2018年10月掲載

2022年9月21日改訂・再掲載

2024年6月1日改訂

 

学名:Castanea mollissima

別名:チュウゴクグリ、天津甘栗

分布:中国北部・西部

樹高:20m 落葉高木

 

中国の東北地区南部から華北・華中・華南・西南・辺境地方の甘粛省などに分布し、亜寒帯から亜熱帯までの山地に自生する。朝鮮半島でも栽培される。

 

葉は楕円形で長さ20cm。表面には光沢があり、ニホングリよりも幅広で鋸歯が鋭い。ニホングリと違って、葉裏に腺点がない。

 

花は5~6月に開花する。

果実は9~10月に熟す。堅果は光沢のある赤褐色で長さ2.5cm。ニホングリよりもイガの刺が短い。ニホングリと違って渋皮が剥がれやすい。華中から華南産の果実は大粒だが、食味は悪くなる。小さい果実の方が甘みが強い。日本に輸入されるものは多くが華北産で、天津甘栗の名で焼き栗に利用される。

 

樹皮。灰褐色で縦に割れ目が入り、ややコルク質で指で押すと弾力がある。

ニホングリに比べて樹勢が強く、枝は粗い。葉面積が大きい葉も特徴である。

 

【日本での栽培】

 日本には明治時代~大正時代に一部導入されたが、環境条件が適さないことやクリタマバチ耐虫性が著しく低かったことから、定着しなかった。しかし、1980年代に入るとクリタマバチの天敵であるチュウゴクオナガコバチが中国から導入され、国内のクリタマバチ被害は激減した。これによって、1981年から岡山県農林水産総合センター森林研究所で育成が始まり、有望な3個体(岡山1号・岡山2号・岡山3号)が2008年に正式に品種登録された。

 現在は岡山県北東部を中心に岡山1号と岡山3号が、岡山甘栗の名で栽培されている(岡山2号も優秀な品種であるが、現在は前述の2品種が普及している)。2010年度からは苗木の販売も始まった。

 チュウゴクグリは経済寿命が長く、ニホングリが20~30年程度であるのに対し、チュウゴクグリは50年以上と想定される。また、ニホングリよりも果実被害が少ない。

 クリは、花粉親の特定の遺伝的特性が種子親の遺伝的特性に関係なくそのまま受け継がれる性質がある(キセニア現象)。そのため、ニホングリの花粉を受けると渋皮が剥けにくくなる。渋皮剥皮性を維持するには、ニホングリと30m以上離して植える必要がある。

 利平倉方甘栗白栗などは、ニホングリとチュウゴクグリの交雑品種である。

 

【品種】

岡山1号

中国・遼寧省原産。豊産性で、果期10月上旬~中旬、果重16g。

岡山3号

中国・湖南省原産。果期10月中旬~下旬。果重6gで、市販の天津甘栗よりやや小さいか同程度の大きさである。

傍士360号

果重20g以上。岡山県新見市哲西地域を中心に、哲西栗の名で栽培される。

三度栗

初夏から秋まで花が咲き続け、連続して結実する。自家結実し、盆栽として流通する。静岡県遠江地方に点在し、伝説になっている。

 

<参考資料>

・荒木斉・川上和生 クリの絵本 農山漁村文化協会 2007年

https://www.pref.okayama.jp/page/detail-54237.html