戦争の混乱などで教育を受けられなかった人らが通う神戸市須磨区の夜間中学「市立丸山中学西野分校」の卒業式が10日、同市長田区であり、91歳の平井シヅヱさんが3年間学んだ喜びをかみしめ、卒業証書を受け取った。18歳で結婚、しかし夫は戦死。震災で自宅は全焼。「今日のこの日を、新たに歩いていく日にしたい」。平井さんは決意を新たにした。

 徳島県生まれ。母親は平井さんを産んですぐに亡くなった。父方の祖母に育てられ、小学校を卒業後、神戸の親類に身を寄せた。1937年に結婚したが、夫は5カ月後に出征。翌年、阪神大水害に見舞われ、夫の戦死の公報も届いた。

 終戦後に再婚し、神戸の焼け野原で新生活を始めた。靴工場で働き1男3女を育てた。

 12歳から働きづめだった人生。あきらめたことも多かった。唯一の趣味だった押し絵も阪神大震災(95年)で家が全焼、せっかくそろえた道具も灰となった。家事に追われながら、日常に物足りなさを感じていた。米寿を迎え、07年に定時制中学の生徒募集のポスターを目にした。

 「勉強がしたい」

 夜間中学に通う生活が始まった。

 水彩画、陶芸、分数の計算。初めてづくしの毎日だったが、新しいことに挑戦すると若返る自分を感じた。在日コリアンや出稼ぎのベトナム人らクラスメートもたどたどしい日本語でやさしく話しかけてくれた。「夜間中学が私の青春。失ったものを取り戻せた」と実感した。

 この日の卒業式。3年間、ともに学んだ同級生13人と笑顔で出席し、壇上で卒業証書を受け取った。

 「学生生活は3年間と短かったが、楽しかった。これからも学び続けたい」

 平井さんの誓いだ。

【近藤諭】

【関連ニュース】
コンクリート橋脚:プラスチック繊維で強度増…砂利の代替
皇太子さま:雅子さまは「着実に快復へ」50歳会見(3)
五輪スノーボード:神戸に恩返し 震災被災の家根谷選手
チリ地震:「阪神以上の揺れ、正直怖かった」日本大使館員
大相撲春場所:第2新弟子検査、8人が受検…向井、福岡ら

<アーチェリー事故>矢を放った男子生徒を書類送検(毎日新聞)
首相動静(3月6日)(時事通信)
<中2自殺>「遺書に名」生徒ら提訴 岐阜・瑞浪(毎日新聞)
石井議員、厚労省への口添え否定…郵便不正事件(読売新聞)
海老蔵さん・麻央さん 婚姻届を提出(毎日新聞)