町に電気と水道が来る日
PWJのフィールドオフィス兼宿舎があるボーの町には、まだ電気も水道も無い。
国連やNGO、現地政府はディーゼルで動くタイプのジェネレーターやソーラーパネルを
オフィスに備えて、電気を「作って」使っている。
マーケット(トタンの建物が並ぶ商店街)では、皆で共同購入したのだろうか、
やはり小型のジェネレーターを回して、冷蔵庫や床屋さんのバリカンを動かしている。
他方、水は、一般家庭ではポリタンクに井戸水を入れて保管するだけだが、
たとえばPWJのオフィスでは、くんできた井戸水を大型の水タンクに入れ、
そこからキッチン小屋とシャワールームにパイプをつなげてまかなっている。
そんなボーの町で、最近、電気と水道の工事が大々的におこなわれた。
連日、ブルドーザーがぶるんぶるんと、長い手を使って深さ4メートル位の溝を掘り、
電気の方は、技師たちがあれよあれよという間に電柱を立てて、
するするとよじのぼっては電線をつなげていく。
これまではかやぶき屋根の家や、手作りのトタン小屋ばかりだったのに、
空に突き上げるように等間隔で並ぶ電柱と、五線譜のような電線のために
急に町に「直線」が出現した感じがして、
すっかり景観が変わってしまった印象すらある。
といっても、感傷的な感想はいつでも部外者のもので、
やはり現地の方々にとっては発展や近代化は誇らしいことなのだろう。
「これでボーもCityになる!」とスタッフの一人が胸を張る。
特に、内戦中に難民として隣国のウガンダやケニアで暮らしたことのあるスタッフは、
電気や水道の便利さを実際に知っているので、特に感慨深げだ。
ところが、彼らに
「で、いつ?いつ電気と水が来るの??」
と聞いてみると、
「……さあ。たぶん、ずっと先かも。」
とはっきりとしない答えだったが、それでもそう遠くない将来、
夜も明るいボーの町が出現するはずである。
余談だが、そんな工事中のひとコマが、この子ヤギ。
水道管敷設中の溝を飛び越えようかどうか、さんざん迷っている様子が
かわいらしかった。
こうやって、溝に沿って歩きつつも、
なんとなく「僕は別に飛び越えたいわけじゃありませんよー」と
何気ないふりをしながら幅を横目で確認しつつ、
時折、立ち止まって考えつつ、
でもやっぱり、飛び越える自信がないのか、再び歩き始め、
結局、ジャンプする決定的瞬間は撮れないまま、どこかへ行ってしまった。
聞くところによると、こうやって溝に落ちたヤギが町じゅうで結構な数いて、
そういう場合は人間2人がさっと溝に飛び込み、
両側から挟みうちにして捕獲したという。
ところが、そうやって拾った(?)ヤギを自分のものにはせずに
きちんと持ち主に返すらしい。
確かにボーの人たちは正直者で、盗難被害というのも全くないのだが、
それにしてもまた律儀なことで……と思ったら、それには理由があるとのこと。
「ヤギを盗むと、来世で人間に生まれ変われなくなるんだ。だからヤギはまずい。
(小声で)…ヒツジだったら、いいけど」
えっ、ヒツジならいいの??と一瞬耳を疑ったが、まあともかくそういうことらしい。
ちなみに、水道の配管工事のためのこの溝はもう埋められてしまい、
ヤギが落ちていることも、もう無い。
(ニシノ)




