ぼくらはみんな生きている
  不登校は命を守るための重要な手段

                前川喜平(現代教育行政研究会代表)

 多くの学校で新学期が始まる9月1日は、子どもの自殺件数が最も多い日だ。
 教師は最大限の緊張感をもってこの日を迎える必要がある。
 保護者も最大限の注意を払って子どもの様子を見守る必要がある。
 28日の本紙夕刊が伝えた「自殺対策支援センター ライフリンク」の調査によれば、生きづらさを感じている小中高生のうち、夏休みが終わることに「死にたい」「消えたい」と感じている子どもは24%に上っていた。
 死にたくなるほど学校へ行くのがつらい子どもを無理に学校へ行かせれば、その子を自殺へ追いやる危険がある。
 そんな子どもにかけてやるべき言葉として「行かなくていいよ」とか「行かない方がいいよ」では不十分だろう。「行ってはいけない」と言うべきだ。
 不登校は命を守るための重要な手段である。
 学校へ行かなくても十分生きていける。生きていればうれしいことも楽しいこともある。
 「ぼくらはみんな生きている」で始まる歌「手のひらを太陽に」は、NHK連続テレビ小説「あんぱん」の主人公のモデル、やなせたかしさんが作曲した、生きる喜びを真っ直ぐに謳う歌。
 小学校3年生で不登校を経験した僕もこの歌が大好きだった。
 学校がつらい子どもにはこの歌を教えてあげよう。
 ミミズだってオケラだってアメンボだって友達にできるんだ。
        (8月31日「東京新聞」朝刊19面「本音のコラム」より)
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