昨日ご紹介したIWPR記事 の訳です:

我が家のスキャンダル
[アフガニスタンでは]年老いた男性が若い女性を娶ることは珍しくない。が、家族のサポートを得られるとは限らない。

作者: IWPR研修生、ヘルマンド州(記事番号:ARR No. 242, 20-Feb-07)
翻訳: 平井 礼子(文中で“[ ]”中の文は解説のために私が加えたものです。)


ファウジア(仮名)は21歳。私は22歳。彼女を「おばあちゃん」と呼ぶのには大変な違和感を覚える。

「妻が亡くなって若返った!」と85歳の祖父は喜ぶ。「もっと年取った女性を娶ることが可能だったが、若い子が良かった。年寄りと若者の隔たりがそれほどあるとは思えない。だから若い子を娶ることにした。大変嬉しい。」

ファウジアの視点は若干異なるようだ。

「父を亡くし、母は私と小さな息子2人を育てなければならなかった。貧しかったので、このおじいさんと結婚させられることになった。母は私や、私の人生のことを考えてはくれなかった。私は川につきおとされたようなもので、流れに身をまかせるしかなかった。」

祖父は、結婚を発表したら、家族・親戚が多いに祝福してくれると思っていた。最初の妻とは、7人の娘、3人の息子、合計10人の子どもをもうけた。長女が私の母親にあたる。

「あんなに若い女の子が年老いた男の人と結婚させられるなんて、死んだ方がましだわ。」と母親は言う。

結婚式の当日、祖父は喜びを隠しきれないほどだった。お菓子、ナッツやレーズンを来客に振舞って回った。しかし、結婚式に来たのは娘3人だけだった。残りの息子や娘たちは、出席することなかった。

結婚式に来ていた叔母に、祖父は尋ねた。「なんで喜んでくれないんだ。」

「祝福したいけれども、どうしても心から祝福することはできません。もう二度と幸せを感じられないのではないかと思うくらい惨めです。」と彼女は答えた。

叔母この言葉を聞いたファウジアは気を失い、結婚式を一時的に中断せざるを得なかった。

彼女の回復を待って、結婚式は続けられた。祖父は彼女の横に座り、彼女に歌を歌い、「心配するな。お前の言うことは何でも聞くし、なんでも欲しいものを与えるよ。」と語りかけた。

が、ファウジアは聞くどころではなく、呆然としているだけだった。「これは神の思し召し。この人との結婚は受け入れなければならない。自殺をしたいと思うけど、そんなことをしたら家族に恥を晒すだけ...第一、このような境遇に置かれた若い女性は私だけではないし…」と彼女はつぶやく。

確かにファウジアの言う通りである。このような事例が数多くあることは、私自身の目で見ている。最近15歳の女の子を娶ったというラシュカル・ガー[ヘルマンド州の州都]の麻薬密売人を知っている。彼は50歳くらいだろうか、前妻も2人いる。彼女は実家に戻って、夫のもとに戻すなら、殺してくれ、と懇願したそうだ。しかし、結局は、夫の元に帰らされた。

支持が得られるならば、このように若い女性を娶る、年老いた男性を裁判にかけたい。このような恥ずべき慣習をなくしたい。

祖父はお金持ちで、ヘルマンド州に沢山土地を持っている。多くの人が行っているケシ栽培を行わず、野菜を栽培しているが。

結婚式から1年が経過した。ファウジアは少し考え方を変えたように見える。

「最初はとても不幸だと思っていました。でも、今では双子の息子と娘をさずかり、一緒にいれることを幸せに思っています。夫もやさしく、必要なものは何でも与えてくれます。若い男性と結婚したかったとは思いません。」

しかし、彼女は平静を装っているだけにしか思えない。[アフガニスタンの文化では]夫の文句を言うのは恥ずべきことだから。

祖父が亡くなったら、ファウジアは再婚することができません。私達の文化では、女性の夫が亡くなっても、夫側の家族と共に生活を続けなけばなりません。夫の兄弟や、場合によってはその父親と結婚することはできます。しかし、祖父には生きている兄弟はいない。ファウジアは私達の母親、また祖母であり、[息子や孫にあたる]僕らと結婚することはできない。残りの一生は未亡人として過ごすことになる。

祖父はそんなことを気にかけている様子はない。彼は新しく生まれた子どもに大変満足で、「わしはお前たちよりも元気だ。わしの方が子どもの数が多い。」と息子達をからかう。更に子どもが欲しいそうだ。もう1人妻を娶りたいそうだ。私には「20歳の若い女の子と結婚して、幸せだ。もう一人娶ろうと考えている。」と語った。

IWPRはヘルマンド州でジャーナリストのトレーニング・プログラムを最近開始した。この記事、研修生の一人によって書かれた記事である。彼の家族のプライバシーを守るために名前を伏せてある。

This article originally appeared in The Afghan Recovery Report, produced by the Institute for War and Peace Reporting, www.iwpr.net