西側メディアの責任
  「
ロイター通信社はイスラエルのプロパガンダに加担してきた

                大矢英代(カリフォルニア州立大助教授)

 大手通信社の特派員としてキャリアを積んできた女性フォトジャーナリストが、SNSで公開した「退職届」が話題を呼んでいる。
 「ロイター通信社はイスラエルのプロパガンダに加担してきた」。こう綴ったのは、カナダ人のバレリー・ジンクさんだ。ジンクさんは、ガザでのジャーナリスト殺害報道を巡って、イスラエル側がいう「記者のふりをしたハマス工作員」といった根拠のない主張を同社が掲載し続けていると指摘した。
 その結果、ジャーナリストへの攻撃を助長し、大量虐殺の巻き添えにしていると批判。報道機関の責任を次のように問いかけた。
 「西側メディアは、イスラエルの大量虐殺を巡る捏造が信憑性を持つかどうかも検証することなく繰り返し報じ、ジャーナリズムの最も基本的な責任を故意に放棄した。わずか2年間で、第1次世界大戦以降のあらゆる戦争で死亡したジャーナリストの人数を遙かに超える犠牲を、ごく狭い地域で可能にした」
 ジンクさんの「退職届」には、真っ二つに切った記者証の写真が添えられている。「この記者証は深い恥辱と悲しみ以外の何者でもありません」。
 仕事の安定をなげうってジャーナリズムの精神を貫くジンクさんを、私は支持したい。
 ぜひ、彼女のフェイスブックページから全文を読んでほしい。
                 (9月1日「東京新聞」朝刊17面「本音のコラム」より)