源頼朝って人は誰もが知っている割にあまり識られていない。

 

聖徳太子(もしくは太子が成したとされる功績を挙げた誰か)の「日出処の天子…」の意気込みに始まる中華王朝をお手本にしての大改革に始まり、白村江での半島利権の消失、乙巳の変から壬申の乱に及ぶ権力抗争を経て、国家としての日本が誕生した。

その後、天皇を祭り上げての貴族政治がおおよそ400~500年続き、その淀みを破り、新たなる武家の世を作り上げた人物としては、どうにも薄い。

 

何故なのか――

つらつらと考えるに、平家物語のせいではないだろうか。

 

判官びいきなどと言われるほど悲運の名将としてその名を刻んだ弟、

平家に非ずんば――と新時代誕生前夜の希代の悪役である清盛、

先に平家を都落ちさせた武勇を誇り巴御前なんておまけも持ってる義仲、

 

綺羅星のごとく個性派が揃っていて、

流罪され北条に担がれて挙兵したが大敗したはずが訳が分からないうちに関東をまとめ、ちょっとせこく陰謀を多用して義経含む潜在的敵対勢力を摘んでいった、では物語の主役にし辛いのだ。

おまけに天皇と並ぶ東国の支配者に成りあがったのに嫡流がわずか3代で途絶えてしまうという幸の薄さ。

 

まあ大敗したのにいつのまにやら癖も我も強いはずの坂東武士をまとめちゃってるのだから恐ろしいほどの手腕なのだが、

おそらくは語られる通り武芸の人でもなく、誰にも分かり易いタイプのカリスマの持ち主でもなかったのだろう。

 

今回、「鎌倉殿の13人」はそんな頼朝に上手くスポットを当ててたと思う。

日頃は少し頼りないのに、いざとなると怖い。

脚本家がそのつもりで脚本を書いたのか、それとも役者が上手く自分の役に落とし込んだのか、大泉洋も実に上手く嵌っていた。

 

逆に政子は悪人色を少しトーンダウンさせて、これまた小池栄子の地の明るさを上手く活かしていたと思う。

 

で、主役の義時が、鎌倉殿夫婦に食われちゃうんではないかと危惧していたら、頼朝生前の苦労人が後半はすっかり黒に染められて、まったく心配いらなかった。

小栗さんもやりがいあったのではなかろうか。

 

もしかしたら、司馬さんが竜馬や土方を幕末の英雄としてメジャーに押し上げたように、

頼朝、義時(というか鎌倉幕府創設)の再評価を始めるきっかけになっちゃったりするのかも、は言いすぎか。

平家物語は諸行無常に強力なので、当たった光もすぐに押しやられちゃいそだしなあ。

 

まあ、さすが三谷さんということになるのかどうか、

最終回をどう終わらせるやら、楽しみにしたい。