神奈川県の三浦半島に行きました。今回訪れたのは横須賀市内3箇所の県指定天然記念物の社寺林です。
まずは叶神社。浦賀駅から南東に1.2kmほど行った所にあります。
鳥居の反対側は横須賀港です。
社殿の背後はスダジイ、タブノキ、モチノキ、アカガシ、マテバシイなどの照葉樹林です。マテバシイは東京湾での海苔養殖のホダ木や薪炭用として植栽されたものです。対岸の房総半島では、マテバシイが純林を形成しており、本来優占種になるはずのスダジイやタブノキの方が逆に少ないくらいです。マテバシイの自然分布は九州南部~沖縄県久米島ですが、房総・三浦・伊豆・紀伊半島など、本州の至る所で野生化しています。
また、ウバメガシも自生していると書かれていますが、ここのウバメガシには植栽説もあります。房総・三浦半島はウバメガシの分布の北限地帯です。
タイワンリスが沢山いて、マテバシイのどんぐりを食べていました。微笑ましい光景ですが、外来種なので本来は良くないことです。タイワンリスに罪はないものの、外来種というレッテルを貼られることで色眼鏡で見てしまうのは皮肉なことです…。
参道の両側には立派なソテツが植えられていて、南国ムードです。房総・三浦・伊豆半島にはソテツが多いですが、自然分布は宮崎~沖縄県なので植栽されたものです。
朱色の実が成っているので雌株です。蘇鉄の名は枯れかかったときに鉄を与えると蘇るという伝承に由来しますが、本当なのかは不明です。
ソテツは裸子植物なので「果実」ではなく「種子」です。裸子植物が出現したのは古生代石炭紀(3億6200万年~2億9000万年前)で、ソテツ・イチョウ・メタセコイアなどは「生きた化石」と呼ばれています。裸子植物は後に進化して中生代白亜紀(1億4500万年~6500万年前)には被子植物が誕生しました。
次は大松寺です。最寄りのバス停は衣笠山公園です。
ここではマテバシイが優占種で、アカガシ、タブノキ、モチノキ、スダジイも混生していました。
ウラジロガシもあると書かれていますが、私は見つけることができませんでした。
次は三島神社です。最寄りのバス停は武山です。
境内はスダジイ、タブノキ、アカガシなどの照葉樹林です。社殿周囲はスダジイに覆われており、御神木のスダジイは推定樹齢500年と書かれていました。ここにはマテバシイがないので、かなり自然度が高いです。現代では照葉樹林は、社寺などの禁伐地に僅かに残るのみとなってしまいました。
ツクバネガシもあるようですが、社殿近くにはありませんでした。林の中にあるのでしょう。
帰りに汐入駅近くにある諏訪大神社に寄りました。
立派なホルトノキがありました。ホルトノキは千葉県以西の太平洋側~沖縄県に分布し、三浦半島では「ナンジャモンジャ」の俗称で親しまれています。
ホルトノキの実です。オリーブにそっくりですが、オリーブはモクセイ科、ホルトノキはホルトノキ科で別の仲間です。ホルトノキは「ポルトガルの木」という意味で、平賀源内(1728~1780年)は地中海地方原産のオリーブと誤認しました。
諏訪大神社は天然記念物の指定はありませんが、スダジイ、タブノキ、アカガシ、ホルトノキ、モチノキなどが混生する自然度の高い照葉樹林でした。タイワンリスが曲者ですが…。
今日は行きませんでしたが、YRP野比駅近くの白髭神社の社叢も県指定天然記念物になっています。YRP野比は変わった駅名ですが、YRPとはYokosuka Research Parkの略だそうです。1998年3月までは野比という駅名でした。
また、「かまくらと三浦半島の古木・名木50選」というのがあるのを知りました。神奈川県には行ってみたい社寺林が他にも幾つかあります。落葉樹が葉をつけていない冬季は照葉樹に目が向くようになるので、行ってみたいと思います。また、諏訪大神社は夕暮れ時だったので、日を改めて再訪したいと思います。