全されることが多いが、特徴に乏しい若木は林床管理などにより伐採されやすい。都内の自生地は、社寺境内やその周辺の照葉樹林にあることが多く、本種を含む照葉樹林の保全が望まれる。
静岡県では三島市の楽寿園、焼津市の林叟院で多く見ることができた。伊豆市の日枝神社にも大木がある。