こんにちは 児島です。


27日に、オバマ大統領の、アフガニスタン・パキスタンに対する新たな包括戦略が発表された。


この包括戦略だけに関わらず、

アフガニスタンの復興の話になると、

真っ先にこういったスキームの話になる。
それは当然のことである。
治安は不安定であるし、

政権は脆弱であるし、

行政機構にはまだ力がついていない。

それをどう立て直すか、

特に治安をどう維持できるようにするか、
という議論をしている段階だから、スキームの話になって当然だ。


しかし、少しだけ気になるのは、
そのスキームを支えるコストは、いずれアフガニスタンが自国で支えなくてはいけない、

という視点に欠けているように思えることだ。


包括戦略案の言うとおりのスキームを描いていくと、
当然気になってくるのは
その初期投資だけでなく、そのランニングコストである。

アフガニスタンは将来、それをどうやって稼ぐのか。


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日本が支援を決定した、半年分の警官の給料だけで141億円である。

(私は個人的には、この日本の支援はよいと思っている。)

一方、

昨年度(2008年3月21日~2009年3月20日)の予算から考えると、

内国歳入は、8億8750万ドルであるから、およそ900億円の歳入しかない。

(歳入の合計は、26億2543万ドルだが、内国歳入以外は全て支援に依存している。)

一方、警察の給与が半年で141億円ということは1年で282億円だ。

ということは、

内国歳入の約3分の1が、警察官の給与だけで消える、

そういう経済規模の国なのである。


包括戦略では、

アフガニスタン国軍と警察を合わせて、現在の16万人弱から22万人に増やす、ということだから、
現在の警察は8万2000人なので、軍隊と同数増やしたとして、だいたい3万人の警察が増える、

給与もそれだけまた増える。


つまり、気になっているというのは、

出口戦略を考えねばならない、というけれども、

将来アフガニスタンがある程度ひとり立ちするためには、

いずれ将来、歳入も増やさなくてはならないのであるが、

それをどのように才覚するのか、

政策決定者たちは、考えているのだろうけれど、論調として見えてこない、という点である。


心ある現地政府関係者や、NGO・国連機関で働く者の多くは、おそらく、そこまで気にしていると思う。
支援する側の日本も、その辺へ多少想像力を働かしておきたいと思うが、どうであろう。


***


以下は私見ではあるが、

農業関係者が人口の80%を越すアフガニスタンには、

つまるところ、

主要な産業は農業しかない。

ならば、第一に農業を産業として安定させるしかないであろう。

だから、上記の自問に対する自答は、農業の安定化である。


例えば内戦前のように

農業による貿易黒字が国家予算をある程度支える、

ということになれば、それはすなわち、

農業支援をすることが、

警察や軍のランニングコストをまかなうことになり、

つまり、治安維持に直結する、ということだ。

そして、農業は、一朝一夕に復興しない。

今すぐ初めて、経験値を積み重ねていくしかない。

だからこそ、

農業を支える水資源の有効利用を含めた、

それこそ”包括的な農業支援”をやるべきだと思う。


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現在、ネットでしか確認できないから単なる推測だけれども
メディアでは、あまり、

アフガニスタンの国家財政の規模と将来の維持コストとを考え合わせたうえで、
”今、非軍事支援をすることが如何に必要であるか”について、

述べてはいないのではないか。


オバマが言う出口とは、

”いずれ、そういうコストもアフガニスタンが自国でまかなえるようになるべきだ”という論理も含んでいるはずだ。

いや、アメリカの本心がどこにあるのかは不明であるにしろ、
少なくとも、アメリカに追随する、支援する側の国は、そう解釈することが大事だ。

そうしなければ、

支援される側のアフガニスタンはいつまでも他国に依存するという憂き目にあい、

支援する側の国々は、いつまでも多額の支援を垂れ流し続けるという不幸に遭遇することになる。




アフガニスタン便り-装甲車で遊ぶ子供

写真:ロシア製装甲車の残骸で遊ぶ子供たち。灯ともし頃、そろそろ家に帰る時間だ。