隅田のモンローと冷ややかな目線
話は、闇の中でゆったり靡く(なびく)
一本の花のような女性から始まる。
都市型河川、隅田川の日曜日。
素敵な都会人が行き交うテラスで、
正面からオーラを放つのはモンローライクな容姿の整った外人さん。
白に身を包んだハイブランドのホワイトワンピースなファッション、モンローを彷彿させる金色の髪型とベースから半トーン上げたような化粧の感じ。
ほのかに酔っているのか、彼女の様子はスキップを今にも刻みそうな、上機嫌でそれでいて軽やかなステップ。
夜風を楽しむ都会の女の顔だった。
※写真はイメージです
すれ違い様に、目が合って、
微笑みながらの顔傾け。
その刹那飛んでくるのは即死級のロンギヌスの槍。心臓付近にクリティカルヒットである。
※イメージです
しかもこの槍は、厄介な事に微笑みの残像による返針が付いていてなかなか抜けない。
深呼吸で何とかハートブレイクしかけた槍を外すのだった。調息して心拍数を整える。
しかし、余韻が脳裏を掠める。
愚かな事に5mほど距離をとって振り向き二度見。
馬鹿すぎた、またロンギヌスの槍が刺さる。
2本目だ、情報として更に鮮明に記憶される。
この2本目が厄介で中々抜けない。
イメージ的な比喩は身体の実態的行動へと促しはじめ、気づいた時には貫いた槍を取るモーションをしている自分がいた。
二本目の刺さり具合は深く。
返針も大きく。
そんな実体化されたイメージを必死に蹲りながら抜いていると、斜め上から感じる見えないはずの閃光。
丸まった体の隙間から冷ややかな視線を垣間見る。
テラス上に人がいたのだ、何かいけないものに触れる前の戸惑いのような硬直。
ダメなものをみた時人は、立ち尽くしてしまう。そんな具合だった。
私といえば、当然逃げた。
2秒で逃げた。真顔になった。
そして、モンローが放った槍はもう消えていた。