2017年9月30日掲載

2022年9月6日改訂・再掲載

2023年5月29日改訂

 

和名:クリ(栗)

別名:ヤマグリ、シバグリ

学名:Castanea crenata

分布:北海道(石狩・日高地方以西)、本州、四国、九州(屋久島が南限)。朝鮮半島中南部。

樹高:15~20m 直径:100㎝ 落葉高木 陽樹

 

低地~山地の二次林に自生する。伐採跡地や林縁などの明るく開けた場所に多い。中間温帯に多く、コナラやミズナラと混生する。野生種をヤマグリ、シバグリと呼ぶことがある。


葉は長さ7~15㎝。細長く、鋸歯はやや太い。クヌギやアベマキと異なり、鋸歯の先まで緑色である。裏は淡緑色。栽培種の葉は野生種よりも大形である。

 

花(栽培種)。6~7月に開花し、虫媒花で強い香りがする。

1本の花穂に150個ほどの雄花をつけ、雌花(写真中央)は花穂の基部に1~2個着生する。

 

果実(野生種)。9~10月に熟し、1つのいがの中に3個の堅果を含む。堅果は直径約2cm。食用となり、縄文時代から栽培されていた。種子の初産齢は低く、発芽して10年以下で結実する。

クリの語源は小石を意味する古語「くり」に由来し、落ちた実を小石に例えたものである。また、黒実が転じてクリになったという説もある。

果実(野生種)。野生種の実は小粒だが、甘みが強い。写真は里山のヤマグリで、山地のものより堅果が大形であった。人間が実の大きい個体を選抜して里山に植林・野生化したか、栽培品種と自然交配しているのかもしれない。

果実(栽培種)。ニホングリは実が大粒で風味が良いが、甘みがやや少なく、渋皮が剥がれにくいのが難点である。

 

樹皮。灰褐色で縦に割れ目が入る。材は堅くて腐りにくいため、線路の枕木に利用された。

生長は早いが、寿命も長く、巨樹になる。

 

【変種】

シダレグリ 学名:Castanea crenata var.pendula

枝垂れ性の変種で、福島(郡山・いわき市)・長野(上田市・塩尻市・辰野町など)・岐阜県(下呂市)などに自生地がある。枝垂れの形質は実生にもよく遺伝する。

長野県塩尻市・相吉のシダレグリ自生地(市指定天然記念物)にて。上伊那郡辰野町・小野のシダレグリ自生地(国指定天然記念物)に隣接している。両者は直線距離にして600mほどしか離れておらず、古来は一体をなしていたものと推測されている。

トゲナシグリ 別名:イガナシグリ 学名:Castanea crenata var.sakyacephala

いがの棘が短い変種で、山形県中山町が原産地とされる。樹姿は直立性で、クリタマバチに強い。

果実。棘に触っても痛くないのが魅力だが、収量は少ない。果重20gで、味も良い。埼玉県川口市・花と緑の振興センターにて撮影。

カズグリ

雄花がなく、花穂は全て雌花で、1つの穂に40~50以上つく。岩手県花巻市数栗稲荷神社のみに生育する。

ハコグリ 学名:Castanea crenata var. pleiocarpa

1つの殻斗に6~8個の堅果を含む。

 

【栽培の歴史】

 クリは縄文時代から重要な食糧とされてきた。縄文時代の遺跡である青森県三内丸山遺跡や福井県鳥浜貝塚では、クリが栽培されていたことが示唆されている。栽培されるニホングリは、野生のシバグリを原種としたもので、奈良~平安時代には実の大きなものが現れたとされる。栽培の歴史は京都府の丹波地方が最も古く、現在でも有数の産地である。その後、100を超える品種が作出されたが、1941年に岡山県でクリタマバチの発生が確認されると、瞬く間に全国に広がり、多くの品種が淘汰された。

 現在栽培されるものは、クリタマバチ耐虫性のある品種が主流になっており、これらは1960年代に急激に普及した。クリは自家不和合性が強く、栽培する際には受粉樹を必要とする。

 

【主な栽培品種】

丹沢 

乙宗×大正早生。国内シェア3位(約15%)。早生栗の代表的品種。樹姿はやや開張性。若木からよく結実するが、結実過多の翌年は結果母枝の充実が悪い。果期9月上旬、果重23g。

ぽろすけ

550-40(国見の子)×丹沢。2018年に登録された新品種で、「ぽろたん」と同様に渋皮が剥きやすい。果期8月下旬~9月上旬、果重21g。

国見

丹沢×石鎚。樹姿はやや開張性。クリタマバチに極めて強い。果期9月上旬~中旬、果重25~30g。食味はやや劣る。

ぽろたん

550-40{290-5(森早生×改良豊多摩)×国見}×丹沢。2007年に登録された新品種で、電子レンジで加熱すると渋皮が簡単にむける。渋皮の剥けやすさ(易渋皮剥皮性)は劣性遺伝子によるもので、この遺伝子はニホングリ在来品種の「乙宗」に由来し、「ぽろたん」は劣性ホモである。樹姿はやや直立性で、若木からよく結実する。果期9月中旬~下旬、果重30g。

筑波

岸根×芳養玉。日本で最も多く栽培される品種で、全体の約30%を占める(2017年)。自家結実し、豊産性で若木の頃から結実が良い。樹姿はやや直立性。果期9月下旬~10月上旬、果重20~25g。

銀寄

国内シェア2位(約15%)。大阪府豊能郡能勢町原産。江戸時代から存在し、丹波栗の代表的品種。クリタマバチに強く、樹齢も長い。樹姿は開張性。若木では結実が少ない。台風による落果が多い。果期9月下旬~10月上旬、果重20~25g。食味と香りが良い。

利平

国内シェア4位(約7%)。ニホングリ(大桑大粒)とチュウゴクグリの雑種。岐阜県山県郡大桑村(現:山県市)発祥。堅果は大粒で丸みを帯び、毛が多い。甘みが強く、渋皮はニホングリより剥きやすい。樹姿は直立性と開張性の中間。枝が粗く、収量は少ない。果期9月下旬〜10月上旬、果重20~25g。

美玖里

石鎚×秋峰(利平の孫)。2011年に登録された新品種で、チュウゴクグリの遺伝子が1/16入っている。樹姿は直立性。「ぽろたん」の受粉樹にも適している。果期9月下旬~10月上旬、果重28g。

石鎚

国内シェア5位(約6%)。岸根×笠原早生。豊産性で、若木の頃からよく結実する。樹姿は開張性。クリタマバチに極めて強い。果期10月上旬~中旬、果重20~23g。

岸根

源平の時代に山口県岩国市で誕生。樹姿は直立性で、クリタマバチに強い。若木では収量が少ない。果期10月中旬~下旬、果重30~40g。

 

〈参考資料〉

①https://www.kudamononavi.com/zukan/kuri.htm